<h3><span class="strongInContent">ミシュランのスターシェフはそんなに儲かるのか</span></h3>
<p><span class="strongInContent">連日ニュースになっているシェフといえば鳥羽周作氏。これだけ毎日、多くのメディアに名前が登場するシェフは、なかなかいない。記事の内容も様々で、事案の発端となった週刊文春のインタビューでは、40社くらいのクライアントのうち9割が契約解除となり、</span><span class="strongInContent">３</span><span class="strongInContent">億円くらいを失ったと述べている。多くの人がこの金額の大きさに驚かされたようで、ミシュランスターシェフはそんなに儲かるのかと私も訊かれることがある。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
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<figure id="attachment_320340" aria-describedby="caption-attachment-320340" style="width: 5783px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="fc375338"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/7b3d03e1c68f2202d84559c321e47fa0.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-320340" class="wp-caption-text">&#8217;22年５月、東京ミッドタウンで開催された世界最大級のマーケティング＆コミュニケーションのイベント「アドバタイジング・ウィーク」に登場した鳥羽周作氏。博報堂のWEBによると、テーマは「食とクリエイティブの可能性」（PHOTO：アフロ）</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">「ミシュランガイド東京2023」</span><span class="strongInContent">の</span><span class="strongInContent">掲載店数は422店</span><span class="strongInContent"> </span></h3>
<p>ミシュランガイドは<span class="strongInContent">「そのために旅行する価値のある卓越した料理」</span>を三つ星、<span class="strongInContent">「遠回りしてでも訪れる価値のある素晴らしい料理」</span>を二つ星、<span class="strongInContent">「近くに訪れたら行く価値のある優れた料理」</span>を一つ星、<span class="strongInContent">「価格以上の満足感が得られる料理」</span>をビブグルマンとして、レストランを評価している。</p>
<p>調査の基準は世界共通であり、料理のカテゴリーに関係なく「素材の質」「料理技術の高さ」「味付けの完成度」「独創性」「常に安定した料理全体の一貫性」を厳正に審査。調査員は調査であることを伏せて、通常の客と同じように予約してレストランで食事し、料金を支払う。ミシュランガイドへの掲載可否や星の評価については、複数の調査員、編集長、ガイドブックの総責任者による合議制で決められており、公正かつ公平なシステムが築かれている。</p>
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<p>「ミシュランガイド東京2023」では、掲載店数は全部で422店となっており、フランス料理の星付きレストランは51店のみ。<span class="strongInContent">東京には10万店以上の飲食店があるとされていることを鑑みれば、ごく一握りのレストランだけが栄誉に浴していることがわかるだろう。</span>競争の激しい飲食業界において、星を持っていることで他店と大きく差別化できる。フレンチの料理人であれば、みんながミシュランガイドの星を目指しているといっても過言ではない。</p>
<figure id="attachment_320341" aria-describedby="caption-attachment-320341" style="width: 6000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="1ebe9256"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/e29cc9b7de6a4de1449d90676c0aabab.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-320341" class="wp-caption-text">その日から人生が変わる…。写真は本国フランスで開催された2023年ミシュランガイドの授賞式。通訳になるためにフランスに行くのが夢だった西アフリカの国ベナン出身の独学シェフ・ジョージアナ・ヴィウさんが「星」を受賞した</figcaption></figure>
<div data-friday-nextpage-lead="降格を悲観して自殺、裁判沙汰…"></div>
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<h3><span class="strongInContent">三つ星からの降格を予期して銃で自殺…</span></h3>
<p>本場フランスでは、星を巡る事件も起きている。バターやクリームを排する“水の料理”で有名な「ラ・コート・ドール」のベルナール・ロワゾーは、三つ星からの降格を予期して&#8217;03年に銃で自殺。しかし、後に刊行されたミシュランガイドでは三つ星を維持していた。アルプスの名店「ラ・メゾン・デ・ボワ」のマルク・ヴェラ氏は三つ星から二つ星に降格されると、&#8217;19年にミシュランガイドを提訴。審査報告書の開示や慰謝料を要求したが、裁判では退けられている。</p>
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<figure id="attachment_320343" aria-describedby="caption-attachment-320343" style="width: 1509px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="01acae0a"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/1b898d5a2531d03bc0ad1497d92f37b9.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-320343" class="wp-caption-text">ミシュランの星をすべて剥奪され凋落していた仏ブルゴーニュのレストラン「ラ・コート・ドール」を買い取り、見事蘇らせたベルナール・ロワゾー氏。その後は、ブティックの展開など実業の世界にも踏み出し、1998年にはシェフとして初めてパリ証券取引所に上場</figcaption></figure>
