もうスター女子アナは現れない?「地味アナの時代」が到来した背景 | FRIDAYデジタル

もうスター女子アナは現れない?「地味アナの時代」が到来した背景

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残念ながらもう2度と「カトパン」は現れない

4月末にフジテレビを退社することになった久慈暁子アナ。同じフジテレビの久代萌美元アナも3月いっぱいで退社するという

私たちはつい「ネクストカトパンは誰なんだろう?」と考えてしまいがちだ。最近、女子アナの退社が相次いでいるが、そんなニュースを聞くたびに「次世代のスター女子アナは一体誰なのか?」と期待してしまうのである。

しかし私は「もうスター女子アナの時代は終わった」と考えている。残念ながらもう、「ネクストカトパン」が現れることは2度とないと思うのだ。

スター女子アナの時代が終わり、始まったのは「地味アナの時代」なのだと予想する。どういうことなのか説明しよう。

あなたが今、「スター女子アナ」と聞いて思い浮かべる現役の女子アナは誰だろう? 局に所属する「アナウンサー」として名前が挙がるのは、東京キー局でせいぜい日本テレビの水卜麻美アナとテレビ朝日の弘中綾香アナ、フジテレビの三田友梨佳アナくらいではないだろうか。

あとは多分、局に所属していない、つまり厳密な意味では「タレントさん」の名前ではなかろうか。例えば新井恵理那さん。彼女はセント・フォース所属のタレントだ。

今後、こうした「事務所に所属するタレント」にスター性を求めた方が、誰にとっても都合がいい。局にとっても、本人にとっても、だ。

局が「スター女子アナ」を育てない理由

まず、なぜ局にとってスター女子アナよりタレントの方が都合が良いか。「働き方改革」というキーワードを軸に見ていくと、理解がしやすいと思う。

かつては放送局にとってスター女子アナは、とてもありがたい存在だった。自局だけに独占出演してくれて、かつギャラはタレントを起用するより安い。しかも結構朝から晩までガンガン働いてもらえる、「視聴率が見込めるお得なサブスクタレント」だった。

しかし「働き方改革」で大きく事情は変わった。

十分な休みを与えなければいけないし、これまでのように長時間働かせるわけにはいかない。朝や深夜などの帯番組にレギュラー出演させると、激務のため体調やメンタルを壊してしまう者も出てくるのだが、そうなれば「ブラック企業だ」と非難を浴びる可能性は高い。また、スキャンダルを起こすリスクだってある。

せっかく局をあげてスター女子アナに育成しても、ガンガン働かせるのは難しいどころか、企業の危機管理上、「いろいろと問題視されかねない因子を抱えた難しい案件」として、スター女子アナはリスキーな存在になってきたのである。

しかも、毎年何人もの女子アナを採用しても、スター女子アナに育ってくれるのはそのうちのほんの一握りだ。採用したはいいがアナウンサーとして適性があまりなかった、という場合もあるし、才能がありそうでも育つ前に辞めてしまう場合もある。費用対効果は高くないし、当たり外れが大きい賭けでもある。

他方、新井恵理那さんのような外部タレントの場合はどうか。

これは多少出演料は高くついたとしても、体調やメンタルの管理は「事務所の責任」となり、原則放送局が気にする必要はない。仮にガンガン働いてもらって問題が起きたとしても、それは「先方の意向と問題」ということであり、リスク管理や新卒採用にかかる費用を考えたら、多少ギャラはかかってもむしろコスパは良いと言えるのかもしれない。

女子アナ本人も「スター」になる旨味がない

そして、女子アナ本人にも「スター女子アナ」になるメリットはほとんどない。

これも理由は簡単だ。よく考えてみてほしい。女子アナはテレビ局という有名企業に勤めるサラリーマンだ。サラリーマンである以上、「スター女子アナとして朝から晩まで身を粉にして働いても、フツーの女子アナとしてボチボチ働いたとしても」お給料はほとんど変わらないのだ。

いったん人気が出てしまえば、制作サイドからガンガン無茶なオファーがくる。それに応えてハードワークすれば、プライベートな時間は一切なくなり、学生時代の友達との楽しい時間などは夢のまた夢になる。

疲れが積もりに積もって、体調やメンタルを壊す危険性も高い。しかも、芸能人と同じレベルでマスコミにも注目されるので、常日頃から気を抜くことも許されない。ほぼ同じ給料でなぜわざわざイバラの道をいかなければならないのか?と考える女子アナが多勢を占めても無理はない。

それほど人気も出ない代わりに、ワークライフバランスがとても良いのが「地味アナ」だ。

堅実に仕事をこなしていけば、一般企業と比べて破格に良い給料がもらえる。自由時間も自由恋愛もある。そして着実にアナウンススキルが上がり、職業人としての満足度も高い。有名になって重い「スター」の看板を背負う必然性は、何ひとつないのだ。

「それでも人気者になって、ガンガン活躍したい」と思うような人は、局ではなくてセント・フォースのような事務所に入った方が稼げるし、各局を股にかけて活躍することができる。

しかもマネージャーがついてくれて、何くれとなく世話を焼いてくれるし危機管理もきっちりしてくれる。「なぜわざわざ局に?」と考えると、あまり旨味はないのである。

到来した「地味アナ」の時代

もはや、「スター性」をアナウンサーに無理して求めるのは、放送局も女子アナ自身も「割に合わない」ことになってしまったのだ。

女子アナは地味でいい。テレビ局にもインターネットへの動画配信業務などが増えた現在、定時ニュースやナレーション読みなどの仕事をきっちりこなしてくれる「アナウンスの職人としての」アナウンサーがいれば良くて、それは男性でも女性でも構わないし、性別にこだわって採用することがそもそも時代に合わなくなってきているとも言える。

そうして採用した「地味アナ」たちの中から、たまに「偶然人気者になったアナウンサーがいればそれで十分儲けもの」という捉え方になったのではないか。

かくして、いまや「地味アナの時代」が到来した。それは言葉を変えれば、「タレント性はタレントに求め、会社員であるアナウンサーは会社員として地道に働く」という、当たり前で本来あるべき姿に戻ったのだとも言える。

バブル時代の到来が生んだ「スター女子アナ」という昭和の遺物が、令和の今「持続可能な」堅実な在り方に戻ったのだ。そう捉えれば、それは別に嘆くべきことでは全くない。

  • 鎮目博道/テレビプロデューサー・ライター

    92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなどを始め海外取材を多く手がける。また、ABEMAのサービス立ち上げに参画「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、放送番組のみならず、多メディアで活動。上智大学文学部新聞学科非常勤講師。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルをライフワークとして研究、記事を執筆している。近著に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)

  • 撮影島颯太

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