米国ショウビズ事件簿:絶対に許せないプロデューサー・歌手・監督
アメリカのショービズ界で大活躍しながらも、許しがたい犯罪に手を染めたプロデューサー、シンガー、映画監督たち。
いかに世界から認められた才能や功績でも「秒で帳消し」になってしまうのに……。許されざる者たちが犯した“悪行”と現状を報告する。
case1.大物映画プロデューサーはレイプ魔だった:ハーヴェイ・ワインスタイン
ハリウッドで「#MeToo」ムーブメントが広まる起因となった“セクハラ映画プロデューサー”ことハーヴェイ・ワインスタインが、民事訴訟を起こした30人以上の被害者と和解した。
相次いだセクハラの告発に対し、一貫して「すべて合意の上だった」と無実を訴えていたワインスタインだが、和解が成立したことにより、セクハラ行為の罪を問われることはなくなってしまった。
さらには、2500万ドル(約27億円)にのぼる和解金も本人が払うわけではなく、すでに破産した映画会社ワインスタイン・カンパニーの保険会社が負担するという。
改めて、ワインスタインによる鬼畜の所業を振り返ってみよう。
ワインスタインは、ハリウッドでもっとも影響力と権力のある映画プロデューサーで、映画『恋に落ちたシェイクスピア』や『パルプ・フィクション』をはじめ、クオリティの高い大ヒット作を数多く生み出した。
その一方で、駆け出しの女優に対し次回作での起用をちらつかせたり、断れば業界から干すなどと脅したりして、肉体関係を迫っていた。
手口はいつも同じ。
パーティーや打ち合わせと偽って女性を呼び出し、裸にバスローブで出迎える。
相手が到着すると、マッサージするよう命令する。あるいは、服を脱ぎ、シャワーを浴びるように命令する。
そして相手の出方をうかがいながら、
相手が言いなりになりそうなら、身体の関係さえも持ってしまう。
これらのセクハラを断ると業界から干され、女優生命を絶たれる。
セクハラの対象は女優やモデルに限らず、本人が創設した映画会社の従業員にも及んだ。
ワインスタインにセクハラを受けたと名乗り出た被害者の数は70名以上にものぼる。
権力を盾に人権や尊厳を踏みにじる行為を、本人はあくまでも「合意があった」と言い張っている。
そればかりか、
「わたしは30年も前から女性主体の映画を作ってきた。こういった作品は今の流行りだが、そもそも開拓したのはわたしだ。なのに、わたしの功績は忘れ去られている」
などとインタビューで語っており、大罪を犯した自覚はいまだにないようだ。
とはいえ、20年初頭からは性的暴行の罪で複数の刑事訴訟を控えている。
こちらで有罪になれば、終身刑になる可能性もあるので、経過を見守っていきたい。
case2.怒りをコントロールできない天才シンガー:クリス・ブラウン
一時は「マイケル・ジャクソンの再来」といわれ、歌唱力やダンスを高く評価されたクリス・ブラウンだが、2009年のグラミー賞前夜にDV事件を起こし逮捕されて以降、キャリアは低迷。
このDV事件の概要はこうだ。
当時交際していたリアーナに浮気がバレ、口論の果てに相手の顔面を拳で殴打したクリス。
ボクシングの試合後のように顔面を腫らした痛々しいリアーナの写真が流出し、クリスが手加減なく暴行に及んだ様子が世間に知れ渡った。
この事件でクリスは有罪判決を受けたが、その保護観察期間中に再び暴力事件を起こし逮捕されてしまう。
怒りのコントロールに問題があるのは、誰の目にも明らかだった。
本人もそれを認め、自主的にアンガーマネジメント(怒りの抑制)を目的にリハビリ施設に入ったりもしたが、その効果は長く続かず。
リアーナの次に交際したモデルのカルーシェ・トランも、クリスからDVを受けた女性のひとりだ。
交際中に殴られたこともあるというカルーシェは、クリスに隠し子が判明したのを機に別れを決意。
ところがヨリを戻したいクリスから
「元の関係に戻れないなら殺す」
などと繰り返し脅迫され、接近禁止命令を申請した。
リハビリを受けても一向に改善しないDV癖は、「双極性障害やPTSDが原因だ」とクリスは主張している。
また、「暴力を振るうときは相手にも落ち度があった」とも語っており、「まったく反省していない」と世間を驚かせた。
自分よりも弱い相手だけを選んで殴っている時点で、同情の余地はなし。
このままでは、またDV事件が起きてしまいそうだ。
case3.“ようじょ”にいたずらした映画監督:ウディ・アレン
今をときめく若き演技派イケメン俳優ティモシー・シャラメがセレーナ・ゴメスとエル・ファニングが共演する映画と聞いたら、ぜひ観たい! と思う人も多いことだろう。
アマゾンスタジオ製作の作品で、タイトルは『A Rainy Day in New York(原題)』。
ただし監督はウディ・アレンだ。
この作品は2017年の夏に撮られたが、一時はお蔵入りになりかけた。
というのも、長年くすぶり続けたアレンの小児性愛と性的虐待が、改めて告発されたからだ。
アレンは、かつての事実婚の妻で女優のミア・ファローの養女ディ
この性的虐待については、90年代に一度、
アレンは虐待の疑いを完全否定しており、すべてはミアによるでっちあげだと主張している。
とはいえ、アレンの現在の妻スン・イー・プレヴィンも、ミアの養女。
アレンとの関係が世間に知られたのは21歳のころだが、韓国出身の彼女は実年齢よりもかなり幼く見えた。
現在、アレンの小児性愛と性的虐待はほとんど事実として受け止められている。
『A Rainy Day in New York(原題)』は、2019年にようやくフランスで公開がスタートした。
その後、ギリシャやスペイン、リトアニアなど、世界各国で立て続けに封切られたが、アメリカではいまだに公開されていない。
主演のティモシー・シャラメは撮影翌年の18年に、
「昨今の社会運動を鑑み、出演作を選ぶにあたり、よい役かどうか以外の基準を新たに加えることにしました」
と声明を発表。さらに
「昨夏撮影したウディ・アレンの作品からは、何も得たくありません。この作品の報酬をすべて寄付します」
と宣言し、セクハラ撲滅運動の「Time’s Up」を含む3団体に寄付を行った。
また、共演者のセレーナ・ゴメスも、密かに出演料以上の高額寄付を行っていた。
若い世代の俳優たちがアレン作品と距離を置く意向を示す一方で、スカーレット・ヨハンソンら一部の俳優たちは「アレンの無実を信じ、今後も一緒に仕事していく」と宣言している。
そして、アレンは現在すでに次回作を撮影中だ。
わたしたちはアレンの作品を観るべきなのだろうか。
作品を観ることがアレンの異常な性癖を肯定し、被害者を突き放すことになりはしないだろうか。
- 文:原西香
(はら あきか)海外セレブ情報誌を10年ほど編集・執筆。休刊後、フリーランスライターとして、セレブまわりなどを執筆中