<figure id="attachment_301164" aria-describedby="caption-attachment-301164" style="width: 1364px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="c741d461"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/87c246043d03263abf24225c994829bd.png" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-301164" class="wp-caption-text">本誌の取材に応じたアザー氏。BBCでは15年間にわたり、さまざまな報道に関わってきた</figcaption></figure>
「このドキュメンタリーを見る多くの人はかなり不快に感じるでしょう。ただ、それが契機となって話し合いが起こり、社会全体で変化することができると思います」
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こう語るのはイギリス公共放送「BBC 」の記者であるモビーン・アザー氏だ。彼は、現地時間3月7日に放送されたドキュメンタリー『Predator：The Secret Scandal of J-Pop（捕食者：Jポップの秘密のスキャンダル）』の取材を担当したジャーナリストである。
3月18日の18時10分より、日本語字幕付き版がBBCワールドニュースにて放送される。それに先立ち、アザー氏は本誌の取材に対し「日本で放送できて嬉しい」と喜びを口にした。
「イギリス国内では大きな反響がありました。具体的な視聴率などはお教えできませんが、公式ホームページ上の『trending programs（話題の番組）』というランキング欄では、放送直後からずっとトップ３入りを果たしています。さらに各新聞社でも記事が扱われました。SNSを通じて日本での反応も見ていましたが、番組の放送については概ね好評な意見が多くて嬉しかったですね」
番組は日本以外の国にも配信予定で、動画サービスに加入していればどの国にいても閲覧可能となる。全世界に向けての放送に合わせて、内容の一部変更が行われたという。
「いくつかのシーンを削除しており、番組は数分短くなっています。具体的にどのシーンを削ったとは言えません。ただ、イギリスで報じられたフルバージョンでは、冒頭に『graphic（どぎつい）な描写がある』という警告が出ます。世界に向けて発信するにあたり、そういった気分を害するキツい描写を出すのはいかがなものか、と判断してカットしました」
<div data-friday-nextpage-lead="どう取材を進めていったのか"></div>
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<figure id="attachment_299160" aria-describedby="caption-attachment-299160" style="width: 1733px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="dbdacfe9"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/3ae49d6d0867abebfb1d93a1b57baa21.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-299160" class="wp-caption-text">近年は所属タレントの退所が相次いでいる。今回の放送は、大きな岐路に立つ事務所にどんな影響を与えるのか</figcaption></figure>
日本のみならず、世界中でも大きな反響を呼びそうな今回の番組。ジャニーズ事務所の初代社長であるジャニー喜多川氏（享年87）の性加害疑惑について切り込んだ内容で、1999年に「週刊文春」が報じた喜多川氏の性加害疑惑を掘り下げ、複数の元ジャニーズJr.や記者たちに取材を行っている。
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「構想が持ち上がったのは4年前です。番組中にも登場する『週刊文春』の記者たちから、喜多川氏の裁判の話を聞いたことがきっかけでした。どうしてこの報道が話題にならないのか、私もBBCも興味を持ちました。その後も入念なリサーチを重ね、’22年8～9月には実際に日本を訪れて取材を行いました。コロナがなければ、もう少し早く形にできたと思います」
取材は最初から困難の連続だった。
「リサーチを始めた初期段階で、取材は難航するだろうと直感しました。我々は何度もジャニーズ側にコンタクトを図りましたが、彼らはまったく反応しませんでしたからね。『答えられない』という返答すらなかった。完全に無視された状態でした。
そこで途中から、被害者へコンタクトを取る方法に切り替えたのです。リサーチを重ねる中でファンが作成した特定の非公式サイトが信用に足り得るとわかり、フェイスブックやインスタグラムなどのSNSも活用して、相互参照しながら被害者を特定し、アポイントを取っていきました。取材に応じてくれる方を見つけることはとても難しかったです。番組に出演してくれた何倍もの被害者にアタックしました。だからこそ、取材に応じてくれた方々の勇気ある行動には、改めて御礼を言いたいですね」
日本に来日してからも、取材はスムーズにいかなかった。中でも一番困惑したのは、ファンの対応だ。
「事務所の関係者は何も語ってくれないことは明白だったので、我々はファンの方々の証言に活路を見出そうとしたのです。しかし、重要な証言に触れそうになると、皆さん『ジャニーズ事務所を怒らせたくない』と口を閉じるのです。まるで宗教のようだと感じました。ファンまでコントロールしているのかと…。それが一番驚いたことですね」
<div data-friday-nextpage-lead="取材を通じて伝えたかったこと"></div>
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<figure id="attachment_299248" aria-describedby="caption-attachment-299248" style="width: 571px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="5da06218"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/d8b0f96adf6177526a23f05c8b2e808d.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-299248" class="wp-caption-text">ジャニー氏の葬儀で、遺影を持つ滝沢秀明。後継者と目されていたが、昨年、事務所を退社した</figcaption></figure>
数々の障壁に阻まれながらも、BBC取材班は核心に迫っていく。リサーチ期間も含めると、足かけ4年にわたる入念な取材を経て、満を持しての放送となった。
「すべての取材を終え、日本を去るときには達成感もありました。しかし、一番大きかったのは疲労感です。取材はショッキングなことの連続でした。被害者の中には言葉を詰まらせ、答えられなくなる方もいました。喜多川氏が現在も英雄として扱われていることには強い違和感を覚えます。その評価が変わらない限り、彼から搾取された方々の傷は癒えません。これはいますぐ変えるべきことです」
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最後に改めて今回のドキュメンタリーの意義について問うと、アザー氏は少し考えこんだ後に、こう明かした。
「この番組は日本社会を批判しているわけではありません。私自身、旅行で訪れたことがありますが、日本の文化も人も大好きです。ですからこの番組は日本文化を批判しているではなく、日本の芸能界の『沈黙の文化』を批判しているのです。正しいストーリーが広まり、社会がより良い方向へ変化することを願っています」
「第２弾はあるのか？」と問いかけると、アザー氏は「もちろんその可能性はあります。ただ、まずは世界がどう反応するのか、見てみましょう」と語った。アザー氏が、BBCが投じた一石は世の中をどのように変化させていくのだろうか。

アフロ（2枚目）、結束武郎（3枚目）

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