なぜNHKの女子アナだけが人気者になれるのか…?納得の理由 | FRIDAYデジタル

なぜNHKの女子アナだけが人気者になれるのか…?納得の理由

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NHKの“Wエース”である和久田麻由子アナ(左)と桑子真帆アナ。ともに五輪の開会式中継を担当し、紅白歌合戦の司会も複数回担当。その知名度は全国区レベルで、まさに“看板アナ”と言える存在だ

ニュースサイトを見ていてふと驚いた。桑子真帆アナ、和久田真由子アナ、鈴木奈穂子アナ……昔も今も女子アナに関する記事は“エンタメニュースの花”であると言えるだろうが、気がつけばそこに並ぶのはNHKのアナウンサーの名前ばかりではないか。

なぜいま、NHKの女子アナだけが人気者になれるのか? これには実は、それなりのもっともな理由があるのだ。大きく分けてその理由は4つある。

①NHK特有の「内製主義」がアナウンサーを育てる

まず最初に挙げられるのが、NHK特有の「内製主義」だろう。

ご存知の通り、NHKは従業員数およそ1万人という巨大組織。番組を作るスタッフもアナウンサーもできるだけ「自前で」という「内製主義の文化」が根強いのだ。民放では、番組制作スタッフの大部分を外部の制作会社の人間が占め、キャストにもタレントをどんどん起用しているのとは対照的だ。

この「内製主義」がどういうことかもっと簡単に説明すると、「民放がもしブラタモリを作ったら、タモリさんのパートナーをきっと局アナにはやらせないだろう」ということだ。

タモリさんといえば芸能界きっての大御所。民放のプロデューサーなら、その「街ブラのお相手役」に局アナを使うという発想は多分ない。タモリさんにいろいろ配慮して、視聴率のことも考えれば、きっといま旬の「人気・実力共に兼ね備えた女性タレント」を起用するに違いないと思う。

そこを「あえて局アナで」と考えるのは「できるだけ自前のアナウンサーを使いたい」というNHKの体質がなせる技だと言えるだろう。そして、タモリさんの相方という、なかなか恵まれたポジションを与えられることで、NHKの女子アナたちは大きく知名度も実力もアップさせる絶好の機会を得ていると言える。

これと同じような「NHKならではのアナウンサー起用」は、NHKの他のメイン番組でも行われている。

前回私が書いた『もうスター女子アナは現れない?「地味アナの時代」が到来した背景』でも指摘させてもらったが、民放の女子アナたちがセントフォースなどの「事務所所属のフリーアナ」たちに活躍の場をどんどん奪われているのとは対照的に、唯一NHKの女子アナたちだけが、局の看板番組で多くの活躍の場を与えられ、着実に視聴者に顔を覚えてもらい、実力も向上させているのだ。

これが、NHKの女子アナだけが人気者になれている最も大きな理由の一つだろう。

②「全国行脚と波の多さ」が生む競争原理

かつて「女子アナ志望」の学生たちの間では、NHKは就職先として不人気だった。

なぜなら、NHKには北は北海道から南は沖縄まで、全国各地に50以上もの放送局がある。就職したはいいが、どこに飛ばされるか分からない。民放なら原則的に「東京の放送局なら一生東京にいられる」のに比べて、NHKは「日本の果てまで行ってQ」という感じ。これは女子アナの卵たちにとって、かなりのマイナス要因だったのだ。

しかもNHKには「波」の数も多い。民放ならせいぜい地上波1波とラジオがあるくらいだが、NHKには総合、教育、複数のBS、複数のラジオ、国際放送などいくつものチャンネルが存在している。こんな中「総合テレビの有名番組」に起用されるアナウンサーはほんの一握りだ。だから、NHKのアナウンサーの人気は比較的低かった。

しかしこの「放送局と波の多さ」が逆に大きなメリットになってきている。

まずNHKも合理化が進む中で、地方の小さな放送局のアナウンサーは「契約社員」に任せることが多くなった。昔と違って今は、正社員であれば「日本の果ての小さな局」に飛ばされることは少なくなり、地方の中でも制作番組数の多い「拠点放送局」で修業すれば済むようになったのである。

こうして若いうちから、地方で比較的大きめの番組を任されて力をつけることもできるし、チャンネル数の多さが故の番組数の多さが「民放に比べて圧倒的に多い活躍の場」を生むわけで、「規模の大きさが活発な競争原理を生む」というプラスの面が注目を集めるようになってきた。

この「活発な競争原理」のなか、巨大組織内で「いかに有力者に気に入られるか」という人間としての総合力や「おっさんキラーぶり」が問われる勝ち残り戦を生き抜き、東京で看板番組の座を獲得したアナウンサーは、民放の女子アナと比較すれば遥かに磨き抜かれた「真の実力者」として実力・人気共に当然成長しているということなのである。

