『月曜から夜ふかし』がゴールデン進出でも面白さを維持できたワケ | FRIDAYデジタル

『月曜から夜ふかし』がゴールデン進出でも面白さを維持できたワケ

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『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)で『関ジャニ∞』村上信五とともにMCを務めるマツコ・デラックス。10年間MCを務めているだけに、放送時間帯が変わっても、二人の掛け合いの安定感は抜群だった 写真:つのだよしお/アフロ

「深夜番組がゴールデン・プライムに上がるとつまらなくなる」というのは、テレビ業界でよく言われるジンクスである。深夜枠ではのびのびとチャレンジできていたのが、制約や視聴率へのプレッシャーが強いゴールデン・プライムタイムでは、どこか「小さくまとまって」つまらなくなってしまいがちなものだ。

このジンクスは果たして、あの超人気番組『月曜から夜ふかし』にも当てはまるのだろうか。2012年に始まり、10年間月曜深夜で好成績を収めた結果、今年4月4日から月曜22時放送開始になったばかり、つまり「この4月改編でプライムに上がった」あの番組だ。

4日の初回放送では、放送時間の大部分が「これまで10年の総集編」だったし、11日には放送休止だったため、18日の放送が実質的な「プライム初回」だったと言って良いと思う。そこで、早速18日の放送をもとに「夜ふかしはプライムに上がってつまらなくなったのか」をテレビマンの視点から分析してみることにした。

結論から言うと『月曜から夜ふかし』は、「深夜番組のジンクス」を巧みに打破した。若干の不安要素こそ残るものの、深夜の頃と変わらぬ面白い内容で放送されていたと言って良いのではないかと思う。

「下ネタの壁」をうまく回避できていた

まず私が一番不安に思っていた要素が、「プライムに上がることで、のびのび下ネタをすることができなくなり、つまらなくなってしまうのではないか」という「下ネタの壁」であった。

そもそも『月曜から夜ふかし』は、登場する人物たちやスタジオのマツコ・デラックスと村上信五の「人間味あふれた下ネタ」に支えられているような番組であり、下ネタ無しでその面白味を発揮できるのか?というのを心配に思ってしまうからだ。

しかし、18日の放送では、その問題は実に巧みに「回避」されていた。確かにプライムタイムだから深夜のように下ネタを大っぴらにすることはできず、抑制されていたのだが、なんというかうまく「匂わせていた」のである。

まず冒頭で若干長めにマツコと村上が「スタジオの観客をいじる」時間をとっていたが、その中で、男性観客1人の風貌が「AV男優のよう」とコメントして笑いをとり、続いてのVTRコーナー「街行く人のリアル孤独のグルメを調査した件」でも、DVDボックスでカレーを食べるのが楽しみというお父さんが「A Vを見る」という発言を紹介していた。

このように番組開始から短時間の間に「AV」という単語を「特に下ネタではない流れ」で2回使用し、さらに最後のスタジオトークネタとして『男性が「パンツの窓」を使っている割合が判明した件』という「十分許容範囲内のソフト目の下ネタ」を持ってきていた。

このようにきっと『月曜から夜ふかし』では今後、「下ネタではない流れやソフトな許容範囲内の下ネタコーナー」でうまくワードを配置するという戦略で、深夜の頃より厳しい「下ネタの壁」をうまく回避していくのだろうな、という戦略が見えたのだ。しかもソフト下ネタのトークは番組最後、つまり可能な限り深夜に近い場所に置いているあたりも、きちんと練られた戦略の存在を確信できるさすがの演出だった。

「編集の絶妙な上手さ」が健在のままだった

実は私はかつて、仲間のテレビマンからこんな話を聞いたことがある。そのテレビマンは、『月曜から夜ふかし』の構成を担当する放送作家と一緒に仕事をしていて、その作家がこんなことを言っていたというのだ。

「夜ふかしには、めちゃくちゃ編集が上手い編集マンがいて、どんな街頭インタビューでも彼の手にかかると面白く編集されてしまう。だから作家としてはそれほどすることがない」

これがどのくらい実体を表しているのか、それともかなり謙遜が含まれているのかは定かではない。しかし、夜ふかしという番組の面白さがどこにあるのかを巧みに言い表している言葉だと思う。

夜ふかしという番組の面白さの「核」は、間違いなく「街頭インタビューの面白さ」だ。渋谷・浅草・蒲田・赤羽・北千住・小岩・竹の塚などの「面白い人がいそうな街」で、ディレクターたちがしつこい程にネバってインタビューを撮り、その大量のインタビュー素材を「絶妙なテンポで面白く編集する」ことで、えも言われぬ面白さを醸し出している。

その「編集の絶妙な上手さ」が18日の放送でも「そのまま」だったのだ。番組で扱うネタ的にも「街行く人のリアル孤独のグルメを調査した件」と「街行く人がモヤモヤしている事を一緒に解決してみた件」の2つのVTRでは、深夜時代と同じように「面白い人がいそうな街での街頭インタビュー」を巧みに編集していたし、「全国ご当地問題を調査した件〜埼玉編〜」では、これまで通りの「埼玉いじり」も健在だった。

こうした「番組の基本コンセプト」とそれを支える「編集の巧みさ」が変わらない限り、夜ふかしの面白さは多少下ネタが減ったとしても変わらないだろうな、というのが18日の放送を見ての正直な感想であり、「この番組については深夜ジンクスを気にする必要はないのではないか」と安心することができたのである。