<p><span class="strongInContent">アワードやコンペティションではないので、ミシュランガイドに掲載されても、レストランに何か報酬があるわけではない。しかし、星を獲得すると世界はガラリと変わる。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p>大きなところでは、集客だ。ミシュランガイドで星を獲得していれば、味が保証されているとみなされるので、集客力が高まる。ミシュランガイドで一つ星として発表されると、その瞬間から予約が入り、いきなり予約困難店になったりするのだ。一流店として認められるので、価格も上げやすくなる。クオリティをさらに高めるためもあり、星を獲得すると値段を上げるレストランが多い。売上が増え、利益が大きく出るようになれば、他店舗展開したり、よりよい場所に移転したりすることも可能だ。</p>
<p>仕入れに関しても有利になる。よりよい食材やドリンクが、より安い価格で仕入れられるのだ。食材やワインの卸売業者は、営業文句になるので星付きレストランに仕入れてもらいたがっている。テーブルウェアや什器についても同様だ。</p>
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<p><span class="strongInContent">世界的にガストロノミーの世界では、シェフに焦点が当てられており、実力やバックグラウンドはもちろん、タレント性も求められる。星を持っていればミシュランスターシェフと称され、メディア露出も増える。多くの人の目に触れることになれば、憧れの対象となり、よい人材も採用しやすい。どこで修業したかが重要となるだけに、若手料理人は星付きレストランに採用してもらい、働きたいと考えている。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="事業を広げすぎて、負のスパイラルに…"></div>
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<h3><span class="strongInContent">「副業」で、メニュー開発、コンサルティング契約、YouTube…、そして、ロイヤリティビジネス</span></h3>
<p>シェフの名前が売れてくると、舞い込んでくるのが“副業”だ。ほとんどの費用をパトロンに出してもらえるオーナーシェフになれたり、レストランをプロデュースしたり、メニューを開発したり、コンサルティングしたり、調理学校の講師を打診されたり、アンバサダーに就任したりと、実入りのいい仕事が回ってくる。それぞれ金額はピンキリだが、たとえば、<span class="strongInContent">メニュー開発</span><span class="strongInContent">ではレシピ数が少ないと数万円から、コンサルティング契約で毎月何十万円以上、プロデュースでは継続的に売上の数パーセントが振り込まれるケースもある。</span></p>
<p>YouTubeで動画を配信して、再生回数も伸びれば、こちらでも収益を上げられるだろう。事務所に所属してタレントにシフトすれば、数万円しか支払われない文化人枠ではなくなるので、メディア露出でも儲けられる。</p>
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<p><span class="strongInContent">そして最も大きな収益となり、最終的に到達したいのが、ロイヤリティビジネス。加盟事業者を集めて、商品や店舗を展開すれば、ほぼリスクなしに安定した利益を手に入れられる。ここまでくると、シェフという枠を超えてやり手の実業家だ。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<figure id="attachment_320344" aria-describedby="caption-attachment-320344" style="width: 1667px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="7ff53dda"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/91d885fd035d0bcec28b4d46a400078f.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-320344" class="wp-caption-text">&#8217;07年に欧米以外で初めて発刊された「ミシュランガイド東京2008」では、三つ星８軒、二つ星25軒、一つ星117軒をはじめ150軒が掲載された。鳥羽周作氏がオーナーシェフのフレンチレストラン「sio」は、2020版から３年連続一つ星を獲得している</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">事業を広げすぎて、負のスパイラルに…</span></h3>
<p>美味しい副業にありつけるのは、あくまでもミシュランスターシェフであることが前提。星を落とすことになれば、明るい未来は消えてしまう。事業を広げすぎて、本業に労力もお金もかけなくなれば、質が落ちるのはあっという間だ。その結果、星を取りこぼしてしまえば、副業の調子も一気に悪化する。副業の儲けが少なくなると、より本業にお金がかけられなくなり、星を再び奪取することは、さらに難しくなってしまうのだ。</p>
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<p><span class="strongInContent">一度星を失ったり、格下げされたりしてしまうと、ほとんど復活できないのは、この負のサイクルに陥るからである。副業で儲けたら、そのお金をしっかりと自身のレストランに注ぎ込み、星を維持しなければならない。お金が欲しいから星を獲得するのではなく、星が取りたいからお金が必要。そう考えるシェフの頭上に、星は輝き続けるのだ。</span></p>


'76年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で'02年と'07年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

東龍

アフロ

連日ニュースに登場している鳥羽周作氏。インタビューでは、今回のW不倫騒動で、40社くらいのクライアントのうち９割が契約解除となり、３億円くらいを失ったと。ミシュランスターシェフはそんなに儲かるのか。

鳥羽シェフは「３億円失った」星を巡って自殺や裁判も…「ミシュランとビジネス」の知られざる世界

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