TBSドラマはホームラン狙いで明暗! 『ノーサイドゲーム』は?

結果的に振れ幅の大きいTBSドラマの魅力。『集団左遷!!』『わたし、定時で帰ります。』『インハンド』 春ドラマの決算報告 

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GP帯(夜7~11時)放送の民放春ドラマを振り返ると、高齢層狙いで世帯視聴率を安定させているテレビ朝日と、世帯は最下位ながら若年層トップの日本テレビが、全く対照的な戦略をとっていた。

その中にありTBSは、春クールもそれまでも世帯視聴率2位が多い。また個人視聴率でみても、各世代で上位につけることが多く、極めてバランスが良い視聴層となっている。

安定しているように見える同局ドラマの内実を考察してみた。

TBSドラマの見られ方

4月クールのTBSドラマは、ビデオリサーチの世帯視聴率(関東地区)でみる限り、3本とも9~10%台、GP帯14本では5~7位と安定したポジションを確保していた。
福山雅治主演『集団左遷!!』が10.5%で5位、吉高由里子主演『わたし、定時で帰ります。』が9.7%で6位、山下智久主演『インハンド』が9.2%で7位となった。

3ドラマ平均をスイッチ・メディア・ラボによる個人視聴率(関東地区)でみると、C層(4~12歳)とT層(13~19歳)は4局中3位とやや苦戦気味。ただし1層(20~34歳)・2層(35~49歳)およびは3+層(65歳以上)は2位、3-層(50~64歳)では断トツの1位と、視聴者層のバランスが極めて良いことがわかる。

予算をかけた力作がならぶ日曜劇場、20~40代の女性をターゲットとした火曜ドラマ、文芸作品や話題作の多い金曜ドラマのラインナップで、結果的に多様な視聴者層を獲得していると言えそうだ。

日曜劇場の位置づけ

3本のラインナップの中にあり、日曜劇場の存在感は際立っている。
16年以降の各局の視聴率をトレースすると、『世帯視聴率トップを独占 テレ朝ドラマ「勝利の方程式」の落とし穴』で戦略を詳述した通り、高齢層を囲い込んだテレ朝が長くトップを走っている。

そして10%弱で3位の多い日テレは、『日テレドラマの秘策 世帯視聴率は最下位でも個人視聴率で圧倒!』で触れた通り、ここ1年で若年層獲得に特化し、広告収入で安定している。

その中にありTBSは、基本的に2位で推移しているが、その地位を支えているのが日曜劇場となっている。
例えば16年のTBS3ドラマの平均視聴率は9.9%。火曜ドラマと金曜ドラマはいずれも一桁だったが、11.8%の日曜劇場が平均を押し上げた格好だ。
17年も3ドラマ平均は10.7%。13.5%の日曜劇場が牽引した。18年も3ドラマ平均10.6%は、日曜劇場の13.8%に支えられた。

働き盛りの男性に刺さるドラマ

ではTBSドラマの看板枠となる日曜劇場は、どの視聴者層により高視聴率を獲得しているのだろうか。
スイッチ・メディア・ラボの記録が残る15年以降を振り返ると、基本的にビデオリサーチの世帯視聴率が高い時は、3層の個人視聴率が高い。その意味では高齢層に特化したテレ朝ドラマに似ている。

ただしテレ朝ドラマが極端に3+層(男女65歳以上)頼みなのに対し、日曜劇場はF3-層(女50~64歳)に加え、M-層(男50~64歳)が推進役として大きい。
例えば阿部寛主演『下町ロケット』(15年秋・18年秋)、木村拓哉主演『A LIFE~愛しき人~』(17年冬)、長谷川博己主演『小さな巨人』(17年春)、役所広司主演『陸王』(17年秋)などは、M-層が目立ったケースだ。バブル崩壊後の閉塞状況を背景に、大組織の理不尽に対し、非力な個人や集団が問題を解決すべく奮闘する物語だった。社会・会社・組織と向き合う50代前後の男性に注目されている様子がうかがえる。