「CMまたぎ」をどうするか

ただ、そうは言っても「若干心配な要素」もいくつかある。そのひとつが「CMまたぎをどうするか」という問題だ。

これまで深夜では『月曜から夜ふかし』は、極めて特殊なCMのまたぎ方をしていた。それは名付ければ「前方連打」とでもいう「番組の冒頭に、“このあとの月曜から夜ふかしではこんな事をしますよ”という告知的なものを何回も流し、そこでCMの大部分を消化してしまうことで、番組本編では1〜2回CMをまたげば良いようにする」という、かなり特殊で他にあまり例を見ない「CMまたぎ」をしていたのだ。

この「前方連打」をするには「同時間帯に敵がいない圧倒的に強い番組」であることが必須の条件だ。なぜなら番組冒頭で大量のCMを打つことで、視聴者がうんざりし、同時間帯の他の番組に流れてしまうリスクが高いからだ。ただ、深夜時代の夜ふかしはそれをやれるほど「圧倒的に強かった」からこそ、番組の途中であまりCMが流れないことで番組の流れが途絶えず、「コーナーの面白さで視聴者を引っ張ってダラダラと見続けさせる」という戦術を取ることができたのだ。

ただ、残念ながらこの「前方連打戦術」は流石にプライムタイムでは不可能だ。プライムはそんなに甘くないので、そんな事をしたら確実に他局の番組に視聴者を取られてしまう。

あともうひとつ似たような戦術として「後方連打戦術」というのがある。これは番組開始からできるだけ長い時間CMを入れず、視聴者を引っ張り、番組終了間際に立て続けにCMを入れるという「CMまたぎ」の方法で、特に深夜番組ではよく実行されている。なぜなら深夜帯では「視聴者はどんどん寝ていくので、番組の後半ほど視聴率は確実に下がる」からだ。

この戦略もかなり効果的だが、決定的なデメリットは「次の枠に与えるダメージが大きいこと」だ。だからこれも今の夜ふかしでは難しいだろう。次の枠は『news zero』という日テレ系列の看板ニュース番組であり、その視聴率に影響を与える「後方連打」が許されるはずはないからだ。

実は『月曜から夜ふかし』のような、編集のテンポとネタのそこはかとない面白さで視聴者を釘付けにする番組ほど、CMで流れが中断されることの影響が大きいと私は見ている。現に18日の放送でも、上手にCMをまたいではいるものの、やはり若干「気分を削がれる」感じはしてしまった。この「CMまたぎをどうするか」という問題は確実に今後の課題になってくるのではないだろうか。

「『探偵ナイトスクープ』化」してしまう懸念

そしてもうひとつ、私が密かに懸念を抱いていることがある。それは、ひょっとすると夜ふかしが「『探偵ナイトスクープ』化」してしまうのではないかといううっすらとした予感のようなものだ。

どういうことか説明しよう。まずひとつ目の「ナイトスクープ化の予兆」は18日の放送で若干「VTRを感動方向に振る」傾向が見られたことだ。「街行く人のリアル孤独のグルメを調査した件」では、「私の作る料理はまずい」という女性が登場して、その女性が作る料理を番組スタッフが食べてみたら、美味しかった、というネタがあった。

実は女性が「自分の作る料理がまずい」と思い込んだのは、独りでごはんをたべていたからということに気づく、という少し感動的なVTRだったのだが、この方向に行くとなんとなく「夜ふかしらしさ」が消えていってしまうような気がする。

「エロ・下ネタが封じられたから、感動方向へ」というのは、多分良くない。それを感じたマツコ・デラックスにスタジオで猛攻撃を受けていたから大丈夫だとは思うが、あまり安直に「感動ネタ」方向に走ると番組が『探偵ナイトスクープ』のようになってしまう危険性があると思う。

もちろん『探偵ナイトスクープ』は伝説の名番組で、素晴らしい番組なのだが、あくまでも『月曜から夜ふかし』は「月曜から夜ふかしらしくあってこそ」なのではないか。

そしてもうひとつ。「ナイトスクープ化の予兆」は、番組で大々的に「情報募集」を始めたことだ。18日の放送では「モヤモヤしている未解決案件」などの募集告知を放送していたが、あまり「解決してほしいことを募集」してそれを解決していくという「視聴者投稿解決型」の番組にしていくと、まさにそれは『探偵ナイトスクープ』以外の何ものでもないことにならないか。

深夜の頃からたまに「情報募集」はしていたような気もするが、あくまで夜ふかしには「地道に街頭インタビューをしていき、街角でリアルに面白い人を発見する番組」であってほしい、と私は思ってしまうのだ。

と、わずかに不安要素のようなものはあるものの、総体的に『月曜から夜ふかし』は見事にプライムタイムに上がってもその面白さを「そのまま」維持してくれた、と18日の放送を見る限り私は思っている。ぜひこの調子で、これからも何かと憂鬱な月曜日の夜に、全国の視聴者に笑いを届け続けてもらいたい、と1人のファンとして願っている。

  • 鎮目博道/テレビプロデューサー・ライター

    92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなどを始め海外取材を多く手がける。また、ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、放送番組のみならず、多メディアで活動。江戸川大学非常勤講師。MXテレビ映像学院講師。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルをライフワークとして研究、記事を執筆している。近著に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)

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