女子アナブームの影で「男性アナ氷河期」が到来した3つの理由 | FRIDAYデジタル

女子アナブームの影で「男性アナ氷河期」が到来した3つの理由

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情報番組『あさチャン!』(TBS)の後番組でメインキャスターを務めることが発表された安住紳一郎アナウンサー。人気・実力ともに兼ね備えた同局の看板アナウンサーで、現在は局長待遇だ 写真:時事(2003年撮影)
情報番組『あさチャン!』(TBS)の後番組でメインキャスターを務めることが発表された安住紳一郎アナウンサー。人気・実力ともに兼ね備えた同局の看板アナウンサーで、現在は局長待遇だ 写真:時事(2003年撮影)

「好きな男性アナウンサーは誰ですか」と聞いたら、あなたは誰の名前を答えるだろうか? 恐らくTBSの安住紳一郎アナや、元日テレの羽鳥慎一アナ、日テレの桝太一アナなどの名前を挙げる方が多いのではないだろうか。安住アナは47歳、桝アナは39歳、羽鳥アナは50歳と、いずれもベテランアナウンサーである。

では、これより若い男性アナの名前は? というと、あまり思い浮かばないのではないだろうか。そう、実は今男性アナは、“人気アナ”になるどころか活躍することもなかなかできない、「氷河期」ともいえる厳しい状況に置かれているのだ。

かつては「女性アナウンサーは年齢が上がると他の部署に異動させられるが、男性アナはアナウンサーのまま定年を迎える人が多い」と業界内では言われていたが、今では男性アナの多くが、比較的若いうちに報道記者や広報セクション、秘書などに転向するケースも増えている。

いわゆる“女子アナ”たちが脚光を浴び続けるその影で、「絶滅の危機に瀕している」と言っても過言ではない男性アナ。そこには知られざる3つの大きな理由がある。

氷河期到来の理由その1:スポーツ番組が極端に減少

私もアナウンススクールで講師をした経験があるが、アナウンサーになりたい男性の「最大勢力」は「スポーツアナウンサー志望者」であると言って良いと思う。“女子アナ”志望者が華やかな舞台に立つのを目指す人が多いのとは対照的に、男性のアナウンサー志望者は自分の「立て板に水のようなトーク力」で、視聴者を魅了したいと思う人が多いのだ。

そして、そんな「トーク力を誇りたい」アナウンサーたちにとって、永遠の憧れなのが「スポーツ実況の達人」と呼ばれることである。かつてF1の実況で名人芸と呼ばれた古舘伊知郎アナのような姿、あるいは「野球やオリンピックの名実況」に男の子たちは憧れるのだ。

しかし、残念ながら今やスポーツ番組の数は驚くほど減ってしまった。かつて巨人戦がキラーコンテンツと呼ばれ、ゴールデンタイムに野球が多く編成されていたのはもはや遠い昔。野球にしろサッカーにしろ、スポーツの試合は専門の有料チャンネルで見るのが当たり前になってしまった現在では、地上波でのスポーツアナたちの見せ場はほんのわずかになってしまった。

さらにニュース番組でもスポーツコーナーがあるのは夜のニュースくらいで、よほど話題にならない限り朝から夕方までの番組ではスポーツの話題を取り上げる機会はほとんどない。そしてスポーツニュース専門の番組は、土日の深夜が主戦場という状況だ。スポーツ実況に憧れる男性アナにとっては、今の状況はかなりの逆風と言えるだろう。

氷河期到来の理由その2:ニュース番組のメインMCが軒並み女性に

「立て板に水のようなトーク力を誇りたい」男性アナたちが、その実力を「見せつけられる」フィールドとして、スポーツアナと並び立つのがニュースキャスターだ。「報道アナとして現場リポートで実績を積み、いつかはメインMCとしてニュース番組を仕切りたい」と思う男性アナたちはとても多い。「いつかは俺も久米宏」と夢見るものなのだ。

しかし現在、ニュース番組のメインMCのほとんどは女性が務めている。例えば民放各局の平日夜のメインニュース番組の「顔」を思い出してほしい。日本テレビは有働由美子アナ。TBSは小川彩佳アナ。フジテレビは三田友梨佳アナ。テレビ朝日は徳永有美アナ。テレビ東京は大江麻理子アナと佐々木明子アナ。ジェンダー平等の意識が高まり女性の視点が大切にされる現在、なんと全局が女性アナで占められているのだ。

メインニュースに限らず、ニュース・ワイドショーに関しても、メインMCは「男性タレントか女性アナウンサー」という流れがいつの間にか出来上がってしまった。これでは「いつかは久米宏」と夢見る男性報道アナたちのやる気が削がれてしまっても無理もないだろう。

氷河期到来の理由その3:バラエティは「女子アナしかお呼びでない」

そしてバラエティ番組の状況も男性アナにとっては「逆風」であると言える。各局とも製作費削減の嵐の中、言ってみれば“女子アナ”を「お金がかからずバラエティ番組に出演させられるサブスクタレント」のように捉え、元アイドルなどの「研修しないで使える即戦力」を“女子アナ”として採用するのが最近の傾向となっている。

そして日本に「冠番組を持っている女性タレント」は、和田アキ子さんなど一部の超ベテランを除いてほとんど皆無だ。ということは、バラエティ番組のメインのほとんどは男性タレントだということで、その「サブ」をやらせるには、男女のバランスなどを考えると“女子アナ”の方が良いということになる……というか、安住アナのような「よほどの例外」を除けば、男性アナは「お呼びでない」という状況にあると言えるのだ。

「バラエティに起用されないから、有名になれない。有名じゃないから、バラエティに起用されない」という「バラエティデフレスパイラル」とでもいうべき状況になってしまっていると言って良いだろう。

このように、テレビ番組の3大ジャンルである「スポーツ・ニュース・バラエティ」のいずれの世界においても、男性アナウンサーたちは厳しい状況に置かれているのだ。

「メディア業界でも女性の活躍を」ということで、メディアの女性たちに注目が集まることが多い現在だが、実は静かに男性アナウンサーたちが氷河期を迎えている現状をお分かりいただけただろうか? ぜひなんとか若い男性アナウンサーたちに活躍の機会を与えてあげてほしい。

そうしないと「安住さんたちアラフィフ・アラフォー男性アナ世代の後を継ぐ人気男性アナ」が育たない恐れがあると私は危惧している。

  • 鎮目博道/テレビプロデューサー・ライター

    92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなどを始め海外取材を多く手がける。また、ABEMAのサービス立ち上げに参画「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、放送番組のみならず、多メディアで活動。上智大学文学部新聞学科非常勤講師。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルをライフワークとして研究、記事を執筆している。近著に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)

  • 写真時事通信

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