安いギャラでもなぜタレントは納得…?「NHK価格」の謎 | FRIDAYデジタル

安いギャラでもなぜタレントは納得…?「NHK価格」の謎

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東京・渋谷にあるNHK放送センター(2020年1月15日撮影) 写真:共同

テレビ業界は、独特の慣習が多くてなかなか一般常識では理解しがたいことが多い。特に出演者の“おカネ”にまつわることは、テレビ局と芸能事務所の関係の中で不文律的に積み重ねられてきた面も多く、謎が多いのではないだろうか。そんな「謎のオキテ」のひとつ「NHK価格」を今回は掘り下げてみたい。

「NHK価格」とはなんなのか?

実は同じタレントでも、民放に出演するときとNHKに出演するときとでは、大きく出演料、つまりギャラの水準が違うのである。これは業界内では「公然の秘密」になっているが、一般にはあまり知られていないだろう。そこで今回は、制作会社と芸能事務所の関係者にその実態を証言してもらうことにした。

まずお話を聞いたのは、制作会社のプロデューサー・Aさん。「NHK価格」の実態について詳しく教えてくれた。

Aさん「公には存在しないことになっている『価格表』が実はNHK内部にはあるんです。外部には見せてはいけないということなのですが、だいたいプロデューサーは内緒で制作会社の人間には見せていますので、私たちにはお馴染みです。

その『価格表』に書かれている金額は、ちょっと目を疑うようなものです。相場は民放の10分の1程度だったりする。たとえば民放なら出演料一本30万円とかレベルの結構な人気者でも、1〜2万円の『これはお車代か?』と思うような、衝撃の激安価格になることもあるのです」

なぜそんなことになってしまうのか?その理由についてAさんはこう解説する。

「聞いたところによると、元々は『公共放送だから、みなさまの受信料を無駄にできない』という理由で、ギャラが安く設定されているらしいんですね。そしてどうやら独自の『NHKへの貢献度』を元にギャラが設定されているみたいです。

だから、例えば今年ブレイクして引っ張りだこのお笑い芸人!でも、ギャラは最低ランクだったりして、逆に誰も知らないようなシブい伝統芸能の人や演歌歌手なんかが比較的高くギャラが設定されていたりします。……まあ、高いって言ってもビックリするほど安いんですけどね」

そして「NHK価格」には、実は「裏」があるのだとAさんは指摘する。

「NHKの番組には、NHK自体が制作するものと、我々制作会社が外注で作るものとがあるのですが、『NHK価格』がそのまま適用されるのはNHK自ら制作するものだけです。

制作会社が作る番組には、タレントさんはそんな安いギャラでは出演してくれません。とはいえNHKからは『NHK価格分』しかギャラは支払われないので、暗黙の了解で我々制作会社が制作費の中から上乗せしてギャラを支払うことになっています。

その相場はだいたい民放のギャラの6〜7割くらいでしょうか。『この番組はNHKさんなので、このくらいで勘弁してください』と、我々が頭を下げて事務所にお願いするのですが、それもなんとなく変な話ですよね」

それにしても民放より安いギャラでなぜタレントは出演を了承するのだろうか?

芸能事務所社長のBさんはこう話す。

「ギャラが民放より安いのは確かですが、やはり『NHKの番組に出るのは名誉』といった風潮はありますね! 事務所としては『大河や朝ドラに出ると箔が付く』みたいな。紅白もしかりですが。

やはり、ドラマとかは朝ドラや大河に出てると民放も使いやすくなるのかなと思いますし、営業するマネージャーも『朝ドラや大河に出ました!』という感じで民放に営業する人も多い気がしますね。

あと、NHKは海外でも見られたりする付加価値もあるかなと思います。私は『ギャラ+付加価値=プライス』みたいに考えて、安いギャラでもタレントの出演をOKしています」

そして、前述のAさんの話にも出た「NHKへの貢献度を重視する姿勢」のようなものは、よく感じることがあるとBさんもいう。

「営業をかけても、NHKに現在進行中で出演していたりしないと、使ってもらえなかったりするという話はよくありますね。自分もむかし営業に行ったときに『いまうちの他の番組に出られていますか?』と確認されたことがあります。あと、これはあくまでウワサですが、NHKの受信料を払ってないと出られないっていう話を聞いたことがあります(笑)」

そして、制作会社のプロデューサー・Aさんはそこにこんな矛盾を感じるという。

「公共放送だから受信料を無駄にしない、という理屈はよくわかります。でもそれなら、NHKの職員が制作会社や民放の職員より高待遇だと言われるほど、恵まれた環境で働いているのはおかしいのではないでしょうか?制作費も、最近は民放よりずっと高いんです。いったいどういう基準でお金を使っているのか、その辺が理解しがたい感じがするのは確かです」

公共放送ならではの「独自の世界」を築くこと自体は悪くはない。しかし、受信料を使って番組を制作しているのだから、NHKが「謎に包まれた大陸」と化してしまってはならないことは、関係者の肝に命じてほしいところだ。

  • 取材・文鎮目博道/テレビプロデューサー・ライター

    92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなどを始め海外取材を多く手がける。また、ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、放送番組のみならず、多メディアで活動。上智大学文学部新聞学科非常勤講師。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルをライフワークとして研究、記事を執筆している。

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