<figure id="attachment_329190" aria-describedby="caption-attachment-329190" style="width: 3648px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="1ad9a798"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/85e959043c514f8ba4025a4e638196f9.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-329190" class="wp-caption-text">”怪俳優”酒向芳が１時間にわたって俳優人生を語ってくれた</figcaption></figure>
<p>酒向芳（64）は、“怪演”という言葉がピッタリの俳優だ。</p>
<p>NHK大河ドラマ『どうする家康』で演じた明智光秀は非業の死を遂げたが、嫌味な性格で田舎者を見下し、情けないほどに信長の機嫌を取り続けた男は、最後まで視聴者の同情を買うことはなかった。’20年放送のNHK大河ドラマ『麒麟がくる』で長谷川博己（46）が演じた、正義感の強い光秀とは真逆のキャラを見事に作り上げたのだ。</p>
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<p><span class="strongInContent">「’18年公開の映画『検察側の罪人』で殺人事件の被疑者を演じ、その”怪演”で注目を集めました。右の頬からこめかみにかけての大きなアザのある風貌で、突然『パッ』と奇声を発したり、タップダンスを踊るキャラに『怖い』『不気味』といった声が上がるほどでした」（映画制作関係者）</span></p>
<p>『最愛』（TBS系）では、行方不明になったレイプ犯の息子を探す父親役を演じた。目をひんむき、唾を飛ばして喚き散らす演技は狂気を感じさせるほどだった。その他にも、NHK大河ドラマ『青天を衝け』の代官役など、出演時間は決して長くないが、『イヤだな〜』と感じるその強烈な個性は、視聴者の脳裏にこびりつくほどだ。それらのキャラは一体、どのようにして作られるのだろうか。</p>
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<p><span class="strongInContent">「ぼくは役作りをしないんですよ。劇団時代に役作りをしろとすごい言われたんですが、どうやって役を作るんだ？　って、ずっと思っていました。そんな時、ある舞台で外国の演出家の方に、</span></p>
<p><span class="strongInContent">『あなたがいて、あなたの役があって、その向こう側にあなたがいなければ役は見えてこない。</span><span class="strongInContent">役を通してあなたが見えると、あの人はこういう人だってわかる。そこに厚みが出る』</span></p>
<p><span class="strongInContent">って言われて。要するに自分は自分のままでいればいいと言われたんですね。やっぱり役作りしなくていいんだって。あえて役を作らないことの重要性を教えてもらいました。その言葉を大事にしています」</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="役者として”心を裸にできた”瞬間とは..."></div>
<h3>「心を裸にできた」瞬間</h3>
<p>身長184センチ、体重70キロ。手足が長くスタイル抜群。子供に「これ着て行って」と用意された仮面ライダーのプリントTシャツをおしゃれに着こなすナイスガイ。静かに語る雰囲気は紛れもないジェントルマンだ。そんな彼が俳優を目指したのは小学２年生の時だった。</p>
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<p><span class="strongInContent">「学校にやってきた移動劇団の女性の演技を見てすごく感動したんです。その女性がとても元気でハキハキしていて。ぼくは恥ずかしがり屋な子供だったんですが舞台を見終わった後、一番前まで行って何も言わずにただ手を出して握手を求めました。今思うと、あれが一番最初の、この世界に入るキッカケだったと思います」</span></p>
<p>それ以来、俳優以外の仕事をしたいと思ったことは一度もない。好きな仕事だから苦労とも感じなかったという。ただ、長い下積み時代は続き、役者だけで食えるようになったのは50歳を越えてから。そのターニングポイントは、</p>
<p><span class="strongInContent">「ドイツの演出家の舞台に出た時に自分の中で大きく何かが変わりました。男女２人芝居の舞台なんですけど、男女が最後には裸になってお互いを曝け出すシーンがあったんです。ずっと稽古していたんですけど、裸になることはなくて。日本での舞台だし、さすがに裸はないかって思っていたら、本番３日前の稽古で『じゃあ裸になろうか』って言われて。</span></p>
<p><span class="strongInContent">50のおじさんが一糸纏わぬ姿で小さな舞台を駆け回るのかって思ったんですけど、やってみたら自分の中の取り繕う部分とかカッコつけている部分が全部取れたんです。その時に、俺は俺だからって思って。体だけでなく、心を裸にできた気がして。それは自分の役者人生の中で大きな転換期でした」</span></p>
<p>という。その結果、得た答えが先ほどの「自分のままでいること」。そして、もう一つ演じる上で大事にしていることがある。</p>
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<p><span class="strongInContent">「役に共感をもてるか。これは本当に大事なことだと思っています。どんな凶悪犯でもぼくにはどこか共感できる部分があるんです。逆に自分が共感できない役を演じることはぼくにはできないと思います。だから台本を読んでまず共感できるかが役を演じる上で重要なポイントだと思っています」</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="”怪俳優”酒向芳が憧れる俳優は？"></div>
