創価大学の躍進で見えた「箱根駅伝」の切実な舞台裏 | FRIDAYデジタル

創価大学の躍進で見えた「箱根駅伝」の切実な舞台裏

視聴率30%以上 私立大学の4割が赤字で苦しむ時代に広告効果が抜群 野球、ラグビー、サッカーよりも効果的にアピールが可能

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創価大は4区で実力者の嶋津雄大(3年)が先頭を走る東海大・佐伯陽生(1年)を一気に抜き去り、首位に立った(写真:AJPS/PICSPORT)
創価大は4区で実力者の嶋津雄大(3年)が先頭を走る東海大・佐伯陽生(1年)を一気に抜き去り、首位に立った(写真:AJPS/PICSPORT)

駒澤大の総合優勝で幕を閉じた今年の「箱根駅伝」。本来ならば関東学生陸上競技連盟に加盟する大学が出場する「地方大会」の一つに過ぎないはずだが、今や大学にとって、学校名を売るための〝一大ビジネス〟の場となっている。

「箱根駅伝で活躍した大学が得られる一番の直接的な経済効果は、ブランドイメージが上がることで、受験生が増えること。つまり受験料収入のアップです。特に中堅校や新興校にとっては効果が大きいでしょう。あとは、大学関連グッズの売り上げが増加するほか、自分の大学が健闘すればOBが喜びますから、寄付金が増えることでしょうね」(第一生命経済研究所首席エコノミスト・永濱利廣氏)

今年の箱根駅伝の視聴率(関東地区)は、往路が31.0%、復路33.7%だった。優勝争いを演じれば、2日間合わせて10時間も、超高視聴率番組でユニフォームが映し出され、大学名が連呼される。

少々古いが、’07年に優勝を果たした順天堂大学のメディア露出量は、広告費換算で推定約20億円、広報効果は約60億円におよぶという研究論文まである。

「今はネットニュースやSNSがありますから、波及効果は当時の数倍であり、若者にも浸透します。さらに結果を取り上げる媒体も信頼できるメディア中心で、しかもポジティブな情報を掘り下げてくれる。箱根駅伝は広告・広報の場として最高ですよ」(大手広告代理店幹部)

自身も東農大1年生時に箱根駅伝に出場した経験を持つスポーツライターの酒井政人氏はこう解説する。

「例えば山梨学院大学は箱根駅伝に出場してから、偏差値がグッと上がりました。強豪校となった青山学院大や東洋大も受験者数が確実に増えています。受験者を増やすためのアピールの機会だと考えている大学は多いですよ。高校における甲子園のような存在になっています」

現在、日本の私立大学の約4割が赤字に陥っている。受験者数の確保は大学にとって死活問題である。 ある新興大学の幹部職員はこう明かす。

「サッカーや野球、ラグビーは競争相手が多いので、伝統のない学校が急に全国トップレベルに強くなるのは難しい。箱根駅伝出場は、それらに比べるとまだ可能性があるんですよ。専用の練習場や特別な用具も必要ないですし、おカネがかかるのは長期の合宿費用くらい(笑)。重要なのはとにかく人材。長く速く走れるというのは素質の面が大きいですから」

今年は創価大が箱根駅伝に初出場からわずか6年で「総合2位」と大健闘した。これはヒトを集めた結果だろう。

「創価大が躍進した一番の理由は、選手時代に4年連続区間賞を獲得して箱根を知り尽くす榎木和貴監督(中央大OB・元トヨタ紡織陸上競技部監督)を2年前に招聘(しょうへい)したこと。すでに何年も前から設備の強化を行い、強豪校と同じぐらいの練習環境は整っていました。GPSウォッチをチームとして利用し、皆でトレーニングのデータを共有して分析したことも大きい。さらに独自のパイプを持つ瀬上雄然(せがみゆうぜん)総監督が主にスカウトを行い、人材を集めていたのでしょう」(酒井氏)

箱根で勝つために、20㎞をしっかり走れる選手をいかにして10人揃えるか。熾烈なスカウト合戦が大学間で行われている。それこそ12月に行われる全国高校駅伝は「草刈り場」なのだという。

「出場している2年生をスカウトしに行くんです。有望な3年生はすでに夏のインターハイの前には進路が決まっています。2年生のうちに声をかけておかないと獲得は難しいです」(酒井氏)

ある大学の陸上関係者はこう明かす。

「よく知られているのは、『2代目・山の神』と言われた柏原竜二をめぐる争いです。早稲田大に決まりかけていたところを、東洋大が巻き返して彼の入学を勝ち取った。翌年、東洋大は柏原の活躍により箱根で優勝を果たし、受験者数が1万人増えたと言われています。これが各大学に与えた影響が大きい。箱根を目指す大学は、山登りの5区や花の2区で力を発揮してくれそうな素質を持つ高校生には、入学金・授業料や寮費の免除、ケガをした際の治療費負担、希望の学部への進学などの条件を提示します。箱根で活躍してくれれば、それらは安いものです」

今年からユニフォームの中にスポンサーのロゴを入れることができるようにもなった。箱根駅伝のビジネス化の傾向は今後、さらに強くなっていくだろう。

1区を激走する創価大の福田悠一(4年)ら。近年は早稲田大や明治大、中央大といった古豪よりも中堅校や新興校の躍進が目立つ
1区を激走する創価大の福田悠一(4年)ら。近年は早稲田大や明治大、中央大といった古豪よりも中堅校や新興校の躍進が目立つ

『FRIDAY』2021年1月22日号より

  • 写真AJPS/PICSPORT

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