現役テレビマン30人が選んだ「本当にすごいと思うテレビ局」 | FRIDAYデジタル

現役テレビマン30人が選んだ「本当にすごいと思うテレビ局」

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左から、東京・NHK放送センター、TBS本社、フジテレビ本社 写真:共同通信(NHK、フジテレビ)、日刊工業新聞/共同通信イメージズ(TBS)
左から、東京・NHK放送センター、TBS本社、フジテレビ本社 写真:共同通信(NHK、フジテレビ)、日刊工業新聞/共同通信イメージズ(TBS)

「どこのテレビ局がスゴイ」とか、「どこのテレビ局がダメだ」といった内容の記事を、みなさんもよく目にすることがあると思う。しかし存外、テレビ業界関係者自身がテレビ局のことをどのように評価しているか、という事については知られていないのではないか。

筆者もおよそ30年間にわたってテレビ業界に身を置いているが、そうした話をちゃんと調査したものを見聞きしたことはない。そこで今回、筆者の周辺にいる現役のテレビマンに「スゴイと思うテレビ局とその理由」「ダメだと思うテレビ局とその理由」についてアンケートを行い、31名から回答を得ることができた。

さっそくその結果をご紹介する事にしよう。なお、回答してくれた31名の内訳は、テレビ局員7名(うちプロデューサー3名)、制作会社やフリーのディレクター7名、制作会社のプロデューサー6名、フリーアナウンサー・ナレーター5名、エンジニア4名、放送作家2名となっている。

スゴイと思うテレビ局

1位 NHK  10票
2位 日本テレビ 5票
3位 テレビ東京 4票

以下、東海テレビ(2票)、Eテレ、TBS、テレビ朝日、フジテレビ、札幌テレビ、毎日放送、北海道テレビ、昔のフジテレビ、昔のテレビ朝日、レッドブルチャンネル(各1票)

1位 NHKは「番組予算の豊富さ」と「番組のクオリティ」

スゴイと思うテレビ局はNHKが10票と、圧倒的に他を引き離して1位となった。

その理由について抜粋すると、「理屈さえ通っていれば今、いちばん自由に、お金もかけて番組を作れる」「これだけ時間と金かけてできるのはNHKだけ」など番組制作予算が豊富な点と、「創るものはクリエイティブだし、ある意味チャレンジャー」「こんなマニアックなモノまで、という感じで幅広く楽しいコンテンツを作っている」など番組のクオリティの高さや、自由で斬新な番組が多い点が評価を集めた。

また、「女性比率が高い(管理職も)。女性の出入り業者にとってこれほど働きやすい現場はない」「今回のコロナウイルスによるパンデミック発生で、報道姿勢そのものに歴然とした力の差を見せつけられた」などの意見もあった。

2位 日本テレビは「しっかりしている」「仕事がしやすい」

5票を集めて2位となった日本テレビ

「バラエティから報道まで幅広く、視聴者の見たい希望に合致している」「マーケティングがしっかりしていて、合理的な番組制作をしている」「会社の利益へのビジョンに対して、コンテンツ制作側がしっかり協力」など、番組制作がしっかりしたビジョンに基づいていて合理的である点と、

「ちゃんとしている。仕事がしやすい」「コンプライアンスチェックがスゴイ! チェックは厳しいが、それを制作に裏どりさせないのは助かります」などと、制作会社への仕事の発注もしっかりとしていて仕事がしやすい点などが評価を集めた。

3位 テレビ東京は「ブレない独自路線と話題性」

日本テレビと僅差の4票で3位になったテレビ東京

「限られた予算のなか企画で勝負し、話題を生み出す力がある」「(業績が振るわず)『振り向けばテレビ東京』と言われていたのに、躍進ぶりは素晴らしい」「あまりにブレなさ過ぎ」など、ブレない独自路線で話題性を集めている点が評価された。

また、「局員がイバってない率がダントツに高いのがテレ東。ほんとうに風通しがよいです」など、局員の制作会社に対しての姿勢が「上から」ではない点を評価する声もあった。

ダメだと思うテレビ局

1位 フジテレビ 12票
2位 NHK 9票
3位 テレビ朝日 4票
3位 TBS 4票

以下、テレビ局全般、民放キー局(各1票)

