カットやCM場所の基準は? 誰も知らない「テレビ用映画」の世界 | FRIDAYデジタル

カットやCM場所の基準は? 誰も知らない「テレビ用映画」の世界

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イメージ画像:アフロ

テレビ業界には、あまりよく知られていない「その道の専門家」たちがたくさんいる。そして、そんな人たちだけが語れる「その道のプロならではの裏話」がそこにはある。

みなさんが何気なくテレビで見ている「映画」の舞台裏にも、そんな「専門職の職人」が実は存在しているのをご存知だろうか?

「◯◯ロードショー」とか、「◯◯洋画劇場」といった名前の枠などでテレビ放送されている映画も「映画館でやっているそのまま」を放送しているわけではない。実は数々の専門職たちの「加工」を経てはじめて「放送用の映画」となっている。

今回はそんな「テレビ用映画を作る専門職」の職人に話を聞いた。あなたが見ている「テレビ用映画」の、ちょっと驚くような制作工程の裏話を紹介したい。

「劇場版」と「テレビ用」の違い

では、一体どんな「加工」がなされているのか。それを理解するにはまず、「映画館で公開される劇場版映画」と「テレビ用の映画」ではどこが違うかを考えてみるとわかりやすい。

まず第一に思い浮かぶのが「尺」。つまり映画の「長さ」だ。当然なのだが劇場版映画の長さはまちまちだ。90分前後の比較的短いものから、数時間にもわたる巨編までいろいろある。劇場で公開する上では、あまり長すぎたりしない限り、映画の長さがまちまちでも別に特に弊害はない。

一方テレビの放送枠は、時間が毎週決められている。毎週何曜日の何時から2時間の枠、と決められればこの「尺」は、特別編成でもない限り毎週同じだ。本編とコマーシャルなどの尺を合計して、必ず120分0秒0フレームに収めなければならない。

これが1秒でも長かったり短かったりすれば、それは放送事故であり、決して許されない。そこで、映画の「尺を調整する」という作業が、テレビで映画を放送する上で必ず必要となってくるわけだ。

そして次に思い浮かぶのがたぶん「CMのありなし」だろう。

民放の地上波やBSではだいたい本編の間にコマーシャルが挟まれる。それに対して劇場で流される映画の本編の間にコマーシャルが流れるということは、通常はない。一旦映画が始まってしまえば、途中で中断されるとすれば「長尺のインド映画などでよくあるトイレ休憩」ぐらいではないだろうか。

そこで、この「CMまたぎをする」という作業も、テレビ用映画を制作する上では必要となることが多い工程のひとつとなっている。

この「尺調整とCMまたぎ」をするのが専門のディレクターに話を聞いてみた。するとこの作業には「彼ら独特の方法論」と「コツ」が存在していた。

「私がいつも心がけているのは、“バッサリ”と“チマチマ”を合わせてうまく尺調整をすること。映画が長すぎるときには、まず思い切ってバッサリとブロックを落とし、そのあと“チマチマ”短いシーンをカットしてぴったり時間に合わせます。

では、“チマチマ”カットするときに、私が何を一番最初にカットの対象にしているかというと、それは“ロング”と言われる“街などの風景を写している広いカット”です。だいたいの映画では、まず街角などの広い画はカットしても映画のストーリーには影響しないことが多いからです」

「ロングはストーリーに影響しない」というのは、テレビマンを長年している私にも盲点だった。そんなこと考えもしなかったが、言われてみれば確かにそうかもしれない。

映像文法として「場面転換したらまずロングで状況をなんとなく分からせ、そのあと次第にサイズを詰めていってストーリーを具体的に展開していく」のが常道だからである。

ということはつまり裏を返して言えば「場面転換最初のロングカットを切っても、少し情緒はなくなるが話は通じる」ということとも言えるのだな、ということに初めて気がついた。

では、「バッサリカット」の方法にはどんなセオリーがあるのだろうか。

「“バッサリ”カットするときにはどうするかというと、“その枠の視聴者層には関心が薄そうなブロック”を丸ごとバッサリとカットするのが1番の方法です。

人間というのは“最初のシーン”と“最後のシーン”は印象に残るものなので、映画をカットするときには、最初と最後のあたりには手をつけずそのままにするのが良いのですが、真ん中らへんはストーリー展開によほど影響しない限り、意外とバッサリ行っても気にならないものです。

