1979年、高校在学中に渡辺プロダクションから、シンガー・ソング・ライターとしてデビュー。その後、音楽番組の構成演出、司会、CD監修解説に加え、新聞、雑誌での執筆、作詩作曲、ラジオDJなど多方面で異才を発揮する。著書に『童謡の謎』『神社の謎』『昭和歌謡の謎』(祥伝社) 『怪物番組紅白歌合戦の真実』(幻冬舎)などがあり、現在『歳時記を歌った童謡の謎』（笠間書院）もヒット中。理事長を務める日本歌手協会の番組『新春12時間歌謡祭』が１月２日昼12時から24時までBSテレ東で放送される。

合田 道人

<h3><span class="strongInContent">嵐、安室奈美恵、山口百恵…</span></h3>
<p>グループとしての活動を休止するため、<span class="strongInContent">嵐</span>が”最後”の『紅白』に出場したのは令和２（’20）年。また大みそかで産休に入ったため、この舞台が彼女の姿の見納めになるか？と囁かれたのが、平成９（’97）年の<span class="strongInContent">安室奈美恵</span>。しかし翌年５月に無事出産、１年後の『紅白』には去年と同じ『CAN　YOU　CELEBRATE？』を涙で熱唱した。</p>
<p>さらに翌年に結婚が噂され「これが最後の紅白か？」と言われ、結果的にそうなったのが<span class="strongInContent">山口百恵</span>、<span class="strongInContent">森昌子</span>、<span class="strongInContent">南沙織</span>、<span class="strongInContent">ザ・ピーナッツ</span>らである。しかし昌子、沙織は引退後に「一日だけの復活」として『紅白』に出場したことがあり、昌子においてはその後、離婚して歌手を再始動した年に『紅白』カムバックを遂げている。（現在はふたたび引退）。</p>
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<p>さて<span class="strongInContent">キャンディーズ</span>は、「普通の女の子になりたい」と発言して解散引退を表明。翌年の４月解散に向けてのラスト『紅白』が昭和52（’77）年の『やさしい悪魔』だった。その後、３人はそれぞれで活動し、田中好子はすでに鬼籍に入っているが、今年の『紅白』では46年ぶりに<span class="strongInContent">伊藤蘭</span>が『紅白』に登場するのが話題である。現在の朝ドラ「ブギウギ」で<span class="strongInContent">笠置シヅ子</span>（ドラマ内では福来鈴子）を演じる趣里が、蘭の娘である。</p>
<figure id="attachment_351547" aria-describedby="caption-attachment-351547" style="width: 1250px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="ec99e905"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/c7f7effbe9bf51fca9c95fc2af4cee10.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-351547" class="wp-caption-text">46年ぶりに『紅白』に登場する伊藤蘭。写真は、翌年、東京・後楽園球場で行われた「さよなら公演」（PHOTO:産経新聞社）</figcaption></figure>
<p>その笠置も歌手を辞め女優の道を歩んだため、その前年の『第７回紅白』（’56年）が最後の出演となったが、笠置が歌手を引退した昭和32（’57）年の『紅白』の舞台で、しっかり引退した歌手がいた。<span class="strongInContent">小畑実</span>である。</p>
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<h3><span class="strongInContent">「目から涙がポロポロと出だしましてね。しまいにはステージも客席も見えないほど…」</span></h3>
<p>小畑は戦時中の『湯島の白梅』『勘太郎月夜唄』、戦後には『長崎のザボン売り』『星かげの小径』などの大ヒット曲を連打。その甘い歌声で雑誌『平凡』の人気投票で、女性１位が美空ひばりなら男性１位は小畑というほどの大スターだった。</p>
<p>それが昭和30（’55）年、男性１位を前年『お富さん』が大当たりした<span class="strongInContent">春日八郎</span>に奪われ２位に。翌年、トップ返り咲きを狙ったが２年連続で春日がトップになった。</p>
<p>さらに翌32年には、春日に代わり<span class="strongInContent">三橋美智也</span>が首位に立ち、若手歌手の台頭で小畑は10位まで転落してしまう。その結果を見て「<span class="strongInContent">歌手は人気があるうちが花。人気が落ち込む前に引退しよう」</span>と自らの歌手人生に見切りをつけ、『紅白』を花道に17年間の歌手人生にピリオドを打ったのである。</p>
<p>“なつメロブーム”が起こる昭和40年代になって小畑は請われて歌手としての再スタートを切ったが、その頃にその日の『紅白』を回顧した文章が残っている。</p>
<p><span class="strongInContent">「ステージに出たら、なんだか感情が胸に込み上げてきましてね。それは、プロですから歌うことは、歌いましたけれども、なかなか声が出ないんですね。そのうちに目から涙がポロポロと出だしましてね。しまいにはステージも客席も見えないほど涙が出てしまい、ともかくえらい感激したことでした」</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="都はるみ・鈴木健二アナウンサーの歴史に残る名発言"></div>
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<h3><span class="strongInContent">都はるみの引退紅白…鈴木健二アナウンサーの歴史に残る名発言の舞台ウラ</span></h3>
<p>そしてもうひとり、デビュー20年目を迎えた昭和59（’84）年の『紅白』を花道に引退したのが<span class="strongInContent">都はるみ</span>である。</p>
<p>全国ラストコンサートを終えての最後の舞台。歌順も大トリ。司会の森光子が涙混じりに<span class="strongInContent">「20年間、ありがとう。都はるみさん」</span>と紹介するとラストのシングル曲、大ヒット中だった『夫婦坂』のイントロが始まった。緊張した面持ちでゆっくりとセンターの大階段を下りながら、「この坂を越えたなら幸せが待っている」と、まるで自分に言い聞かせるかのようにはるみは歌詞の一言一句に思いを込めて歌った。</p>
