「映像研」声優の伊藤沙莉に絶賛の嵐 でも本人は「声」に自信なし

本人インタビュー&撮り下ろし

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ハスキーボイスにハマる人が続出

「浅草氏に顔も声もそっくり」
「唯一無二のハスキーボイス」
「伊藤沙莉さんの声にハマっています」

NHKで放送中の深夜アニメ『映像研には手を出すな!』(毎週日曜夜0:10-0:35)がインターネット上で大きな話題をよんでいる。3人の女子高生がアニメ制作に打ち込む様を描いたアニメで、大童澄瞳氏による原作を忠実に再現したクオリティの高さが話題だが、もう一つ、主人公・浅草みどりの「声」にも注目が集まっているのだ。

声優を務めるのは女優・伊藤沙莉。9歳でデビューして以来、高い演技力でドラマ・映画に次々と出演。『全裸監督』のへアメイク、朝ドラ『ひよっこ』の米屋の娘さおり、『これは経費で落ちません!』の後輩など、最近の話題作で並々ならぬ存在感を醸し出している。女優だけでなく、声優としても高い評価を受ける伊藤さんに、「映像研」への思いと自身の「ハスキーボイス」について訊いた。

参考にしたのは「寅さん」と「落語」

伊藤:オファーをいただいた時は「私でいいの!?」という驚きが大きかったです。「映像研」はファンの方が多くて、愛されている作品なので、声優の経験がほとんどない私が、しかも主役の一人である「浅草みどり」を務めていいのかなって。それに私、自分の声にあまり自信を持っていないんですよ。

――ハスキーで魅力的な声だと思いますが。

伊藤:高い声が出ないので、恋愛モノで胸がキュンとするようなセリフがあると、「ああぁ…この声が邪魔だな」って。かわいらしくないというか、自分がイメージする恋する女の子の弾んだ感情が私の声だとつかみにくいんです。無理に高い声を出そうとすると、鼻にかかってぶりっ子っぽくなっちゃうし、声が理由で落ち込むことが多かったんですよ。

でもその反面、声が特徴的だからと覚えてくださる人も多くて。この声が活かせる作品に出会えたらいいな、という思いもありました。そして何よりも「映像研」というおもしろい作品に関われる嬉しさが大きくて、がんばってみようと思ったんです。

――アフレコの現場はどうでしたか。

伊藤:プロの声優さんたちの中に入っていくのはすごく不安でしたね。「私が浅草みどりですみません…汗」って心の中で謝りながら、収録テストも恐る恐るやっていました。でも、田村睦心さん(金森さやか役)や松岡美里さん(水崎ツバメ役)をはじめ、スタッフのみなさんが抱いているのは「おもしろい作品にしよう!」という熱い気持ちなんですよね。それがバンバン伝わってきて、「自信がないなんて言ってられない。この作品に一生懸命向き合おう!」と思いました。

とはいっても、声だけで表現することってとても難しい。自分がリアルだと思う感情表現だとぜんぜんうまくいかないんです。大げさに演じるくらいがちょうどよくって、音響監督さんに「もっとやっていい! もっとやっていい!」って言われて「そこまでするー!?」って思うけれど、絵に乗せると浅草氏が活き活きしてくる。

私はお芝居をする時はイメージをふくらませてからいろいろ引いて役を作るんですが、声のお仕事は「足し算」なんだなって。映像じゃないから、表情もどんな風にしてもいいですし、浅草氏が金森氏に首を絞められるシーンでは実際に白目を向いてオーバーに「ぐあーっ!」って言ってみたり。思いっ切り表情に出したほうが声に気持ちが乗るんですよね。

――SNSでも「浅草みどりのイメージにぴったりだ!」と絶賛されています。

伊藤:ありがたいことです。浅草氏って話し方が江戸っ子っぽいので、映画『男はつらいよ』の寅さんは参考にしました(笑)。それと、落語ですね。落語はもともと好きでよく聞いているし、普段の会話でも「〜になっちまった!」とか、ときどきべらんめえ口調を使ったりもします。だから浅草氏の言葉遣いに共感できる部分が多くて、感情移入しやすいというのはありました。

おもしろかったのが効果音で、映像研の3人が空想するシーンは効果音も自分たちの声で表現するんですよ。足音は「タタタタタッ」、機械のモーターが動き出す音だったら「ウィーーーン」って。これは湯浅政明監督のアイデアです。

もともと原作者の大童澄瞳さんのこだわりでもあって、原作にもいろいろな擬音が登場するんです。湯浅監督は普段はすごく穏やかに見守ってくださっているんですが、効果音の時だけは「この機械は重低音のはずだから、もっと低い声を出せますか」とか、より細かく指導してくださいました。

「映像研」3人娘はプライベートでも仲良し

『映像研には手を出すな!』は電撃3人娘が高校を舞台にアニメを制作する物語だ。©2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会

――映像研といえば主人公3人のテンポのいい掛け合いも見どころですよね。

伊藤:田村さんと松岡さんにはすごく支えてもらいました。田村さんは年齢も上で声優として大先輩ですが、すごく気を遣ってくださる方です。映像研って台本のページをまたぐような長いセリフがけっこうあるんですね。私がページをめくりながら話すことがうまくできなくてモヤモヤしていると、「セリフの最後に次のページのセリフを続けて書いておくと、落ち着いてめくることができるかも」ってさり気なくアドバイスをしてくれたりする。

