なぜ”分乗”するのか…「ヤクザと新幹線」の意外すぎる裏事情 | FRIDAYデジタル

なぜ”分乗”するのか…「ヤクザと新幹線」の意外すぎる裏事情

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グリーン車に乗り込んだ司忍組長

警察当局にとっての”最重要事項”

国内最大の暴力団、6代目山口組が2015年8月に分裂し、離脱した神戸山口組との対立抗争状態は7年になろうとしている。対立抗争事件は6代目山口組若頭の髙山清司が2019年10月に府中刑務所を出所した前後に激化したため、2020年1月に双方が暴力団対策法に基づいて特定抗争指定暴力団に指定されて活動が厳しく制限されている。活動が制限されているとはいえ、友好組織との交流などの「外交」も欠かすことは出来ず、新幹線の利用などでは暴対法の規制を免れるための対策が取られているのが実態となっている。

対立抗争は一時的に鎮静化していたが、2022年5月に神戸山口組ナンバー2である副組長の入江禎の自宅に車両が突入したほか、6月には組長の井上邦雄の自宅に向けた銃撃事件が発生した。そのほかにも神戸山口組側が襲撃される事件が続発している。

いずれの事件も6代目山口組系組員や関係者が逮捕されている。対立抗争再燃が危惧されるなかで、6代目山口組組長の動向の把握は警察当局にとっては最重要事項だ。

こうした状況下で、警察当局は、「6代目山口組組長の司忍をはじめとした最高幹部たちが、6月17日午前、川崎の稲川会山川一家本部を訪問する」との情報を事前に入手。「東海道新幹線でJR新横浜駅に午前10時すぎから10時半ごろにかけて順次、到着し車で川崎へ移動する」とさらに詳しい動向についての情報がもたらされた。

警察当局の幹部は、「司ら最高幹部の到着時間が午前10時から半にかけてという所がポイントだ」と解説する。

「6代目山口組と神戸山口組は特定抗争指定暴力団となっているため、警戒区域で『同じ暴力団組員がおおむね5人以上で集まれば即逮捕』となる。司や髙山の出身母体の弘道会がある名古屋市は警戒区域に設定されているから、名古屋駅で新幹線に乗車する際に5人以上でいると逮捕される可能性がある。このために何本かの新幹線に時間をずらし分散して乗車したのだろう」

真っ白なスーツ姿で…

ほかにも、「暴力団事務所の新設や立ち入り」「対立する暴力団組員への付きまとい」などが禁止されており、中止命令など行政手続きを経ずに即逮捕となる直罰規定となっている。これまでに2020年12月に警戒区域の岡山市内の飲食店で、5人以上で会食していたとして、暴対法違反(多数集合)容疑で神戸山口組系幹部らが逮捕されたケースがある。

警察当局が入手していた事前情報通りに6月17日は午前10時ごろに若頭の髙山らが新横浜駅に到着、その後、10時半ごろに組長の司が姿を現した。新幹線改札口から出てきた際には真っ白なスーツ上下に青色のシャツといった目立つファッションのため、多くの一般客の目を引くこととなった。

横浜市内は警戒区域ではないため、司らの一行は集合して車に乗り込み川崎へ向かった。司をはじめとして十数人となったため、数本の新幹線に分乗し新横浜に到着したものとみられた。

訪問の目的は、体調を崩していた友好組織である稲川会の総裁、清田次郎の快気祝いだった。帰路でも名古屋市内に到着する際には5人とならないよう、新横浜駅では時間をずらして新幹線に分散して乗車する気の使いようだった。

新幹線を待つ間、竹内若頭補佐と話し込む司組長。このあと、新幹線に分乗して帰路についた

総本部への届け出が義務付けされ…

暴対法に基づく警戒区域は双方の拠点が多い大阪市や6代目山口組の中核組織、弘道会本部がある名古屋市、当時、神戸山口組傘下だった山健組の事務所がある神戸市など、関西や東海地方を中心に当初は6府県10市が設定された。

対立抗争事件が起きるたびに警戒区域は追加されて、一時期は10府県20市町にまで拡大した。その後、神戸山口組の主要組織だった岡山市に拠点を構える池田組が離脱したことから、岡山県公安委員が2021年10月に同市を除外するなど、警戒区域は現在、9府県16市町に設定されている。

首都圏で活動している6代目山口組系幹部は、「特定抗争指定暴力団とされてしまって以降は、新幹線利用の際には総本部の担当者に届け出ることが義務付けられている」と明かす。

「例えば東京駅から東海道新幹線で西に向かう場合、警戒区域となっている名古屋駅や新大阪駅に到着した際に偶然にも乗り合わせていた6代目の組員5人がホームに降りたとする。待ち構えていた警察から『5人で集まったな』と逮捕される可能性がある。こちらは示し合わせたことはまったくなく偶然でも、警察はそのように強引な手に出るかもしれない。警戒は怠らないということだ」

特定抗争指定暴力団としての規制の下で、警察への警戒から自主規制的な行動スタイルを余儀なくされている状態が続いている。(文中敬称略)

  • 取材・文尾島正洋

    ノンフィクションライター。産経新聞社で警察庁記者クラブ、警視庁キャップ、神奈川県警キャップ、司法記者クラブ、国税庁記者クラブなどを担当し、フリーに。近著に『山口組分裂の真相』(文藝春秋)

  • 撮影濱﨑慎治

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