「長すぎ」で「短すぎ」…?日本のドラマがアジアで見られないワケ | FRIDAYデジタル

「長すぎ」で「短すぎ」…?日本のドラマがアジアで見られないワケ

『半沢直樹』『アンナチュラル』は人気なものの……悩ましい「テンポ」と「話数」の問題

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「日本の俳優の感情表現は分かりにくい」と感じるアジアの視聴者は少なくないという。そんななか、ドラマ『半沢直樹』は「分かりやすい」と中国でも話題を呼んだ (写真は『FRIDAY』2020年7月31日・8月7日号より)
「日本の俳優の感情表現は分かりにくい」と感じるアジアの視聴者は少なくないという。そんななか、ドラマ『半沢直樹』は「分かりやすい」と中国でも話題を呼んだ (写真は『FRIDAY』2020年7月31日・8月7日号より)

日本のドラマが、中国や台湾をはじめとするアジアで、内容の良し悪しに関わらず「見られない」という事態が起きているのをご存知だろうか?

実は、中国などで近年ドラマの形式が大きく変わりつつあることもあり、日本のドラマは放送しにくくなっているというのだ。それは「日本のドラマ、帯に短し襷に長し問題」とでも言えるかもしれない。

台湾や中国大陸でドラマ制作に長年携わっているAさんはこう話す。

「ここ数年、スマホを使ってネットで見るドラマの制作が中国で流行しています。スマホに合わせ映像も縦型で、1話の長さはだいたい10分以内。ティーンエイジャーなど若い人中心に見られていて、ドラマのテンポが昔に比べて速くなっています。こういうドラマを見ている視聴者にとって日本のドラマはテンポが遅すぎて、退屈だということであまり見られなくなっています」

10分以内という非常に短いドラマが中国を中心に流行している理由について、ドラマ事情に詳しい中国人の女性Bさんは「今の中国では学生たちは常に勉強や習い事、スポーツなどあらゆる面で激しい競争に晒されていて、長いドラマを見ている暇がない。とはいえ学校で『共通の話題』についていかないといじめられる。そういう若年層のニーズに、スマホ向けの短いドラマがピッタリ合ったのではないか」と分析する。

彼ら若年層は、「短い動画にしか興味を示さない。最近では『半沢直樹』が『分かりやすくて面白い』と彼らの間で話題になったが、それでも全部を見るというよりは『面白いシーンだけが切り取られた動画』を見ている」のだという。このように、中国などの若者にとって日本のドラマは「あまりに長い」ので見られなくなってきている傾向があるのだ。

その反面、日本のドラマは「あまりに短い」ので放送されないという問題もあるという。

Aさん「日本のドラマをアジアで売り込もうとすると、『話数』の問題が必ずネックになってきます。日本のドラマは放送時間も45分くらいと短く、話数も10話を少し超えるくらい。アジアでは通常ドラマは放送時間は60分以上ありますし、話数も短くても20話くらいはあります。放送局側に『これでは短くてスポンサーがつかないし、放送できない』と言われてしまい、内容以前の問題として相手にしてもらえません」

Bさん「90年代くらいから、中国のドラマはとても長いです。三国演義を扱った90年代の歴史ドラマには84話というものもある。現代劇でも、今年人気の恋愛ドラマは43話。最近人気のファンタジーラブロマンス時代劇は58話。清朝を題材にしたドラマで70話のものもありました。中国人のオトナは壮大な話が好きなので、日本のドラマは短すぎてダメなのです」

そして、日本の若い俳優はあまり中国では人気がないという。最近比較的人気があったドラマは『アンナチュラル』くらいで「木村拓哉・石原さとみ・新垣結衣・長澤まさみの中の誰かが出ていないと、日本のドラマは流行りません」とBさんは話す。

中華圏の若い世代にとっては「長すぎ」て、オトナにとっては「短すぎる」という悩ましい問題を早く解決して、若い日本俳優たちのアジアでの存在感を高めていくことが、日本のドラマが「世界コンテンツ」となるためには急務なのかもしれない。

アジアでも人気の石原さとみ。結婚発表は中国や韓国でも大きな話題となった (写真は『FRIDAY』2020年10月30日・11月6日号より)
アジアでも人気の石原さとみ。結婚発表は中国や韓国でも大きな話題となった (写真は『FRIDAY』2020年10月30日・11月6日号より)
  • 取材・文鎮目博道/テレビプロデューサー・ライター

    92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなどを始め海外取材を多く手がける。また、ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、放送番組のみならず、多メディアで活動。上智大学文学部新聞学科非常勤講師。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルをライフワークとして研究、記事を執筆している。

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