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<p>「これが最後」と訴える気迫があった。歌唱が終わり大きな拍手と声援がうごめいた。はるみは全身の力が抜け落ちたように、ぐったりしながら泣きじゃくる。</p>
<p>客席からアンコールの声。白組司会の鈴木健二アナウンサーのあの歴史に残る名発言が飛び出す。<span class="strongInContent">「はるみさんに頼んでみます。私に１分間時間をください」</span>。でも生放送終了の時間が迫る。鈴木がはるみの肩に手をかけ、<span class="strongInContent">「歌えますか」</span>と呼びかけたそのとき、アンコール曲『好きになった人』の前奏が始まってしまったのである。</p>
<p>鈴木は心で“しまった”と叫んだという。副調整室にいたチーフプロデューサーの勝田稔は、モニターテレビに映るふたりを見ながらも、冷静に伴奏開始のキューを出したのだった。</p>
<figure id="attachment_351525" aria-describedby="caption-attachment-351525" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="7b0878b1"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/cd6f134e173036ad90a2c94b5ace54ab.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-351525" class="wp-caption-text">デビュー20年目を迎えた昭和59（’84）年の『紅白』を花道に引退した都はるみ（PHOTO:共同通信）</figcaption></figure>
<p>鈴木アナは年明けの新聞インタビューで「もしあのとき、伴奏が始まらなかったらもっと違ったドラマが生まれたはず。あと45秒あったら…」と語ったが、総責任者の勝田は「放送時間を延長することができたらもっと違った展開になっていたかもしれませんが」と言いつつも、「それは不可能なことでした」と語った。</p>
<p>はるみは、ほとんど『好きになった人』を歌えなかった。涙と興奮で声にならない。放心状態だったのである。それを助けるかのように出演メンバーたちが、そして客席の人たちが泣きながらもはるみを見つめながら一緒に歌った。総合司会の生方恵一アナウンサーの、あの「ミソラ事件」が起こるのはこのすぐ後のことである。</p>
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<p><span class="strongInContent">「異常な空気でした。みな泣いていました。この舞台で都はるみは美空ひばりを越えたなと思った瞬間、思わず“ミソ…”と言ってしまった。でも『紅白』終わったあとの正月休みが大変でしたね。ひげを剃ろうとしてカミソリ持ったら、家族から“お父さん、早まらないで”って言われたりしてねえ」</span></p>
<p>その後、はるみは昭和が終わり平成になった年の「第40回紅白」に、やはり「一日だけの復活」をしたが、その好評で翌平成２（’90）年には歌手復帰。「千年の古都」で大トリ歌手として紅組に戻ってきた。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="チェッカーズ「北島さんの代わりにトリを…」"></div>
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<h3><span class="strongInContent">チェッカーズ「北島さんの代わりにトリをつとめたいなと思います」</span><span class="strongInContent"> </span></h3>
<p>解散を控える形のステージとしては、平成８（’96）年の<span class="strongInContent">米米CLUB</span>、翌９（’97）年の<span class="strongInContent">X JAPAN</span>、さらに平成11（’99）年の<span class="strongInContent">SPEED</span>、平成24（’12）年の<span class="strongInContent">FUNKY MONKEY BABY</span>などがいるが、やはりここは平成４（’92）年の<span class="strongInContent">チェッカーズ</span>の思い出を。</p>
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<p>この日で解散を声明していたチェッカーズは、出場メンバー発表当日が解散全国ツアーの初日だった。舞台上で<span class="strongInContent">藤井フミヤ</span>は「紅白で燃えつきるまでよろしく！」とファンに報告、さらに「北島さんの代わりにトリをつとめたいなと思います」と宣言したのだ。</p>
<p>最後の舞台はデビュー曲『ギザギザハートの子守唄』に始まった。会場内ではファンが一緒に歌い出す。続いて初ヒット曲にして『紅白』初出場曲『涙のリクエスト』、そして『星屑のステージ』に『I　LOVE　YOU　SAYONARA』、さらに最後のシングル『Present　for　You』とボルテージを上げながらのメドレー歌唱が続いたのだ。メドレーという異例待遇もあって、結局トリは予定どおり（？）に<span class="strongInContent">北島三郎</span>『帰ろかな』。そのフミヤも今年『紅白』<wbr></wbr>に帰ってきた。</p>
<figure id="attachment_351548" aria-describedby="caption-attachment-351548" style="width: 1250px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="71ada090"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/43a57e0224e7c53502c94991eb2406bd.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-351548" class="wp-caption-text">「北島さんの代わりにトリをつとめたいなと思います」と宣言したチェッカーズの藤井フミヤだったが…（PHOTO:産経新聞社）</figcaption></figure>
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合田道人

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