選挙や五輪、サミットは避ける…知られざる「ヤクザと抗争」の世界 | FRIDAYデジタル

選挙や五輪、サミットは避ける…知られざる「ヤクザと抗争」の世界

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新横浜駅に現れた司忍組長。山口組分裂抗争は激化と鎮静化を繰り返している(撮影:濱﨑慎治)

国内最大の暴力団、6代目山口組の分裂による神戸山口組との間の対立抗争は間もなく7年を迎えることとなり異例の長期化となっている。2019年秋以降、拳銃を使用した凶悪な殺人事件が続発したため、2020年1月に双方を特定抗争指定暴力団に指定して、警察当局は強力な規制で抑え込みを図ってきた。

対立抗争は一時期、鎮静化していたが、5月以降、再燃が危惧される事件が続発している。警察当局は警戒を強めているが、捜査幹部は「抗争終結に向け、ある目的がうかがえる」と指摘している。

新型コロナウイルスの感染拡大が長引くなか、2022年の年初は第6波としてオミクロン株が蔓延したことで感染者が爆発的に拡大したことが影響したのか、抗争は鎮静化していた。ところが、2022年5月8日、神戸山口組ナンバー2で宅見組組長の入江禎の自宅に車両が突入する事件が発生。さらに、同年6月5日には組長の井上邦雄の自宅に向けて、男が拳銃で十数発の銃弾を発射する事件も起きた。

これまでとは大きな違いがある

さらに、同月6日には神戸山口組からさらに分裂して結成された絆会の代表、織田絆誠の神戸市内の自宅にも車両が突入した。前後して絆会組員が銃撃されて重傷を負ったほか、佐賀市内の神戸山口組系事務所にも車両が突入。いずれの事件も、逮捕されたのは6代目山口組系組員や関係者だった。

6代目山口組は2015年8月に分裂、離脱した神戸山口組との間で、事務所への発砲や火炎瓶の投げ込み、車両突入などのほか繁華街での乱闘騒ぎなどが起きていた。抗争が激化した2019年秋には神戸山口組幹部が自動小銃で数十発の銃弾を浴びて6代目山口組系の元組員に殺害される残忍な事件も発生していた。

ただ、警察当局の捜査幹部は、最近になって発生した神戸山口組組長宅の発砲事件などについて、「これまでの事件とは大きな違いがある」と指摘する。

「最近の事件は神戸山口組のトップとナンバー2の自宅が狙われた。このような事件はこれまでになかった。6代目山口組側からの圧力がうかがえる」

絶好の“手柄を立てるチャンス”

分裂後は神戸山口組に加入する組織が相次ぎ勢いがあったが、次第に勢力が縮小。最新データとなる2021年末時点で警察庁がまとめた双方の全国の勢力は、6代目山口組の構成員は約4000人に対して、神戸山口組は約510人と8倍の差が開いている。当初は双方が事件を引き起こしていたが、近年は6代目山口組側からの襲撃が圧倒的となっている。

前出の捜査幹部は、

「対立の行方はすでに決したようなもの。今後はいつ神戸山口組が白旗をあげるかということではないか。だが、抗争が終結してしまえば、6代目山口組の傘下組織にとってみれば、『手柄を立てるチャンスがなくなる』ということにもなる」

と指摘する。

「だから、6代目山口組側が引き起こす事件が多発していると言える。それもトップである井上やナンバー2の入江をターゲットにした。そうすれば名を売ることにもなる」

との分析を披露した。

ただ、5月から6月上旬に神戸山口組側に圧力を加えるような事件が続発したが、それ以降はまた鎮静化している。指定暴力団の古参幹部は、「国家的な行事が開催される際には騒ぎは起こさないということではないか」との考えを示した。

「近年でいえば、(2016年5月の)伊勢志摩サミット、さらに昨年夏の東京オリンピックの開催時は対立抗争のさなかだったが、大きな事件を起こすことはなかった。全国各地で警備が行われ、この際に事件を起こすと警察に恥をかかせることになる」

と振り返る。

忠誠心が強い人間が残っている

直近では6月22日公示、7月10日に投開票が行われた参院選だという。

「選挙に国民の関心が低くとも、各地の応援演説などで人気の政治家には人が集まる。テロなどへの警戒で警察の緊張度は高い。今回は安倍晋三元首相が銃撃されてしまったが、このような大事件が起きている真最中に事件を起こすヤクザはいないはず」

とも述べた。

ただ、「選挙が終わってしばらくすると、また動き出すかもしれない」との不穏な見通しについても言及した。

分裂抗争の情勢をウオッチしてきた前出の古参幹部とは別の指定暴力団の幹部は、

「切り崩しなどにあって神戸山口組の人数が減少しているのは確か。ただ、現在になっても辞めずに組長の井上に付いていっているのは忠誠心が強いためだろう。神戸山口組のために刑務所に入っている者も多い。こうしたことも考えれば、簡単に『組を解散して引退します』という訳にはいかないのではないか」

との見方を示している。(文中敬称略)

  • 取材・文尾島正洋

    ノンフィクションライター。産経新聞社で警察庁記者クラブ、警視庁キャップ、神奈川県警キャップ、司法記者クラブ、国税庁記者クラブなどを担当し、フリーに。近著に『山口組分裂の真相』(文藝春秋)

  • 撮影濱﨑慎治

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