『舞いあがれ!』鬼教官のヤンチャ時代、苦情殺到の裸ダンサー事件…「紅白歌合戦の舞台裏」【白組編】
紅白博士・作家 合田道人が語る
「NHK紅白歌合戦」のハプニング集。今日は白組。現在放送中のNHK朝ドラ『舞いあがれ!』で渋い鬼教官役で登場している吉川晃司が、歌手として初出場したのが昭和60(1985)年のこと。彼のヤンチャ時代の話である。
あの鬼教官役・吉川晃司のヤンチャ時代のハプニング
トップバッターで歌い、歌なかでシャンパンを口からまき散らすパフォーマンスを披露。さらに歌い終わったところでギターにオイルをかけて燃やす演出を試みた。実はリハーサルではやっておらず、本番では予定通りに曲つなぎ

そのシブがき隊といえば、ソロとしてカムバックしたモッくんこと本木雅弘の爆発事件が物議をかもしたのが平成4(1992)年の第43回。白い液体が入った9個の大きなゴム風船をネックレスのように首からぶら下げた衣装で登場。まるでコンドームを思わせたが、歌唱後にそのひとつを頭の上で破裂させたのだ。瞬く間に顔も体も白い液体まみれになり、“顔面シャワー”などと言われたのだ。その後に本人は、ちょうど流行し始めていたエイズを撲滅するための自分なりのメッセージだ! と語っていたが…。

「あれは本当の裸ではないのか?」…250件以上の苦情電話が殺到
57回(2006年)の問題がDJ OZMA。歌った歌は、ショーパブでの演舞がテーマになった「アゲ♂アゲ♂EVERY☆騎士」。それに合わせて女性のバックダンサーたちが歌中で衣装を脱ぎ始めた。しかし彼女らは裸体が描かれた、つまり丸裸に見えるボディースーツを着ていたのだ。テレビ上では裸にしか見えないダンサーたちが踊る。この放送直後から「あれは本当の裸ではないのか?」「教育上よろしくない」と、250件以上の苦情電話が殺到。あまりの反響に(?)総合司会の三宅民夫アナウンサーが、「裸ではないんです。でも誤解を与える結果になり申し訳ありません」と謝罪。客席からも笑いと拍手が起こった。
桑田佳祐『ひとり紅白歌合戦』の原点はこれ!?
裸で登場といえば42回(1991 年)のとんねるず。いやいやパンツは履いていたから“御用”にはならなかったが、パンツ一丁に赤と白にペイントを塗り、歌った歌は「情けねえ」。最後に後ろを振り返ると、背中には「受信料を払おう」の文字がくっきり。
33回(1982年)のサザンオールスターズも、歌中で「受信料を払いましょう」とやっている。桑田佳祐は当時の“「紅白」の顔”三波春夫を真似た派手派手の着流し姿で登場し、「チャコの海岸物語」の間奏内で、三波の名言「お客様は神様です」に続けて受信料の件(くだり)を言ったのだった。三波春夫が初登場したのは昭和33(1958)年。当時「紅白」の出演者はほとんど各放送局を掛け持ち出演。特に“ミスター1958”と言われた人気スターがフランキー堺。しかし本番でフランキーが到着せず、台本上ではその次の対戦で歌うことになっていた三波と神楽坂浮子が先に歌ったことがあった。いやいやまだまだハプニングはあるのだが、まずはここまでということで。

文:合田道人
1979年、高校在学中に渡辺プロダクションから、シンガー・ソング・ライターとしてデビュー。その後、音楽番組の構成演出、司会、CD監修解説に加え、新聞、雑誌での執筆、作詩作曲、ラジオDJなど多方面で異才を発揮する。著書に『童謡の謎』『神社の謎』『昭和歌謡の謎』(祥伝社) 『怪物番組紅白歌合戦の真実』(幻冬舎)などがある。理事長を務める日本歌手協会の番組、『新春12時間歌謡祭』が1月3日昼12時から24時までBSテレ東で放送される。