フリーランスの編集／ライター。元バンドマン、放送作家くずれ。エンタメ全般が好き。特にお笑い芸人をリスペクトしている。2021年4月に『志村けん論』（朝日新聞出版）を出版。個人サイト「不滅のライティング・ブルース」更新中。http://s-akira.jp/

鈴木 旭

<figure id="attachment_296473" aria-describedby="caption-attachment-296473" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="f4484c81"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/7bf63ea7c4bcaed81fa011f5488ca17c.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-296473" class="wp-caption-text">本誌のカメラを前に、おどける太田。夜遅くの取材だったが、時折ギャグを挟みながら、最後まで笑顔で応じた</figcaption></figure>
<p><span class="strongInContent">「もうダサくていいや。どうせそこまで格好いいコメディアンにはなれないから」</span></p>
<p>これまでの芸人人生について尋ねると、太田光（57）は自嘲気味にそう語った。</p>
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<p>’88年に『爆笑問題』としてデビューした太田は、今年で結成35周年を迎える。歯に衣着せぬ物言いでお笑い界のご意見番となったが、最初から今のスタイルだったわけではない。ブレイクのきっかけとなった’93～’94年放送のネタ番組『ＧＡＨＡＨＡキング 爆笑王決定戦』（テレビ朝日系）では、死に物狂いで王者の座を射止めた。</p>
<p><span class="strongInContent">「ほかは俺らより若手が多くて、こいつらに負けるわけにはいかないってとにかく必死でしたね。あと俺らの代はみんな仲が悪かった。『ホンジャマカ』とか『浅草キッド』とか。まぁ俺が一方的に悪口を言ってただけなんだけどさ（笑）。ただ、少しでも早く世に出てやるって気持ちは、人一倍強かったですね」</span></p>
<p>当時はお笑いだけに徹する職人的なスタイルを粋（いき）に感じていたという。だが売れていくにつれ、理想は揺れていった。</p>
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<p><span class="strongInContent">「たとえば立川談志（享年75）と古今亭志ん朝（享年63）っていう落語の天才が同時期にいて、どっちも格好いいわけ。志ん朝師匠は、まるで音楽のように、ただただ聴き心地のいい落語をやる。一方で談志師匠は、落語を分析する本を書いたり政治家になってむちゃくちゃやったり、場外パフォーマンスがすごい。芸人として粋なのは志ん朝師匠ですよね。けど談志師匠も落語って枠には収まらない格好良さがある。今なら多くを語らず笑いに徹する明石家さんまさん（67）と、映画撮ったり小説書いたりする北野武さん（76）みたいなもので。自分はどっちつかずなんだよね。ずーっと迷ってきた」</span></p>
<p>そんな太田にとって大きな転機になったのが、’06年４月からレギュラー放送された『太田光の私が総理大臣になったら…秘書田中。』（日本テレビ系）だ。</p>
<p><span class="strongInContent">「『ダサいけどいいか』って覚悟したのは、あれが大きかったかもしれないね。石破さん（茂・66）とかと、青臭い正論をマジメに激論するみたいな番組だから。最初は『ここまで政治について語るのは、コメディアンがやることじゃないんじゃないか』って迷いながらだったけど、そんなこと言ってる場合じゃなかった。そういう仕事が来て引き受けちゃったから、中途半端にはできないしね。我ながら格好いいコメディアンにはなれなかったけど、今思えば、その選択は良かったのかもしれないですね」</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="立川談志の言葉・・・"></div>
<h2>挑戦のウラにある談志の言葉</h2>
<p>57歳を迎えた今でも太田は事務所ライブの舞台に立ち続けている。漫才を続ける原動力について、太田は「ネタ作りは、若手の頃から義務だった」と当然のように語る。</p>
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<p><span class="strongInContent">「数ヵ月に一回、ライブまでに新ネタを作るっていうのは35年間ずーっとルーティンとしてやって来たこと。だから自分にとって漫才は日常なんですよ。続けたいっていうよりは、生きていくために続けるしかないものだから」</span></p>
<p>一方で、年々活動の幅は広がっている。昨夏にはユーチューブチャンネル『爆笑問題のコント テレビの話』を開設し、テレビ番組の制作会社を舞台としたコント動画を週１回ペースで公開している。</p>
<p><span class="strongInContent">「何度もコント番組の企画書をテレビ局に出したけど、なぜか全然採用されなくて（笑）。そんな時に、カンニング竹山（51）がオンラインサロンでやってる配信番組にゲストで出たんです。そこで普通のバラエティーと変わらないんだと思って、『ユーチューブでコントできるかな』ってやり始めたんだよね」</span></p>
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<p>３月には最新小説<a href="https://amzn.to/3lEpaYB" target="_blank" rel="noreferrer noopener">『笑って人類！』（幻冬舎）</a>が発売される。今作は近未来を舞台にした500ページを超える超大作だ。</p>
<p><span class="strongInContent">「豊﨑由美さんっていう私が大尊敬する書評家がいるんですけど（苦笑）。過去作で『太田さんはテレビで見る限り編集者の言うことは聞かないから伸びないだろう』と批評されたり、褒められたことが一度もない。だから、『今度こそギャフンと言わしてやる！』ってことで、ちゃんとした長編を書いたんですよ」</span></p>
<p>挑戦を続ける根幹には、自身の芸風にも影響を与えた立川談志の存在がある。</p>
<p><span class="strongInContent">「生前、談志師匠に『漫才捨てるなよ』って言われたことがあります。当時は意味がよくわからなかった。ただ、談志師匠って癌の進行で声を失う直前まで舞台に立ち続けたんですね。そのウラには、芸とは自分が答えを出すんじゃなくて、『立川談志が問いかけたものを、お客がどう受け取ったか』が答えだという考えがあった。つまり大衆がどう考えるかがすべてであるっていうね。だから最後までお客との繫がりを断たなかったし、古典芸能だからと、守られた世界には絶対に行かなかった。今ではあのときの言葉の意味が少しわかる気がします」</span></p>
<p>太田の存在は、後輩にも大きな影響を与えている。同じ事務所の『ウエストランド』は、『M-1グランプリ2022』優勝後の本誌インタビューで、「芸に真摯に向き合う姿勢から刺激をもらっている」と明かしている。後輩の成長について水を向けると、太田は「俺のおかげじゃない」と言いながらも笑みを浮かべた。</p>
<p><span class="strongInContent">「『ウエストランド』は我々の番組の前説を何年もやってたから、素直に報われて良かったなと思うだけだね。でも『ウエストランド』と同期の『日本エレキテル連合』が『ダメよ～ダメダメ』で’14年の流行語大賞を取った時は悔しかった（笑）。俺が『ピップ』（中指と人差し指を額につけ、相手に向けながら言う一発ギャグ）を流行らせて、取りたかったからね」</span></p>
<p>ベテランとなった今でも、「後輩にポジションを譲る気はない」と明言し、舞台に立ち続ける姿勢も崩さない。</p>
<p><span class="strongInContent">「若い頃から『夢路いとし・喜味こいし』さんとか『Ｗけんじ』さんとか、大ベテランたちを間近で見てるんですよ。年齢を重ねるほどに、『何やってんだ、いい歳して』って可笑しさが出てくるんですよ。今後、何か成し遂げたいなんてことは別にない。ただ、俺もそんなふうに、ずっと漫才ができたらいいなって思うね」</span></p>
