箱根駅伝 立教・上野監督「使わない」発言で注目“偵察メンバー”の悲哀「家族にも話せずに…」 | FRIDAYデジタル

箱根駅伝 立教・上野監督「使わない」発言で注目“偵察メンバー”の悲哀「家族にも話せずに…」

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1位でゴールしたアンカー・青柿響(左)を抱き締める駒大の大八木弘明監督
1位でゴールしたアンカー・青柿響(左)を抱き締める駒大の大八木弘明監督

第99回箱根駅伝は、駒澤大学が往復路Ⅴの総合優勝で、悲願の史上5校目の学生駅伝3冠を達成した。

「今年も見どころ十分の大会でした。駒大に追いすがる中大、9区では6校が並ぶ3位争い、シード権(上位10校)にしても10区までもつれました。そして大会史上最長の55年ぶりに返り咲いた立教大が江戸紫の襷をつなげるか、駅伝ファンを熱くさせました」(スポーツ紙記者)

毎回、悲喜こもごものドラマが生まれるのも箱根駅伝の魅力の1つだが、

「今大会は、立教大の上野裕一郎監督が『“偵察メンバー”は使いません』と発言したことで、例年以上に12月29日の『区間エントリー』が注目されました」(同・スポーツ紙記者)

スポーツ界であまり聞きなれない、この「偵察メンバー」について、スポーツライターが解説する。

「箱根駅伝は、まず12月10日に各チーム16人が登録され、同29日に1~10区と補欠6人の登録が行われます。そして往復路ともにスタートの70分前に『当日変更』ができます。

変更は区間登録選手と補欠選手の入れ替えだけで、例えば1区と2区を交代させる区間選手同士の変更は認められません。そのため、エースにアクシデントが発生した場合に備えて、準エースを補欠として登録しておきます。この時に準エースが走る予定の区間に登録される選手を『偵察メンバー』と呼び、当日欠場が前提のため、悲哀を味わうことになります」

箱根駅伝の伝統的なルールの1つである“当日のエントリー変更”や“偵察メンバー”は、危機管理と考えればわかりやすい。

「例えば、“花の2区”のエースにアクシデントが発生した場合、区間登録された選手同士の交代は認められていないので、実力順に区間登録していれば、11位の補欠選手が“花の2区”を走ることになってしまう。そこで主力クラスの選手を事前に補欠に登録しておく訳です」(前出・スポーツライター

また、ケガなどから不調気味の主力選手の回復をギリギリまで見定めたいというケースもあるそうだが、

「他校の配置を見てから勝負区間へ投入するような戦術的な変更もあり得ます。‘19年大会で5連覇を逃がした原監督が『区間配置を間違えた』と振り返るほど重要な戦術です。他校の動向ではなく、単独走が得意か、競り合いに強いか、といった個性も見極めて、監督が往復路ともに最終決定し『当日変更』を行います」(前出・スポーツライター)

当日変更は、‘20年まで4人までだったが、コロナ渦もあり‘21年から6人以内に拡大された(ただし、1日に4人まで)。今年の区間エントリーを振り返っても、多くの大学で主力級を補欠登録する作戦が見受けられたそうで、

「昨年の覇者の青学大では、エース級の太田蒼生(2年=前回3区で2位)や岸本大紀(4年=同7区で1位)を補欠に置き、前回2位の順大も3位の駒大も、それぞれ注目の三浦龍司(3年)や篠原倖太朗(2年)らを補欠にしていた」(前出・スポーツライター)

立教大の上野監督は偵察メンバーを使わない理由として

「実は偵察メンバーの配置の仕方がよく分からない」

とも話していたが、こんなケースもある。元東洋大監督の佐藤尚氏が明かす。

「東洋大が総合優勝を果たした‘14年の90回大会では、エースの設楽啓太を補欠にして、当日の箱根の天候を現地で確認してから5区の起用を決めています。理由は細身の体形のため、悪天候の山登りをさせたくなかったからでした」

母校の優勝やシード権取りのために欠かせない偵察メンバー。とはいえ、12月29日から本番当日まで悲哀を味わうことになる。

「12月29日の区間登録はスポーツ紙が一斉に報じるため、選手のもとには祝福メールが届きます。しかし、基本的にチーム戦略が絡むため、誰にも『偵察メンバー』だと明かさない。つまり、家族から“おめでとう!”とメールが来ても、自分が偵察メンバーとは言えないのです。

監督のなかには『区間エントリーを見て楽しみにしている家族や関係者も多いので、あまり変更枠を使うつもりはない』と話すが、多くの監督が『申し訳ない』と思いつつ、情報の口外を封じる。ただこれをバネにして、翌年、快走する選手も多い。今年も、前回の『偵察メンバー』が補欠に登録され、当日変更で快走したケースがありました」(前出・スポーツ紙記者)

レースの裏にある悲喜こもごも。日本が生んだ「駅伝」からは、1本の襷の重みがしみじみと伝わってくるのだ…。

 

  • 写真共同通信

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