いま暴力団組員が負っている「山口組分裂抗争」の予想外の代償 | FRIDAYデジタル

いま暴力団組員が負っている「山口組分裂抗争」の予想外の代償

分裂抗争の余波が暴力団組員の人生を大きく変えていた

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6代目山口組の司忍組長

国内最大の暴力団、6代目山口組が2015年8月に分裂し、離脱した神戸山口組との間の対立抗争は7年になろうとしている。警察庁によると、これまでの双方の間の対立抗争事件は約90件に上り8人が死亡した。対立が原因ではなく移籍をめぐる組織内のトラブルによる事件などもあり分裂以降、こうした事件も合わせると100件以上が発生している。

続発する事件に対して強まる社会の非難を背景に、実は近年、暴力団組員らによる殺人罪の量刑は厳罰化傾向にあるのだ。

最高裁は2022年4月、殺人罪などに問われた6代目山口組系の元組員の朝比奈久徳という男の上告を棄却し無期懲役の判決が確定した。朝比奈は2019年11月、兵庫県尼崎市で神戸山口組幹部、古川恵一に向けて自動小銃を乱射して殺害したとして逮捕、起訴されていた。

「確実に厳罰傾向となっている」

事件は夕刻の買い物客が多く行きかう商店街で発生し、大型銃の流れ弾で一般市民に危険が及ぶ可能性があったことが指摘されたこともあり、社会的な非難の対象となった。朝比奈の上告棄却の報道は一部のみだったが、重い司法判断はSNSなどを通じて速報され拡散した。

最高裁は2017年12月には、岡山市内で当時の神戸山口組池田組若頭、高木昇を射殺した6代目山口組弘道会系組員の山本英之の上告を棄却、同様に無期懲役が確定している。こうした結論について、刑事裁判に詳しい弁護士は、「かつては1件の殺人事件であれば懲役20年などの有期刑ということが多かった。確実に厳罰傾向となっている」と指摘する。

山口組をめぐっては、これまでも派閥の対立が噴出し、分裂や内部の対立抗争の歴史をたどってきた。最も被害が大きかったのは双方で25人が死亡した4代目組長の座をめぐる「山一抗争」だった。4代目組長に竹中正久が就任したことに反発したグループが離脱して一和会を結成、対立抗争状態となった。

最も暴力性がむき出しになった事件は1985年1月に発生した。一和会側のヒットマンたちに竹中ら最高幹部3人が同時に殺害されたのだった。事件の衝撃は大きく、山口組の激しい巻き返しで一和会は解散に追い込まれた歴史があった。山一抗争は暴力団史上、最悪の対立抗争として今でも暴力団社会、警察幹部の間で語り継がれている。

 

稲川会の清田次郎総裁のもとを訪れた、6代目山口組の髙山清司若頭。分裂抗争が続くなか、友好団体との関係強化に余念がない

逮捕された竹中殺害の暗殺グループのリーダー格らに対して、検察側は死刑を求刑したが、大阪地裁は無期懲役の判決を言い渡し、大阪高裁判決を経てその後、確定した。実行犯らその他のメンバーは懲役20年などとなった。事件発生から37年以上が経過しているが、無期懲役判決となったリーダーのうちの一人は現在も服役している。

山一抗争に続き、社会の非難の対象となったのは、1997年8月の5代目山口組の宅見勝若頭射殺事件だった。この事件では流れ弾で歯科医の男性も死亡するといった理不尽な事態を招いた。逮捕されたリーダー格は無期懲役となったが、実行犯らは懲役20年などとなった。

人生で最も実りある時期を…

山一抗争と宅見若頭射殺事件について、前出の弁護士は、「山一抗争での4代目組長殺害事件では被害者は3人に上る。現在なら間違いなく死刑の判断となるだろう。5代目若頭の事件では一般市民も巻き添えとなっている。これほどの被害が出ていても実行犯は有期刑だった。今ではあり得ない」と解説する。

そのうえで、「6代目山口組の組員らが抗争の相手を殺害した事件では、被害者は1人で無期懲役の判決が続いている。厳罰化の傾向が鮮明となっている」とも強調。さらに、「以前であれば無期懲役でも仮釈放への道がないわけではなかった。だが、現在はほぼ終身刑のようになっている」と付け加える。

かつては有期刑の最長が20年だったため、この期間を過ぎると審査はあるが、無期懲役判決で服役していても仮釈放の対象となることもあった。しかし、現在は30年となっており服役期間は長期化している。近年の運用では仮釈放となるにあたっての服役年数は平均で約36年となっている。

神戸山口組池田組若頭を射殺した山本は逮捕時、31歳だった。人生で最も実りある期間を刑務所で過ごすことになる。仮釈放されたとしても、そのころには還暦を過ぎている。自動小銃を乱射して逮捕された朝比奈は52歳だった。三十数年後には後期高齢者だ。抗争の代償は重いのが現実だ。

(文中敬称略)

  • 取材・文尾島正洋

    ノンフィクションライター。産経新聞社で警察庁記者クラブ、警視庁キャップ、神奈川県警キャップ、司法記者クラブ、国税庁記者クラブなどを担当し、フリーに。近著に『山口組分裂の真相』(文藝春秋)

  • 撮影濱﨑慎治

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