<figure id="attachment_274341" aria-describedby="caption-attachment-274341" style="width: 932px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="6993e309"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/11/68d2bb053821c2d0d6295b61378afeef.png" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-274341" class="wp-caption-text">事件発生直後の店内の様子</figcaption></figure>
<p>国内最大の暴力団「六代目山口組」と、分裂した「神戸山口組」との対立抗争は８年目に突入し異例の長期化。そんななか、岡山市内の理髪店で10月、同組から脱退した暴力団「池田組」の組長、池田孝志が散髪中に襲撃された。事件を引き起こしたのは六代目山口組山健組系の幹部だったが、複数のボディーガードの逆襲を受けて頭部を負傷、店内は血まみれとなった。付近は静かな住宅街で、誰もが日常的に利用する理髪店で白昼に起きたことから、周囲には恐怖感が広がり、近くの小学校では集団下校の措置が取られる事態となった。</p>
<p>事件は10月26日午後１時すぎに発生した。岡山市内の理髪店から110番通報があり、警察官が駆け付けると負傷した男が横たわり周囲には血だまりが広がっていた。押し入った男は刃渡り18センチのサバイバルナイフを持っていたが、取り押さえられ池田にけがはなかった。</p>
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<p>池田が理髪店に到着したのは午後１時ごろだった。このため、警察当局の捜査幹部は、<span class="strongInContent">「店に入ってあまり時間がたっておらずに事件が発生した。池田の行動を把握した上で計画的に犯行に及んだと受け止められる。以前から監視していたのだろう」</span>と推測する。逮捕された男は岡山県警の取り調べに対して、「刺してやろうと思った」と容疑を認めている。</p>
<p>六代目山口組が池田を襲撃の対象としたのは、今年夏以降に対立抗争のキーマンとして浮上したためとみられる。最新データとなる2021年末時点での六代目山口組の構成員は約4000人、対する神戸山口組は約510人と差が開いており、池田は六代目山口組に対抗するため、神戸山口組と同組を脱退した組織による連合体を提案していたという。</p>
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<p>これまでの経緯をたどると、池田組は神戸山口組を離脱し2021年７月に独立を宣言。神戸山口組内の金銭問題を批判していた絆会（旧任侠団体山口組）はそれ以前の2017年４月に脱退していた。そこで神戸山口組、池田組、絆会の三者連合として結びつける役割を池田が担っていた。ただ神戸山口組組長の井上邦雄の意向で実現には至っていないが、「六代目山口組とすれば、池田は排除の対象となっていたはず」（前出の警察当局の幹部）という。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="なぜ「理容店」だったのか？"></div>
<p>&nbsp;</p>
<figure id="attachment_274343" aria-describedby="caption-attachment-274343" style="width: 912px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="ac42cd5b"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/11/45e8eaa9e83dfe60151d153bf7a211a2.png" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-274343" class="wp-caption-text">発生直後の店内。おびただしい血が飛び散っているのがわかる</figcaption></figure>
<p>岡山での襲撃事件を踏まえて首都圏に拠点を構える指定暴力団の幹部は、<span class="strongInContent">「抗争の最中には無用に出歩かないものだ。だが、治療のため病院に通うなど、どうしても外出しなければならないことはある。散髪もそのうちのひとつ。自分で髪を切る訳にはいかない。月に一度ぐらいは床屋に行く人も多いだろう。こうした外出は（襲撃を）やる側からすると、狙い目だということ」</span>と述べる。</p>
<p>こうした点を解説したうえで、<span class="strongInContent">「親分の散髪中は警戒を怠らない。守る側もそれなりにガードを固める」</span>と強調し、次のように明かした。</p>
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<p><span class="strongInContent">「自分たちの場合は、親分が散髪する際には、ボディーガードを店内に１人待機させる。ガード役を何人も店内に入れたら店に迷惑になるからだいたい１人になる。そのほかに、店の前に車を配置してすぐに出発できるように運転席にまず１人を座らせる。さらに車内に１～２人を待機させて、何か起きた時にはすぐに対応できるようにしている」</span></p>
<p>岡山市内の襲撃事件でも、店内にいた池田のボディーガードと店外で待機していた組員らが駆け付けたことによって警察に取り押さえられていた。</p>
<figure id="attachment_274344" aria-describedby="caption-attachment-274344" style="width: 918px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="b64c8440"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/11/cff61ea7b1fc2ff9836121cd6f4999b1.png" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-274344" class="wp-caption-text">被害者をのぞきこむ捜査員ら</figcaption></figure>
<p>この幹部は、<span class="strongInContent">「散髪中の襲撃としては、かつて山口組中野会の事件が有名だ」</span>と付け加える。五代目時代の山口組最高幹部だった中野会会長の中野太郎が1996年７月、京都府内で散髪中に暴力団、会津小鉄会のヒットマンにより銃撃を受けた。だが、中野のボディーガードが拳銃で応戦。ヒットマン２人が射殺され、返り討ちに遭うこととなった。この事件でも現場近くの小学校では生徒らが下校の際に教師や保護者に付き添われることとなった。</p>
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<p>散髪中の暗殺劇は映画のシーンでも描かれることが多い。広島を舞台にしたヤクザ抗争を描いた大ヒット映画『仁義なき戦い』や、米国のマフィアの抗争を描いた傑作『ゴッドファーザー』でも、登場人物が理髪店で首からすっぽりと布をかぶった状態で散髪中に銃撃され、直後に白い布に鮮血がにじむシーンがある。</p>
<p>今回、池田は難を逃れたが、無防備になる散髪中は危険が伴うだけに、厳重なボディーガードが付けられるのが実態のようだ。（文中敬称略、一部の肩書は当時）</p>


ノンフィクションライター。産経新聞社で警察庁記者クラブ、警視庁キャップ、神奈川県警キャップ、司法記者クラブ、国税庁記者クラブなどを担当し、フリーに。近著に『山口組分裂の真相』（文藝春秋）

尾島正洋

事件発生直後の店内の様子 国内最大の暴力団「六代目山口組」と、分裂した「神戸山口組」との対立抗争は８年目に突入し異例の長期化。そんななか、岡山市内の理髪店で10月、同組から脱退した暴力団「池田組」の組

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