<h3>「西田敏行さんや石橋蓮司さんにはなりたくてもなれない」</h3>
<p>もちろん、それだけではないはず。好きな映画や俳優の影響は受けてはいないのだろうか。</p>
<p><span class="strongInContent">「黒澤明監督や小津安二郎監督の作品に出てきた俳優さんの影響は受けていると思いますよ。よくあんな演技できるなって感銘を受けました。加東大介さんの演技がすごい好きで。あまりにも演じるものと役が一体化して”そこにいる”と錯覚させられるような。</span></p>
<p><span class="strongInContent">共演した人で言うと西田敏行さんや石橋蓮司さんはやっぱり格が違いますね。自分が真似してもなれないから参考にはしないんですけど、なりたい気持ちはあります」</span></p>
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<p>最後に酒向に役者の仕事の醍醐味を聞いてみた。</p>
<p><span class="strongInContent">「前頭葉を使って想像することが一番の魅力だと思います。どうしようかな、ああすればいいのかなって、じっと考えて…。自分が考えたことが皆さんに受け入れてもらえたら本当に嬉しいし、この仕事だからこそ感じられる魅力が詰まっていると思います」</span></p>
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<p>９月下旬に全国公開予定の映画『沈黙の艦隊』では、外務大臣・影山誠司を演じるが、もしかしてこれは…イヤな奴ではない酒向の演技を観る絶好の機会かもしれない。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="ちゃめっ気たっぷりの酒向の素顔"></div>
<figure id="attachment_329191" aria-describedby="caption-attachment-329191" style="width: 3648px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="a7185bd9"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/2ad6f7391233a70c5f8533a06fa50300.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-329191" class="wp-caption-text">「ご覧の通り、こんなヘアスタイルですから」とちゃめっ気たっぷりに頭を撫でる酒向</figcaption></figure>
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<figure id="attachment_329192" aria-describedby="caption-attachment-329192" style="width: 3648px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="26d8623e"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/ba6628498b298db985ae7d53c711cbd4.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-329192" class="wp-caption-text">我々がよく映画やドラマで観るコワモテの酒向芳</figcaption></figure>
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<figure id="attachment_329193" aria-describedby="caption-attachment-329193" style="width: 3648px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="06b6a25e"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/3e3ab7747174b59a41b52c27368003b0.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-329193" class="wp-caption-text">娘さんに「これ着て」と言われたので着たきたという仮面ライダーのTシャツ姿がキマッている</figcaption></figure>
<figure id="attachment_329194" aria-describedby="caption-attachment-329194" style="width: 5472px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="ddd0644f"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/f6f011c3be170f2f1d06d9d0d390dbba.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-329194" class="wp-caption-text">「嫌われ役ばかりやってきたから、街を歩いていても誰からも声をかけられないから楽です」と笑う酒向</figcaption></figure>


小檜山毅彦

NHK大河ドラマ『どうする家康』で明智光秀を演じた”怪俳優”酒向芳。イヤな奴を演じたらピカイチの存在感を放つ稀代の俳優だが、その素顔はよく笑うナイスガイだった。素顔の酒向は一体どんな人なのだろう？

『どうする家康』の明智光秀…イヤな奴を演じたらピカイチ！”怪俳優”酒向芳が「心を裸にする」瞬間

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