『なつぞら』十勝勢総出演の結婚式が神回だった「これだけの理由」

作家・栗山圭介の『朝ドラ』に恋して なつぞら編⑩

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『居酒屋ふじ』『国士舘物語』の著者として知られる作家・栗山圭介が、長年こよなく愛するのが「朝ドラ」だ。毎朝必ず、BSプレミアム・総合テレビを2連続で視聴するほどの大ファンが、物語を熱く振り返る。今回は好評放送中の『なつぞら』第18~19週から。

NHK連続テレビ小説『なつぞら』公式サイトより

福地桃子の覚悟、音尾琢真の勇気、高畑淳子の懐の深さ

先週土曜日の第114話。主題歌がエンディングで流れる最終回のような仕掛けは、そろそろ、“なつロス”に備えておけよというシグナルだったのか。なつ(広瀬すず)と夕見子(福地桃子)の合同結婚式の集合写真をバックに流れる『優しいあの子』が、ひときわせつなく響いた。これまでにも神回はたびたびあったが、第19週『なつよ、開拓者の郷へ』は、十勝メンバー総出演、心に残るシーンに溢れていた。なつが剛男(藤木直人)に伴われ十勝にやってきてから歳月がたち、なつ同様に、十勝の人々も雄大に成長していた。

なつとの結婚報告をするために初めて柴田農場を訪れた坂場(中川大志)は、「仕方なく牛飼いをやっている」という菊介(音尾琢真)に反論する。

「牛飼いをすることで、人に喜びを与えることができるから、牛飼いに誇りを持てるんじゃないですか。どんな仕事でも人に感動を与えることはできます」

坂場に触発された菊介は、多くの酪農家を前に、農協が提案した十勝の酪農家で作る工場建設に関する意見を言った。

「俺らにだって開拓できることはまだまだあるはずだべさ。俺らの搾った牛乳が人に感動を与えるようなものになるなら、こったら嬉しいことはないもな。どうかその工場を作らせてください。俺らに牛飼いの喜びをつくらせてください」

坂場の言葉が、菊介の開拓者魂を動かし、一世一代の台詞を吐かせたのだ。酪農家の心意気、菊介、あっぱれである。

場面は変わり、雪次郎(山田裕貴)のプロポーズ。

「夕見子ちゃん、俺と結婚してくれ。結婚してください。俺はずっとこの日を待ってたんだ。今日みんなに集まってもらったのはそのためだ。夕見子ちゃんらしく、ハッキリ答えてくれ」
「知らんわ、そったらこと」

一度ははぐらかしたものの、「本当に私でいいのかい。私はもし結婚するとしたら、あんたしかいないと思ってた」と夕見子が心を告げた。

「いつから」

夕見子の気持ちを確かめる雪次郎。

「いつの間にかそうなってたわ」

照れながらも嬉しそうに雪次郎の胸を叩く夕見子。

「やった、なっちゃん、やったわ」

真っ先になつに喜びを伝える雪次郎。これが十勝の仲間だ。

以前に駆け落ちをして、自分は雪次郎と結婚する資格がないと言った夕見子に、「あれで見直した」と言ってのけるとよばあちゃん(高畑淳子)も回を重ねるたびに懐の深さに磨きをかけていく。雪次郎のつくった新作菓子を試食した雪之助(安田顕)の演技にもジンとさせられた。

「はじめてお前に先越されたわ」

役者を目指した雪次郎は父を継いで菓子屋に。自由奔放、思ったことに迷わずまっすぐに生きてきた夕見子は、剛男と同じ農協に勤務し、それまで見向きもしなかった酪農家を支えるために身を粉にして働いている。十勝を離れ、夢を追い、そして十勝に戻ってきたふたりには、それぞれ覚悟と開拓者精神が漲っていた。待ってましたとばかりのお似合いカップルに思わず口元が緩んでしまう。

なつ(広瀬すず)と合同結婚式を挙げた夕見子を演じる福地桃子

母と祖父の大きな愛に包まれて…

柴田家では、失職を報告した坂場に喝を入れた泰樹(草刈正雄)に、剛男が意見するまでになっていた。苦節何年? やや丸くはなったものの、一度腰を持ち上げた泰樹をまた座らせたのだから、その成長には目を見張るものがある。農協でのまとめ役と合わせて、逞しくなった剛男も、俄然、輝きだした。

柴田家の縁側。富士子(松嶋菜々子)が、なつが子どもの頃から食べてきた料理の作り方を書いたノートを手渡した。なつに続いて、夕見子も結婚することになり、富士子が溢れる想いを口にした。

「なつがまた、この家に奇跡を運んできてくれたんだわ」
「お母さん、私がここに来たことを奇跡だと思ってるの?」
「なつがこの世に生まれて、私の娘になったことは……そう思わんかったら、あんたの亡くなられたご両親に申し訳ないわ」
「私には、もうこれが普通だわ」

母と娘の、奇跡と普通が入り混じる。想いはどちらも同じだ。

「なつが生まれてくれて、本当によかったわ」

そのノートはきっと、やがて生まれてくる、なつの子どもにも継がれるのだろう。その前に、坂場の主夫業に役立つことになるのだが。

泰樹がせつないときに、いつも牛のそばに行くのは、バレバレな心を誰にも見せたくないからだ。その瞬間も、泰樹は牛舎で、ミルクタンクを拭いていた。そこに、白無垢姿のなつがあらわれた。

「じいちゃん、永い間、お世話になりました」
「ありがとう」
「ありがとうはおかしいべさ。育ててくれたじいちゃんが」
「わしもお前に育ててもろうた。……たくさん……たくさん、夢をもろた。ありがとう……おめでとう、なつ」

溢れる思いを堪えきれず、なつに初めて涙を見せた泰樹。この場面が、ふたりにとって、ひとつの卒業式のように感じてならなかった。そして泰樹は、なつから目を移し、またタンクを拭きはじめた。

感動的な回の放送終了後、画面が高校野球中継に切り替ると、実況が「なつぞらの阪神甲子園球場です」と、爽やかに朝ドラ受けをしていた。

 

前回「山田裕貴、広瀬すず、吉沢亮 3人を繋いだ『開拓』という言葉」を読むならコチラ

  • 栗山圭介

    1962年、岐阜県関市生まれ。国士舘大学体育学部卒。広告制作、イベントプロデュース、フリーマガジン発行などをしながら、2015年に、第1作目となる『居酒屋ふじ』を書き上げた。同作は2017年7月テレビドラマ化。2作目の『国士舘物語』、3作目の『フリーランスぶるーす』も好評発売中。新作『ヒールをぬいでラーメンを』が8月末に発売決定!

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