大阪公立大学病院で覇権争い勃発!渦中の「病院長候補」を直撃 | FRIDAYデジタル

大阪公立大学病院で覇権争い勃発!渦中の「病院長候補」を直撃

4月開学 まるで″白い巨塔″ 市立大と府立大が統合し順風満帆な船出となるはずが……

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「まるで山崎豊子の小説『白い巨塔』のように大学病院の人事を巡る覇権争いで、病院長不在という異例の事態を招いています」(在阪テレビ記者)

大阪府立大と大阪市立大が統合して、今年の4月1日に開学した大阪公立大学。国公立大の入学定員数では大阪大、東大に次いで日本で3番目の規模を誇る大学となった。この統合により市大附属病院も、新たに『大阪公立大学医学部附属病院』として生まれ変わったが、今、病院長不在という異常事態が起きている。

大阪市の天王寺駅からすぐの場所にある大阪公立大医学部附属病院。1925年開設の名門病院である
大阪市の天王寺駅からすぐの場所にある大阪公立大医学部附属病院。1925年開設の名門病院である

「昨年12月、第1回院長選考会議が医学部で開かれました。会議は市大医学部教授や医師会幹部など計7名で構成され、今年1月末、経験や能力などを判断し、1名に絞り込んだのです」(同前)

選考会議が院長候補として選んだのが、市大の荒川哲男学長(当時)だった。

ところが3月になって、選考会議の決定に異を唱える人物が現れた。大学を運営する法人『公立大学法人大阪』の西澤良記(よしき)理事長(76)である。

「西澤氏は、市大の学長が病院長になるのは『天下り的な人事』などと主張し、再考を要求。第三者委員会が『選考過程に問題はなかった』との結論を出しても、『(選考の規程に)不備があった』と、最終的な任命権者である西澤氏が承認を拒否。事態はドロ沼化しています」(同前)

院長候補の荒川氏は市大医学部の出身だ。’00年に同大大学院教授となり、’04年に附属病院副院長を経て’16年には同大学長。今年3月に学長を退任した。一方の西澤氏も市大医学部出身で、’19年より大阪公立大学の運営法人の理事長となった。

「荒川先生は第3内科と呼ばれる消化器内科出身で、5歳上の西澤先生は循環器の第2内科。ライバル関係ではありますが、西澤先生は、自分が座ってきた病院副院長や学長の座を、荒川先生に禅譲してきました。しかし、ここへきて、はっきりと物を言う荒川先生との関係にヒビが入り、西澤先生は脳外科出身のX先生を院長候補に担(かつ)ぎ出したのです。X先生はかつて市大病院長に立候補した経緯もあり、自身のコントロール下に置ける存在と考えているのでしょう」(大学関係者)

優れた手術の腕前で、マスコミからも脚光を浴びる浪速大学病院第一外科の助教授・財前五郎。その彼を嫌う現教授の東貞蔵(あずまていぞう)が、財前の教授就任を阻止しようと水面下で画策する小説『白い巨塔』とよく似た構図だと、学内で囁(ささや)かれている。

「荒川先生は、気さくな性格で人気もある。’20年からラジオ大阪で、『荒川哲男の元気だしてゆこう! てっちゃんねる』という冠番組も持っており、メディアへの露出も多い。学長時代には、得意な料理を生かし、学生が考案したカレーと学長のビーフシチューで対決する企画を学内で行ったり、ユーモアもある。その反面、相手が法人の理事長であっても、ノーとはっきり言える人。

一方の西澤先生は、学者肌で真面目な印象。’19年には大阪府と市が誘致を進めるIR事業で、事業者選定委員会の委員長になったことでも話題になりました」(同前)

この騒動に、大阪市の松井一郎市長も「人事権は大学法人理事長にある」と、西澤氏に加勢。事態は政界にまで波及する勢いだ。

その荒川氏は本誌の直撃にこう話した。

「選考会議で正式な手続きを経ているのに、天下り的などという理由を挙げるのは支離滅裂だと思います。(任命拒否の)本当の理由は私にもわからないんです。こうした介入は大学の自治を脅かす行為であると思いますし、患者さんや学生にも迷惑がかかります」

一方の西澤氏は法人を通じて文書で、天下り的であることが任命拒否の理由だと改めて説明。院長選考のプロセスを検証し、病院長選考に関する規程を制定する、と譲らないのだ。

「『天下り的』というなら西澤先生が推すX先生も『天下り的』になってしまい、任命拒否の理由にならない」(病院関係者)

開校早々続く内紛劇。早急に治療が必要なのは、この大学の体質だろう。

大阪公立大の英語名称について発表する西澤良記理事長(中央)。初代理事長として、2校の統合に尽力した
大阪公立大の英語名称について発表する西澤良記理事長(中央)。初代理事長として、2校の統合に尽力した
病院長の就任を拒否された荒川元学長。病院長が不在の間、病院では副院長を「職務代理者」として運営しているという
病院長の就任を拒否された荒川元学長。病院長が不在の間、病院では副院長を「職務代理者」として運営しているという

『FRIDAY』2022年5月6・13日号より

  • 取材・文甚野博則

    ノンフィクションライター

  • PHOTOPHOTO:甚野博則(1枚目) 共同通信社(2~3枚目)

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