若年層と世帯視聴率の関係

日曜劇場には、異なるヒットのパターンもある。
松本潤主演『99.9-刑事専門弁護士-』(16年春・18年冬)、二宮和也主演『ブラックペアン』(18年春)などだ。

こちらも大組織や権威の理不尽に個人や小集団が立ち向かうパターンは似ているが、人気アイドルグループ嵐のメンバーを主人公に据え、2層(男女35~49歳)や1層(男女20~34歳)を多く獲得した点が際立つ。
『99.9』では随所にまぶした小ネタや松潤のギャグ、『ブラックペアン』では普段みられないニノの怪演が光り、1~2層の獲得に成功した。

逆に1~2層を集めながら、世帯視聴率が今一つだったパターンもある。
西島秀俊主演『流星ワゴン』(15年冬)、織田裕二主演『IQ246〜華麗なる事件簿〜』(16年秋)、常盤貴子主演『グッドワイフ』(19年冬)、福山雅治主演『集団左遷(19年春)などだ。
『流星ワゴン』と『IQ246』の場合、3層が伸び悩んだ。『グッドワイフ』は3層がやや高かったが、M2層が落ち込んだのが響いた。そして『集団左遷』も3層は高めだったが、F2とF1が落ち込んだのが影響した。

以上のように日曜劇場は、3-層を中心に中高年によく見られている。
基本はそのボリューム次第だが、1~2層も取り込むことで爆発的な世帯視聴率になることもある。逆に1~2層をとりながら他の層で伸び悩み、世帯が今一つの場合もある。
社会問題と正面から向き合いながら、数字につなげるケースが多々あるのは、“ドラマのTBS”の腕力と言えよう。

振れ幅の大きいTBSドラマ

以上、日曜劇場を中心に語ってきたが、実は同局のドラマは当たり外れがかなり大きい。
日曜劇場の過去20本ほどで振り返ると、15%超が5本、12~15%が6本、10~12%が4本、一桁が6本となる。最高と最低では2倍以上の開きがある。

これを火曜と金曜のドラマも含めると、15%超が5本、12~15%が8本、10~12%が15本、一桁が33本、一桁でも特に7%未満が14本。
二桁を及第点とすると、成否は五分五分だ。そして最高と最低の開きは3倍以上もある。

同局ドラマ担当者によれば、制作現場の雰囲気は「才能のある作り手がたくさんおり、皆ホームランを狙って制作している」という。ところが「実際には、当たりはずれが出るのがドラマというもの」とテレ朝や日テレと比べると大らかな構えだ。

制作者が“ホームランを狙って”“思いっきりバットを振り抜いて”くるTBSのドラマ。
これが散発的に高視聴率を出したり、数字は低くとも話題作が出てくる秘訣なのだろう。

7月クールも同局は、大泉洋主演『ノーサイドゲーム』からスタートする。
堺雅人主演『半沢直樹』(13年夏)、唐沢寿明主演『ルーズヴェルト・ゲーム』(14年春)、阿部寛主演『下町ロケット』(15年秋・18年秋)、役所広司主演『陸王』(17年秋)に続く、池井戸潤原作ドラマだ。

3層により高視聴率を獲るパターンだが、味のある大泉洋が主演するので1~2層も反応するかも知れない。
“思いっきり降りぬくバット”が果たして“ホームラン”をどこまでかっ飛ばすのか、楽しみにしたい。

→ 『世帯視聴率トップを独占 テレ朝ドラマ「勝利の方程式」の落とし穴』

→ 『日テレドラマの秘策 世帯視聴率は最下位でも個人視聴率で圧倒!』

→ 「テレビ平成30年史」で令和のテレビ界を探る! 明解グラフ付きを読む

  • 鈴木祐司

    (すずきゆうじ)メディア・アナリスト。1958年愛知県出身。NHKを経て、2014年より次世代メディア研究所代表。デジタル化が進む中で、メディアがどう変貌するかを取材・分析。著作には「放送十五講」(2011年、共著)、「メディアの将来を探る」(2014年、共著)。

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