ランナーの出身地別に見る箱根駅伝 全国の精鋭が集う大会の背景 | FRIDAYデジタル

ランナーの出身地別に見る箱根駅伝 全国の精鋭が集う大会の背景

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20大学1連合、全336名の選手が参加する「箱根駅伝」。写真は2018年時のもの(アフロ)
20大学1連合、全336名の選手が参加する「箱根駅伝」。写真は2018年時のもの(アフロ)

出場大学は関東のみ、しかし地方出身のランナーが多い

正月の晴れ舞台を走る学生ランナーたちの姿はキラキラと輝いて見える。例年、25%以上もの高視聴率に到達する箱根駅伝。約11時間のドラマは、正月の最強コンテンツになった。そんな特別なレースが全国大会ではなく、関東ローカルの大会であることはよく知られている。

だからといって、地区大会のレベルかというとそうではない。学生駅伝の全国大会にあたる10月の出雲全日本大学選抜駅伝と11月の全日本大学駅伝は、例年関東地区の大学が上位を占拠しているのだ。ちなみに全日本大学駅伝で関東以外の大学が優勝したのは1986年の京都産業大学(京産大)が最後。一桁順位も1999年の京産大の5位まで遡らないといけない。21世紀に入り、高卒で実業団に進む選手もグッと少なくなり、有力ランナーの関東一極集中が強まっている。

そのため全国から有力選手が集まる箱根駅伝は、地方出身のランナーが非常に多い。2020年1月2・3日に開催される第96回大会にエントリーされた選手は全336人(1チーム16人)。出身校の都道府県別で見ると、千葉がトップで30人、2位が静岡で27人、3位が東京で17人となっている。トップ10は以下の通りで、京都、福岡、愛知、福島、兵庫のエントリー数は10人以上もいる。

●都道府県別エントリー人数
1位:千葉 30人
2位:静岡 27人
3位:東京 17人
4位:神奈川 14人
同5位:群馬、埼玉、京都、福岡 13人
9位:愛知 12人
同10位:福島、兵庫 11人

トップの千葉は高校駅伝のレベルが高く、強豪校がひしめいている。市立船橋高校が7人、八千代松陰高校が6人、拓殖大学紅陵高校が4人。他に10校からエントリー選手を送り込んだ。

2位の静岡は前回からエントリー人数を6人も増やし、27人。2017年の全国高校駅伝で6位に入っている浜松日体高校が出身校別で最多の10人を数えるだけでなく、島田高校が5人、加藤学園高校が3人。他に6校となっている。

ちょっと意外なのは東京が3位につけていることだ。現在の大学生が高校生だった6年間(2013~2018年)で、全国高校駅伝で入賞するようなチームは東京にはなかった。神奈川も4位につけていることから、単に〝地元〟の大学に進んだ選手が多かった結果だと考えられる。

静岡出身選手だけで優勝チームが作れる?

仮に静岡出身の有力選手だけでチームを作ったとすると、こんな感じのオーダーを組むことができる。

【静岡出身者チーム】
1区 池田耀平(日体大4)28分47秒
2区 伊藤達彦(東京国際大4)28分26秒
3区 太田直希(早大2)28分48秒
4区 太田智樹(早大4)28分56秒
5区 小縣佑哉(日体大4)29分29秒
6区 荻野太成(神奈川大4)28分39秒
7区 鈴木創士(早大1)28分48秒
8区 小野寺悠(帝京大3)29分14秒
9区 藤曲寛人(順大4)28分47秒
10区 渡邉奏太(東洋大4)28分59秒
補欠 亀田優太朗(日体大3)29分01秒
河田太一平(法大1)29分06秒
※タイムは1万メートルの自己ベスト

登録選手上位10人の1万メートル平均タイムは28分50秒。なんと前回王者・東海大の同平均タイム(28分50秒54)に匹敵する。箱根駅伝で優勝を狙えるだけの戦力だ。福岡、福島、兵庫にも好選手がそろっており、これらの県でも強力なチームができあがる。

逆にエントリー人数の少ない都道府県に目を向けてみよう。和歌山、奈良、島根、高地、沖縄は0人だった。なお1人は山梨と富山。山梨は東洋大・宮下隼人(2年)、富山は國學院大・浦野雄平(4年)で、ともに5区にエントリーされた。県でひとりしかいないとなると、県民全員がその選手を応援するような雰囲気になるだろう。しかも、浦野は前回5区で区間賞&区間新記録。「山の神」に最も近いといわれる浦野が順位を上げるたびに富山県民が大熱狂するかもしれない。

優勝候補の3主将が埼玉栄の同級生

今回は東海大、青学大、東洋大、駒大、國學院大の〝5強対決〟が予想されている。そのなかで東海大・館澤亨次、駒大・中村大聖、國學院大・土方英和の3主将が埼玉栄高校時代のチームメイト。これもドラマを感じさせるものだ。

10月の出雲駅伝では中村(駒大)と土方(國學院大)がアンカー勝負を繰り広げて、全国高校駅伝を走ることができなかった土方が先着。國學院大が学生駅伝で初タイトルを勝ち取った。一方、館澤(東海大)は出雲を故障のために欠場。チームは4位に終わっただけに、相当悔しい思いをしたという。なお、高校時代は館澤がキャプテンでエース。中村が準エースという位置だった。館澤と中村は3年連続で全国高校駅伝に出場して、2年時に埼玉栄は6位に入っている。

ちなみに3人のうち埼玉出身は中村のみ。館澤は神奈川の出身で、高校時代は寮生活だった。土方は千葉出身で、片道1時間半かけて学校に通っていたという。出身高校と出身地の都道府県にズレが生じるのは陸上に限らず、スポーツの世界ではよくあること。出身校だけでなく、出身地も確認するとより面白いかもしれない。

箱根駅伝に出場できるのは20校と学生連合の1チーム。自分の出身大学が出場していなくても、おらが町の選手が出場することで、その人気は日本中に広まったと考えられる。観戦の際には、出場選手が網羅されているガイドブックなどを用意しておくと、箱根駅伝に親近感が沸くはず。絶対に応援したくなる選手が出てくるので、観戦がもっと楽しくなるだろう。

  • 酒井政人

    スポーツライター。東農大1年時に箱根駅伝10区出場。現在は様々な媒体で執筆中。著書に『ナイキシューズ革命』(ポプラ社)など。

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