松岡さんはレギュラーTVアニメシリーズが初出演だって謙遜されているんですけど、そんなことを感じさせないくらい勉強熱心です。「このシーンはこういう背景があるからこんな気持ちで話したほうがいいですよね」とか、その読み込みの深さにハッと気づかされることが何度もありました。

一緒にいるのが楽しくてお仕事以外でもちょくちょくごはんを食べに行きましたし、有楽町マルイの『映像研には手を出すな!「最強の世界展」』(2月11日まで)も三人で観にいってきました。

――とても仲がいいんですね。

伊藤:お二人のこと、本当に大好き。普段は一緒に収録するんですが、一日だけお仕事の関係で別々に収録したことがあったんです。そうしたら、後日お二人から「すごく寂しかった」と言われて……。「わたしもだよおー」ってなりました。お二人の声を聞きながら一人で撮っていたら、喪失感がハンパなかったし、常に同じ気持ちで同じ空間にいられる仲間なんだなって強く感じました。

――まさに映像研の三人と同じ関係! 収録を振りかえって、好きなシーンはありますか。

伊藤:選べないくらいたくさんあるんですけど、浅草氏たちが通う芝浜高校は三人以外にも個性的なキャラが多くて、彼らとの交流を通じて映像研がより活性化していくのもこの作品の魅力です。ロボット研究会(ロボ研)の小野なんかは最高ですよ! 声も名字が同じ小野(友樹)さんが務めていらっしゃるんですけど、小野がロボットへの熱い気持ちを歌うシーンがあるんですね。

その歌、台本に歌詞だけが書いてあってメロディはついてなかったんです。だけど、小野さんは自分でアニメの主題歌みたいな曲を創り上げてきて歌い上げた。それがすっごくおもしろくて、「くぅーっ、負けた! この回はもうロボ研に譲るよ!」って思った(笑)。

――伊藤さんの映像研への愛もバシバシ伝わってきます。今回の経験を通して、ご自身の声に対する気持ちに変化はありましたか。

伊藤:変わりましたね。作品やキャラクターにもよりますが、今まではドラマとかでもあまり「声を張らない話し方」をしていました。でも、ハプニングが起こるシーンだからもっと声を出してみようとか、声からのアプローチを考えるようになった。大きな声を出すことに照れや躊躇がなくなったんです。

ただ、ちょうど同時期にドラマ『ペンション・恋は桃色』(フジテレビ)の撮影もしていて、うっかり大きな声を出し過ぎてしまって「もうちょっと抑えて」と言われてしまいましたけどね(笑)。

――『この世界の片隅に』や『全裸監督』、『生理ちゃん』など幅広い作品で様々な役を演じていますが、これから挑戦したい役はありますか。

伊藤:ミステリー系の探偵とか演じてみたい! なぜか、頭がいい役ってこないんです。『THE LAST COP/ラストコップ』(日本テレビ)というドラマで鑑識官役をやったのですが、賢くてクールな役かと思いきや、主人公に恋ばかりしていて鑑識の仕事はほとんどしていなかったし(笑)。伊坂幸太郎さんの小説が大好きなので、伏線が張り巡らされていて最後にはどんでん返しがあるような作品で推理を披露してみたいです。

――謎めいた雰囲気の伊藤さんも見てみたいです。でも、そういう点では浅草みどりは抜けている部分はありつつも、頭の回転は速い。

伊藤:そうなんですよ。浅草氏はあんなに小さな体なのにたくさんの情報を詰め込んでいて、豊富な知識と想像力で壮大な世界観を創り上げていく。彼女のすばらしい才能もやりがいを感じた大きな理由ですね。

――今後は声優としての活躍も期待しています。

伊藤:まだ一作に出演しただけなので声優なんて恐れ多いです。でも、もしまたお話をいただけたらチャレンジしたい。映像研の続編があったら絶対にやりたいですね。次もあると信じています!

伊藤沙莉(いとう・さいり)/9歳のときに、ドラマ『14ヶ月~妻が子供に還っていく~』で子役としてデビュー。その後、NHK連続テレビ小説『ひよっこ』、ドラマ『女王の教室』、『GTO』、『この世界の片隅に』、『その「おこだわり」、私にもくれよ!!』、映画『鈴木先生』、『獣道』などに出演。Netflixオリジナル作品『全裸監督』のヘアメイク役など、実力派女優として注目を集める。兄はお笑い芸人「オズワルド」の伊藤俊介。

伊藤沙莉フォトギャラリー

アニメ「映像研」ギャラリー

『映像研に手を出すな!』メインビジュアル ©2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会
浅草みどり(声:伊藤沙莉) ©2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会
水崎ツバメ(声:松岡美里) ©2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会
金森さやか(声:田村睦心) ©2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会
劇中では、浅草らによって様々なアニメの世界が描かれる ©2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会
浅草が「監督」、水崎が「アニメーター」、金森が「プロデューサー」の役割だ ©2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会
  • 取材・文中川明紀撮影池田博美

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