<figure id="attachment_286956" aria-describedby="caption-attachment-286956" style="width: 2022px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="2ecc6cf3"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/f71cde22b2a08ab8143b688ee1a7809c.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-286956" class="wp-caption-text">後ろに控えながらオーラを放つ白川さんと、前に出ていても出しゃばらずに聞き役に徹していた山沖さん。オシドリ夫婦の秘訣はきっとこの絶妙なバランスだろう（撮影：椙浦菖子）</figcaption></figure>
<p>1979年に宝塚歌劇団に入団した、65期生の白川亜樹さんは、月組の男役スターとして活躍した。阪急ブレーブスで1984年に最優秀救援投手、1987年に19勝をあげて最多勝投手に輝いた山沖之彦さんとの結婚という華々しい寿退団でタカラヅカを後にした。1男1女をもうけ、子育てに専念する主婦として長年夫を支え続けた白川さん。夫の引退後はバーテンダーへの転身を経て、現在は夫婦で「おばんざいカフェ花唄」を営んでいる。これまでの人生を振り返って語ってもらった。</p>
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<h3>歌劇団へ報告前に「結婚」をすっぱ抜かれた</h3>
<p>タカラジェンヌといえば、「男女交際は禁止」であることは周知の事実だ。そんな中で、どこにいても目立ってしまう、身長191cmと体格のよい山沖投手との交際を進めて結婚まで至ったのだろうか。</p>
<p><span class="strongInContent">「同期生の五月梨世 さんがきっかけをつくってくれました。彼女が阪急ブレーブスのボビー・マルカーノのファンだったんです。球場通いをする彼女にくっついて一緒に野球観戦に行っていました。誰か応援する人を見つけたほうが楽しいといわれて、目に留まったのが、ルーキーだった山沖でした」</span></p>
<p>五月梨世さんは当時、阪急電車の雑誌に連載をもっていて、野球選手にインタビューしていたため、選手たちとの交流があったという。試合後に、選手とタカラジェンヌ数人で食事会があり、そこに行ったことが出会いのきっかけだった。</p>
<p><span class="strongInContent">「結婚したのは、私たちだけです（笑）。当時から山沖は、聞き上手で自己主張をするようなタイプではありませんでした。一緒にいてのんびり過ごせる心地よさと感じていました。多人数での食事会だったので、なかなか交際には発展しませんでしたが、遠征の見送りに空港まで行ったことがあって、それから意識してくれたようです」</span></p>
<p>現役のエースとタカラジェンヌなのだから当然、お互い忙しい状況。1月に2回会えたらいいほうだったそうで、タカラヅカの寮にある公衆電話から、10円玉をたくさん積んで山沖さんの寮に電話をかけたりして、愛をはぐくんだのだ。出会ってから結婚するまで２年８か月だったが、2年たったころ、阪急ブレーブスで活躍する外野手、簑田浩二さんに「早く結婚したほうがいい」と諭されたことが結婚のきっかけとなる。</p>
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<p>当時の野球選手といえば、32歳ごろに引退するというのが当たり前だった。山沖さんが寮にいられるリミットも迫る中で、結婚することを決意し、宝塚歌劇団に報告をしようと段取りをしているさなか、一部スポーツ紙の一面に結婚報道が出てしまったのだ。歌劇団には報告前だったため、当然、関係者はご立腹。とにかく平謝りするしかなかったと当時を振り返る。ただ宝塚歌劇団側に話をしたら、２人の交際に対して理解をしてもらい、記者会見を開いた。婚約会見もすべて、阪急グループの施設で手配してもらったという。</p>
<p><span class="strongInContent">「当時の婚約会見といったら、野球選手はお嫁さんになる人をお姫様抱っこをするのがお決まりだったんですね。でも、私は男役のタカラジェンヌでしたので、していただくわけにはいかないので…ナシです（笑）。結婚式はとても華やかに、新阪急ホテルの『紫の間』で4時間にわたってお祝いをしていただきました」</span></p>
<p>結婚後は家庭に入り、専業主婦として夫を支える日々を送った。結婚した当初は、少し成績不振が続き、「結婚したことが原因なのではないか」といった内容の誹謗中傷の手紙が自宅に届くようになり、心を痛めたこともあった。白川さんは、胃が痛くなるほど夫の野球の成績が気になっていたが、決して野球のことには口出ししないようにした。</p>
<p><span class="strongInContent">「夫は野球のことをうちに持ち帰らない主義だったんです。だから余計にそんな手紙が来たことなんて話せません。そういう手紙が届くのはつらくて悔しくて、なんとか勝たせなきゃと思いましたね。だからと言ってなにもできないから…せめて、うちに帰ってきたらほっこりできるようにと、夫が大好きなけんちん汁やアジの干物を用意して待っていました」</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="山沖さんは白川さんのどんなところに惚れたのか"></div>
