「ありのままをさらけ出す」昨年だけで映画５本＆テレビ4本！「女優・岸井ゆきの」が重宝がられる理由

 

風がやや冷たかったとある朝。都内・西新宿の路上でドラマ『日曜の夜ぐらいは…』（テレビ朝日系）のロケが行われていた。

スタッフの輪の中にいたのは岸井ゆきの（31）だ。歩道の上に置かれた台の上に彼女が立つとカメラが回り始める。すると近くにいるスタッフが大量の美容グッズの箱などを岸井の目の前にばら撒いた。次の瞬間、岸井が台からジャンプする、という流れだ。

よく見ていると、岸井が大量の美容グッズやカップラーメンの袋を両手に提げた状態で派手にコケてしまい、持っていた商品を道にぶちまけてしまうシーンのようだ。演技中の岸井はコケる前もコケた後もずっともの憂げな表情だった。

「このシーンは、岸井さんが演じる女性が宝くじが当たって1000万円を手にしたものの、ロクでもないことで散財してしまって自己嫌悪に陥っている場面でした。今回のドラマはそれぞれ日常生活に孤独と閉塞感を抱えていた３人の女性が、偶然出会うことによって人生を変えていく女同士の友情物語です。１月期の『ブラッシュアップライフ』（日本テレビ系）のような恋愛要素を抜きにした女性の友情が共感を呼んでいます。岸井さんは清野菜名さん（28）、生見愛瑠さん（21）とともに３人のメインキャストの１人を演じています」（テレビ局関係者）

昨年から岸井の快進撃が続いている。

「昨年は映画５本、ドラマ４本に出演し、映画『ケイコ 目を澄ませて』で今年３月に日本アカデミー賞の最優秀主演女優賞を受賞しました。ドラマでは恋愛感情・性欲を持たない『アロマンティック・アセクシュアル』の主人公を演じた『恋せぬふたり』（NHK）や、山﨑賢人（28）と松下洸平（36）に挟まれて日曜劇場のヒロインを演じた『アトムの童』（TBS系）などが話題になりました。自然体でリアルな演技が評価されています」（映画関係者）

岸井は高校時代に山手線の中でスカウトされ、’09年に女優デビュー。20歳のときに自分から劇団に応募し、舞台に出ているうちに映画やドラマへの出演機会が増えていく。’16年にはNHK大河ドラマ『真田丸』、’18年にはNHK朝ドラ『まんぷく』に出演。徐々に世間に認知されるようになり、’19年の主演映画『愛がなんだ』のヒット以降は、実力派女優としてさらに演技に磨きがかかっていく。ストレートで自分ごとぶつかっていくような演技は、コンプレックスの裏返しなのかもしれないと、岸井はあるインタビューで語っていた。

「もし仮に、その場で変に頑張ってキラキラしようとしたら、その役自体が嘘になっちゃうかなって思います。私がこれで生きてきて、役をもらっているということは、きっとありのままを出すべきなんだって。ケイコの役なんてまさにそうで、私が演技をしてしまったら本来伝わるものが半分になると思ったので、『私がいまを生きている』姿を撮ってもらうのが一番いいなと」（『文春オンライン』より）

「彼女の魅力はなんと言っても表情が豊かなところ。“超美人”というわけではありませんが、ついその表情に惹き付けられてしまうのは、やはり演技力があるからでしょう。舞台出身ということもあって、演じられる役柄は幅広いし、感情が豊かなうえに表現力がハンパじゃない。並のアイドル女優では太刀打ちできないところがある。本田翼、剛力彩芽、指原莉乃ら同い年の女優は少なくないですが、演技力ではこの世代ではちょっと抜きん出てますね。年を重ねるにつれ、いい女優さんになるかもしれません」（大手広告代理店関係者）

’19年に『愛がなんだ』がヒットする頃までは「周りの人が引くほど」、寿司店のバイトを続けていたという岸井。ずっと世話になっていたこともあり、感謝の意を込めて、いまだに年に２～３回は顔を出すという。そんな普通の生活を大事にしているところが、彼女の魅力なのかもしれない。