1位 フジテレビは「番組の質低下」と「局員の態度」

「ダメだと思うテレビ局」に関しては、スゴイと思うテレビ局よりもテレビマンたちの意見はほぼ一致を見た感じがある。その中でもズバ抜けて票を集めたのがフジテレビだ。その低評価ポイントは大きく分けて2つ。

「オリジナルを感じさせない企画、置きにいったドラマが増えた印象。見え隠れする大人の事情。楽しくなければテレビじゃないのです」「番組編成の迷走状態が続いているように思える」「お金のかけ方がちがうんじゃないかと思う番組が多い」「寂しいくらい観たいものが少なくなった」などと番組の質の低下を嘆く手厳しい声が多かった。

また、「バラエティの会議などは今も声の大きいジャイアンがいる」「局員が横柄な感じでモノを言ってくる傾向があると思う」「とにかく会議が長い。ゴマをする作家を集め、総合演出に任せっきり。局員は何も背負わない」「新入社員の入社式に親が参加して親同士が挨拶するということが普通だと考えている感覚がおかしい」などと、局員の姿勢や社風に疑問を呈する声も数多い。

2位 NHKは「仕事のしにくさ」と「報道姿勢への疑問」

スゴイ局1位であったNHKだが、ダメな局でも9票を集め2位となった。ちなみにスゴイ局にもダメな局にもNHKの名前を挙げた人が4名いたのが興味深い。

最も不評だったのは「企画書通りの内容でないとなかなかOKが出ない。専門家のコメントも、打ち合わせと同じじゃないといけない」「書類の提出、VTRの直しなど要求が細かすぎて、制作者を疲弊させる」「独自ルールが多すぎてめんどくさい、エリート意識が高い」など、局の制作体制や社風の悪さ。

また、「NHKが真面目に政治権力のチェックに乗り出せば、相当面白いと思うのにそれができていない」「国会の報道の仕方などあまりに政府にびびりすぎでは」など報道姿勢に対する不満や、「数字狙いが見え見えな番組が増えて”大人な”番組が減るばかり」「子供向け番組などでむやみに大物タレント起用、有名アーティストに楽曲制作依頼をしている印象」「全く浮世離れして、世間の流行に疎い」など番組制作方針への疑義の声も多く聞かれた。

3位 テレビ朝日は「冒険しない」「方針がおかしい」

3位は4票でテレビ朝日とT B Sの2局。まずはテレビ朝日だが……

「他局よりも先駆けようとしていながら、同じタレントしか使えない」「現場での判断は横を気にすることが常」などと、他局の動向を気にしすぎで冒険しない社風を指摘する声と「テレビ朝日だけは旧来の世帯視聴率に固執し、世の動きを完全に見失っていた」「報道の凋落っぷりがひどい」など経営方針への疑問を呈する声が多かった。

そしてTBSに関しては、圧倒的に社風と局員の態度に対する不満の声が多かった。

「局員がいつも外部を小ばかにしているというか、見下している感が否めない。いまでいうパワハラに近いことをしていた局員もたくさん知っている」「 制作会社や関連会社に仕事を与えてやってるという感じが垣間見える」「昔も今も、TBSの方に会うと会社の愚痴や不満の話がかなりシリアスで、風通しが悪いのかなと思っています」

以上、飾らぬありのままのテレビマンたちの声をご紹介した。

業界外部の方には、テレビをご覧になる時に何らかの参考になればと思うし、各放送局関係の方には、「自分の局は業界内でこんなふうに捉えられているんだ」と認識していただき、今後のお仕事に役立てていただけたら嬉しい限りである。

  • 取材・文鎮目博道/テレビプロデューサー・ライター

    92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなどを始め海外取材を多く手がける。また、ABEMAのサービス立ち上げに参画「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、放送番組のみならず、多メディアで活動。上智大学文学部新聞学科非常勤講師。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルをライフワークとして研究、記事を執筆している。近著に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)

  • 写真写真:共同通信(NHK、フジテレビ)、日刊工業新聞/共同通信イメージズ(TBS)

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