<figure id="attachment_286957" aria-describedby="caption-attachment-286957" style="width: 1039px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="7686f248"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/986264917b01afb452bdc7b63391dd9a.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-286957" class="wp-caption-text">タカラジェンヌ時代の白川さん。172㎝とスラリした体形が目を引いた（提供：白川さん）</figcaption></figure>
<p>取材に同席してくれた山沖さんに、白川さんが奥様でよかったこと思うことを聞いてみた。</p>
<p><span class="strongInContent">「遠征に行くと肉料理が中心なんですよ。家に帰ったら野菜中心の和食を用意してくれたのはうれしかったですね。子どもたちも野菜をたくさん食べたし、なにより、父親が留守がちでも、無事に育ってくれたのは妻のおかげだと感謝しています」</span></p>
<p>野球のことで誹謗中傷が続いても、白川さんは何もできないことがもどかしく、悩むばかり。そんなときは、野球界の先輩ご婦人方に相談に乗ってもらった。1男1女をもうけ、家事と子育てに専念した白川さんだが、華やかな表舞台を知っているタカラジェンヌにとって、家庭内で過ごす日々はどのように感じられたのだろうか。</p>
<p><span class="strongInContent">「そもそも器用な人間ではないので、好きなことをしながら夫を支えるのは無理だと感じていたんです。〝野球選手の妻〟という職業をもらったと思っていました。夫が活躍できるように、和食中心の食事を作り、家庭を守る。子どもたちにはやりたいことをやらせてあげたいからと、習い事の送迎などもしっかりやりました。そのときは自分のやりたいことは別にしなくていいと思っていたんです。周りの人に助けられながら、みんなで子育てしましょうという関係が心地よかったですね。タカラヅカ時代の友人たちも、同じころに結婚して子供たちも同じくらいの子が多くて。一緒にごはんを食べたりして楽しかったですね」</span></p>
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<p>着物が大好きだった白川さんは、山沖さんがプロ野球を引退してから、着付け教室に4年半通って資格を取ったそうだ。現在でも、着付け教室を開催したり、夫との出会いのきっかけを作ってくれた五月さんとふたりで、「洋楽で踊る日本舞踊」のレッスンを行ったりしている。ラテンやＪＰＯＰに合わせた日本舞踊はファンの年齢層が広く、中学生から95歳のご婦人までが通う。着付けと日舞は趣味の延長であったが、白川さんはバーテンダーを13年勤めたあげた経験ももっている。</p>
<p><span class="strongInContent">「子どもから手が離れた2002年ごろに、バーテンダーにならないかと声をかけていただいたんです。自分のお小遣いは自分で稼ぎたいと思っていましたし、カクテルに興味があったので。宝塚ホテルのバーテンダーとして、13年間勤めました。お客様の笑顔が自分の喜びになるということをあらためて実感しました」</span></p>
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<figure id="attachment_286959" aria-describedby="caption-attachment-286959" style="width: 665px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="70287a27"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/2003022600110.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-286959" class="wp-caption-text">阪急ブレーブスで活躍した山沖さん。191㎝の高身長から繰り出される角度のある直球が武器に先発、抑えの両方でタイトルを獲得した（写真：共同通信）</figcaption></figure>
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<h3>白川さん夫婦の「今の生きがい」</h3>
<p>長男は和食の料理人としてお店を始めた。長女は母と同じ、タカラジェンヌの道へと進んだ。「子どもたちがやりたいことを応援する」という教育方針は、幼いころからブレなかった。なぜなら、白川さんも山沖さんも自分たちが、自分の好きなことをさせてもらって生きてこられたことに感謝があったからだ。</p>
<p>タカラヅカには興味がないと思っていた長女が、中学3年生の1月に突然「タカラヅカに入りたい」といったときも、甘くない世界だと知りながら、タカラヅカ受験のためにサポートをしたそうだ。たった2か月の準備期間ではあったが、幼少期から習っていたバレエやピアノが活きて、見事に合格を勝ち取ることができた。</p>
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<p>和食の料理店を営んでいた長男は、昨年結婚。お相手の家業である織物会社で修行することになった。もちろんこのときも、息子が決めたことを応援するという姿勢は崩れない。</p>