<p>高らかに生涯現役を宣言した太田。その姿に&#8221;ダサさ&#8221;は微塵もなかった。</p>
<figure id="attachment_296472" aria-describedby="caption-attachment-296472" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="5bcaf3c4"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/f86e3963064e1c76715f32c0e49e5bcf.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-296472" class="wp-caption-text">Ohta Hikari 57歳 ’65年、埼玉県ふじみ野市出身。日本大学時代に出会った田中裕二（58）と共に、’88年に『爆笑問題』を結成した。お笑い以外に、映画や芸術にも造詣が深く、今後は絵画の制作や映画の監督業もやってみたいと意欲を燃やす</figcaption></figure>
<figure id="attachment_296469" aria-describedby="caption-attachment-296469" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="f1ab7449"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/a7c86e37e61f5a41acf1f4d6d0b01982.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-296469" class="wp-caption-text">事務所ライブには毎回参加する。「追い詰められないとネタが出ないから、前日は大変だ」と楽しそうに嘆いた</figcaption></figure>
<figure id="attachment_296475" aria-describedby="caption-attachment-296475" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="53c544da"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/026bea875c3cffb00de312c276ecf641.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-296475" class="wp-caption-text">時事ネタ×毒舌と、自身と似た芸風でブレイクした『ウエストランド』。後輩の活躍ぶりに太田は目を細める</figcaption></figure>
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<figure id="attachment_296468" aria-describedby="caption-attachment-296468" style="width: 1814px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="46935a63"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/jinrui.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-296468" class="wp-caption-text"><a href="https://www.amazon.co.jp/%E7%AC%91%E3%81%A3%E3%81%A6%E4%BA%BA%E9%A1%9E%EF%BC%81-%E5%A4%AA%E7%94%B0-%E5%85%89/dp/4344040813?_encoding=UTF8&amp;qid=&amp;sr=&amp;linkCode=sl1&amp;tag=fridaymag-22&amp;linkId=86a8b30f25884d641c70430f875c458c&amp;language=ja_JP&amp;ref_=as_li_ss_tl">『笑って人類！』（幻冬舎）</a>3月8日発売</figcaption></figure>
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<figure id="attachment_296470" aria-describedby="caption-attachment-296470" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="ce91c931"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/f9779b815355ccf226b285ef2543a7d5.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-296470" class="wp-caption-text">本誌未掲載カット　爆笑問題･太田光 スペシャルインタビュー</figcaption></figure>
<figure id="attachment_296471" aria-describedby="caption-attachment-296471" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="c084ccfa"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/82a9f3e9fc6c066ac2a15653fe11c4a7.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-296471" class="wp-caption-text">本誌未掲載カット　爆笑問題･太田光 スペシャルインタビュー</figcaption></figure>
<figure id="attachment_296476" aria-describedby="caption-attachment-296476" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="95423e3e"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/b4d097b33b894c8ad078a86ef0a9ce84.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-296476" class="wp-caption-text">本誌未掲載カット　爆笑問題･太田光 スペシャルインタビュー</figcaption></figure>
<figure id="attachment_296474" aria-describedby="caption-attachment-296474" style="width: 1667px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="3ddedfbe"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/c75feb133913a242a850da55a70bcfc4.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-296474" class="wp-caption-text">本誌未掲載カット　爆笑問題･太田光 スペシャルインタビュー</figcaption></figure>
<p>『FRIDAY』2023年3月3・10日号より</p>


お笑い研究家・鈴木 旭

結束武郎（1～2枚目、ウエストランド）　産経新聞社（3枚目）

今年で結成35周年を迎える"爆笑問題・太田光"に本誌がSPインタビュー！芸人人生について「ダサくていいや」と自嘲気味に語るも…今でも舞台に立ち続け、生涯現役！と宣言したその姿から見えたものは…

爆笑問題･太田光インタビュー「我ながらダサいコメディアンになっちまったな」

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