③「使い減りさせられない」公共放送ならではの厳しい勤務管理

これも前回の原稿で指摘したが、民放の人気女子アナたちは人気者であるが故にオーバーワークを強いられがちで、往々にして心や身体の健康を害してしまう残念な事態になってしまう場合も少なくない。

そして、短期間にたくさんの番組に出演しすぎることは、いわゆる「使い減り」を招くことも多く、こき使われた挙句、視聴者に飽きられて短期間で消えていくという悲しい結果を招くこともままある。

しかし、NHKではこういう心配は民放に比べてかなり少ない。なぜなら「公共放送だから」で、NHKでは働き方改革や労務管理、ワークライフバランスへの配慮が民放に比べてかなりしっかりしているからだ。

どんなに人気アナになったからといっても、「使い減り」をさせられたり、病んでしまうような「オーバーワーク」をさせられることはまずない。

別の視点から言うと、局内にいくつもの複雑な「権力闘争」が存在するがゆえに、「ひとりの女子アナが全面的に覇権を握ることなど簡単にはできない」という側面もあるだろう。

いずれにしろ、民放の人気女子アナのように疲労困憊した様子で朝から晩までこき使われるという事態は避けることができるので、そういう意味でもアナウンサーとして健全な活躍が望めるのだ。

④スキャンダルを未然に防ぐ「衣装部・バレメシ・割り勘」

少し前にフジテレビの女子アナたちの「ステマ疑惑」が問題となった。言うまでもなく、人気女子アナが活躍する上で大きな障壁となるのが「スキャンダル」だ。

しかし、実はNHKには人気アナウンサーたちのスキャンダルを未然に防いでくれる「独特の慣習やルール」が存在しており、これもNHKの女子アナだけが人気者になれる理由の一つと言えるのではないだろうか。

まず存在として大きいのが、NHKの衣裳部だ。NHKの番組に出演する人は、局内にある衣裳部に行けば出演するための衣装を借りることができる。貸し出される衣装がいまいち…などの不満の声を聞くこともあるが、ともかく出演するための衣装を一切心配しなくても良いという点が、女子アナたちにとって大きな安心材料となっている。

民放の女子アナはだいたい誰でも、番組出演する際に着る衣装に頭を悩ませているものだ。定時ニュースなどの小規模な番組では自前の衣装で出演しなければならず、ある程度の規模の番組でもスタイリストなどを雇ってもらい自分の衣装を準備する必要があるからだ。

こうした「何を着るか」の悩みは、「メーカーなどによる便宜供与」が入り込む余地を生む。また、スタイリストやメイクなどを通じて「メーカーからの働きかけ」が行われるのは常態化している。こうした土壌から「女子アナのステマ疑惑」は生まれたといっても過言ではない。

NHKには衣装部があることにより、ステマなどの悪い誘惑や、企業との癒着が入り込む隙間を無くしている。さすが「公共放送」だけあって、公務員的にガードが固いのだ。

そして、番組収録などが終了した後に行われる「打ち上げ」や、局幹部を交えた接待の場も、女子アナにとってはスキャンダルの発生しやすい場と言える。女子アナに近づいて何かを企むような輩や、女子アナと「良い仲になりたい」と思う曲者はだいたいこうした「飲食の場」を端緒に女子アナに接近を試みるからだ。

しかし、NHKには「バレメシと割り勘」という絶対的ルールがある。原則として番組収録後の打ち上げは行わず、「バレメシ(仕事が終わったら解散し、各自で食事を取ること)」が原則だし、よしんば飲食の席を設けたとしても、割り勘にせねばならず、飲食代の上限も厳密に決められている。

こうした「公務員的ガードの固さ」が、飲食の場における女子アナへの「悪の接近」を防いでいる。こうしてNHKの人気女子アナたちは、スキャンダルから強力にガードされているのだ。

以上、「なぜNHKの女子アナだけが人気者になれるのか」がお分かりいただけただろうか?

よく「不況になると公務員が強い」と言われるが、それとまさに似たような事態が、放送業界でも起きていると言えるのではないだろうか。「公共放送」という鉄壁の鎧に大切に守られ、NHKの女子アナたちはいまや「放送業界のベストポジション」に座り、自在に活躍しているのである。

  • 鎮目博道/テレビプロデューサー・ライター

    92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなどを始め海外取材を多く手がける。また、ABEMAのサービス立ち上げに参画「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、放送番組のみならず、多メディアで活動。上智大学文学部新聞学科非常勤講師。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルをライフワークとして研究、記事を執筆している。近著に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)

  • 撮影西圭介

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