<p><span class="strongInContent">「長男がはじめた料理店をどうするかという話しになり、せっかく始めたお店だったので、私たちが引き継いでお店をやろうということになったんです。どちらかというと、いつも環境がやってくるという感じで。流れや可能性に任せて、これまでやってきました」</span></p>
<p>兵庫県神戸市内にある『おばんざいカフェ花唄』で提供する料理は、山沖さんが現役時代に何度もほっこりして助けられた、あの家庭の味だ。お客さんの中にはコンビニ食しか食べないという、若い女性客もいて、そういう人に喜んでもらえることが白川さん夫婦の生きがいとなっている。</p>
<p><span class="strongInContent">「私たち夫婦は、おばんざい料理が並んでいる食卓が好きなので、一人暮らしの人など、ほっとするようなお料理を食べてほしいなと家庭料理を出しています。毎日通ってくださる方もいるんですよ。空になったお皿を見るのは、うれしいですね。私たちは人に恵まれています。いまはお店が楽しくて！一生懸命やらなきゃって思っています」</span></p>
<p>タカラヅカで経験を積むといい奥様になれるという言い伝えは、白川さんのようにあたたかな家庭を築いてきた、元タカラジェンヌたちの歴史が作り上げたものに違いない。</p>
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<figure id="attachment_286961" aria-describedby="caption-attachment-286961" style="width: 1108px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="b8664c5d"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/09dda9800953d21b1ee0d8ab692e4a68.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-286961" class="wp-caption-text">タカラジャンヌ時代、楽屋にて（提供：白川さん）</figcaption></figure>
<figure id="attachment_286960" aria-describedby="caption-attachment-286960" style="width: 2022px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="1ba8a17e"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/04df0e5731fb580eca0fbe9fb90d03bc.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-286960" class="wp-caption-text">「野球選手の妻」を勤め上げた後は、日舞の先生やバーテンダーなど常にお客さんと接する仕事をしてきた（撮影：椙浦菖子）</figcaption></figure>
<figure id="attachment_286958" aria-describedby="caption-attachment-286958" style="width: 2022px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="1348be9a"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/DSC_3419rr.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-286958" class="wp-caption-text">終始ニコニコしていた山沖さん（撮影：椙浦菖子）</figcaption></figure>
<figure id="attachment_286962" aria-describedby="caption-attachment-286962" style="width: 2022px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="daa471de"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/f7219ddf3cb42d94ca80cd47f92c4ff2.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-286962" class="wp-caption-text">（撮影：椙浦菖子）</figcaption></figure>
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（うえがみ なつか）ライター／ビューティープランナー。ルミネtheよしもとにて、吉本新喜劇の女優として出演していたという、異色の経歴をもつママライター。多くの雑誌やWEBで美容から旅行、インタビュー記事などを執筆している。また、化粧品などの商品開発を手掛けるほか、生放送のTV通販番組にも出演中。趣味は台湾ドラマ鑑賞で、特技は中国語（HSK5級）。台湾との二拠点生活を夢見ている。

上紙夏歡

椙浦菖子

後ろに控えながらオーラを放つ白川さんと、前に出ていても出しゃばらずに聞き役に徹していた山沖さん。オシドリ夫婦の秘訣はきっとこの絶妙なバランスだろう（撮影：椙浦菖子） 1979年に宝塚歌劇団に入団した、

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