世界一の寿司屋 豊洲・大和寿司に最高級の本マグロが届く理由
世界最大級の口コミサイト1位で外国人客殺到
昼時は1時間待ちの行列
「銀座にある超高級寿司店にも負けないマグロだよ」
カウンターの中から、店主の入野信一氏(75)が笑いかける。
鮮やかな桜色の身に、霜降りの大トロ。口の中に入れたとたん、旨味がとろけ出した。最高級の本マグロでなければ味わえない贅沢である――。
東京・豊洲市場内にある「大和寿司」は創業57年の老舗だ。昨年10月の市場移転とともに、築地から引っ越し。市場内にあるため仕入れのための配送費もかからず、安く最高級の寿司を提供している。多くの客の目当ては店自慢の「マグロ握り」だ。千葉・勝浦産の大トロの「蛇腹(じゃばら)」(特に脂が乗った部位)が一カン800円、中トロが700円(各税別)である。
「大和寿司は世界一の寿司屋です。米国の世界最大級の口コミ情報サイト『Yelp(イエルプ)』で、『東京の寿司屋ランキング』1位に輝き一躍注目されました。昼時では1時間待ちも当たり前。3日連続で行列に並んだ、外国人観光客もいるそうです」(グルメライター)
本マグロの競りが始まるのは早い。早朝5時半からスタートし、100㎏を超す大物は開始10分ほどで競り落とされる。大和寿司にネタを届けるのはマグロ仲卸「やま幸(ゆき)」。銀座の高級寿司店「久兵衛」にも納める名店で、年明け最初の「初競り」で最高額の本マグロを競り落とす常連だ。同社社長の山口幸隆氏(56)が取材日(5月上旬)に競り落としたのは、112㎏もある勝浦産の最高級本マグロ。大トロがとれる「腹上(はらがみ)」のブロックなら、仕入れ値で10万円はする。
「マグロの優劣を見分けるのは、本当に難しい。ベテランになっても、競りは博打のようなものです。的確にいいネタを競り落とす『やま幸』さんのような仲卸は魚河岸(うおがし)の花形です」(マグロ仲卸業者)
市場専用の三輪自動車「ターレ」に載せられた「腹上」のブロックは、「やま幸」を出発し、競り落とされてから2時間後に大和寿司に届けられた。
「ウチで握る本マグロの大トロは、脂が乗った『腹上』のみです」
こう語るのは、大和寿司の仕入れ担当部長の入野光広氏(49)だ。信一氏の次男である光広氏が、到着したばかりの「腹上」を手際よく柵取(さくど)り(身を切り分けること)していく。同氏が話す。
「縄(延縄漁(はえなわりょう))でとったマグロは、身が締まっていて食感が『ゴリッ』としています。一方、網(旋網漁(まきあみりょう))でとったマグロは甘くて柔らか。お客さんの好みもあるけど、ウチでは網がおススメかな」
大和寿司には隣接した2店舗がある。向かって右の店では父親の信一氏が握り、左では長男の成広氏(52)がもてなす。”親子寿司”なのだ。席はそれぞれカウンターの12席ずつ。午前5時半の開店と同時に客が暖簾をくぐり始め、7時を過ぎると店の前に行列ができた。
供せられるのは、世界中の美食家をうならせる大トロだ。
![朝5時半からの競りを控え、入荷した本マグロを吟味するマグロ仲卸「やま幸」の社長・山口幸隆氏](https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/c_scale,dpr_2,f_auto,t_article_image,w_664/wpmedia/2019/06/393dcb78c42fd901d878ed7de1b30660.jpg)
![世界最大級の口コミサイト「Yelp」で「東京の寿司屋ランキング」1位になった大和寿司。いかに感動的な味だったかというコメントが書き込まれている。](https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/c_scale,dpr_2,f_auto,t_article_image,w_664/wpmedia/2019/06/6868088add6a05a8b5227da9c0b58ab7.jpg)
![1本のマグロを解体するのにかかる時間は、ほんの数分。頭を落とし三枚に分け巨大な冷蔵庫で保管し出荷されるのを待つ。](https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/c_scale,dpr_2,f_auto,t_article_image,w_664/wpmedia/2019/06/4bd5ade23917df51c9f13442e18376fd.jpg)
![千葉・銚子産本マグロのカマトロ。霜降りで上質な脂が乗っていて、1本から数カン分しか取れない希少部位だ。握りだと税別で一カン900円。](https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/c_scale,dpr_2,f_auto,t_article_image,w_664/wpmedia/2019/06/9a686eb3a65d8d1b22924144c5eaa2d5.jpg)
![大和寿司では白身ネタも充実。写真は撮影時の「おまかせセット」(七カン+巻き物3種+汁。税別4000円)と別注の宮城産ホシガレイ。勝浦産の大トロの蛇腹に、九州産スミイカ、中トロ、玉子、長崎・対馬産アナゴ、長崎産イサキ、根室産バフンウニ、熊本産車エビ。巻き物は鉄火巻、北海道産塩イクラ、ネギトロ巻。](https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/c_scale,dpr_2,f_auto,t_article_image,w_664/wpmedia/2019/06/5a995da61e25364ba10813d98b8879d3.jpg)
![土曜日の昼時は1時間は待つ、ご覧の行列。月曜から土曜日の朝5時半から午後1時まで営業する](https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/c_scale,dpr_2,f_auto,t_article_image,w_664/wpmedia/2019/06/5f3a89b28157a9ab3917227ed087e2dd.jpg)
![「やま幸」の店頭では朝競り落としたばかりの本マグロが次々と解体されていく。100㎏超の大物だと解体も3人がかりだ](https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/c_scale,dpr_2,f_auto,t_article_image,w_664/wpmedia/2019/06/40a259a1102799fa2eef9d90b7278d0a.jpg)
『FRIDAY』2019年6月14日号より
- 撮影:武藤誠
- 取材:明石昇二郎