例えば、男性の視聴者が多い放送枠であれば、アクションシーンなどの派手なシーンを見たい人が多いので、恋愛シーンやストーリーにあまり関係のない心理描写は思い切ってカットします。逆に、女性の視聴者が多い放送枠であれば、恋愛や心理描写はできるだけ残して、暴力的なシーンをバッサリいきます」

映画館にわざわざ出向く客と違って、テレビで映画を見ている人たちは「なんとなくボーッと、イメージビデオのようにつけている感じで見ている人が多い」のだという。

だから、「見たいシーン以外は意外と無くなっても気にならない」そうだ。

そして、そのことを表すように、「視聴率も、名画よりは“出来はそんなに良くないけれども派手な映画”の方が高視聴率を取ることが多い」のだそう。「なぜこんな映画が?と首を傾げたくなるような映画が意外にキラーコンテンツだったりします」ということだ。

では、CMまたぎはどのようにしているのだろうか?

「多くの番組で決まりにしていることが多いのは、①番組開始から20分はCMを入れない、②正時またぎにCMを入れない、ということです(※注:「正時」とは12:00とか20:00など、毎時0分のことを指す。正時には裏で番組が始まることが多いので、チャンネルを変えられるのを防ぐため、その時間周辺にはCMを入れないのがテレビ業界の常道となっている)。

私は、だいたい“盛り上がりのほんの少し手前、たとえば15秒くらい手前”にCMを入れることがよくあります。そうすると期待感を持たせることができますから。

ただ、あまりに煽るのもよくないので、ブロックの切れの良いところでCMを入れるのを基本とした上で、たまに15秒前のテクニックを使うという感じでしょうか。

他の番組でよくやられる“CMのあとで、前のシーンの振り返りをする”のは映画番組では良くないとされていて、枠によってははっきりとルールでNGになっていることもあります。ただ、映画が短い場合には、枠に合わせるために例外的に“振り返り”をすることもあります」

やはり映画はそもそもが「芸術性の高い著作物」なので、テレビ一般の「趣向を凝らしたあざといCMまたぎ」に比べると、抑制的にCMがまたがれているようだ。

そしてもう一点、忘れられがちだが実は「映画とテレビの大きな違い」がある。それは「映像のアスペクト比」だ。

映画のアスペクト比はシネマスコープと呼ばれる「2.35:1」などが多いが、地上波デジタル放送などは「16:9」のワイドが多い。つまり、簡単に言えば「映画の方がテレビよりも横に長いので、カットしないとテレビ画面に収まらない」のだ。

「この画面サイズの調整は、凝り始めるとキリがないので、私の場合は大切なものがどこに映っているかを基準に原則は①左に寄せて右をカット②右に寄せて左をカット③センターを残して両端をカット、の3種類にしています。

ただ、テレビは局のルールとして、残虐シーンで傷口や生首が映せなかったり、セクシーなシーンで映せないものがいろいろあったりするので、そういうシーンを画面サイズ調整を利用してうまくカットすることもあります。

画面サイズ調整で誤魔化せないときには、デフォーカス(※注 画面をぼかすこと。テレビではモザイクよりデフォーカスが使われることが一般的)やブローアップ(※注 画面を拡大すること)で対応します」

ここまで、「テレビ用映画制作の職人」のお話、いかがだっただろうか?ちなみにさらにトリビアをいくつか。

テレビ用の日本語吹き替えや、こうしたテレビ用映画の制作は「東北新社」など、いくつかの制作会社が非常に得意としている。

だいたい最初にテレビでその映画を放送する局が主導して、こうしたテレビ用映画の制作を得意とする制作会社に「テレビ版」の制作を発注する。

ただ、そこで制作した「吹き替え済みのテレビ版」の権利は映画配給会社が持つことが多いので、2回目以降のテレビ放送では、配給会社がそのテレビ版を局に貸す場合が多い。

つまり例えば、最初に放送したのが日本テレビなら、日本テレビの発注で制作会社がテレビ版を作り、2回目に放送するのがテレビ東京なら、「日本テレビで一度放送したテレビ版」が映画配給会社からテレビ東京に貸し出され、それをテレ東が再編集して放送する、というようなケースが一般的なのだ。

「同じ映画でも、DVDとテレビで吹き替えている声優が違う」などというケースは、DVD版とテレビ版で発注者が違うからそういう事態が起きる場合があるのだという。

また、テレビ局に映画の放送権が販売される場合には、「セット販売」されることがよくある。

洋画などで、大ヒット映画の放送権を販売するときには「〇〇(映画のタイトル)パッケージ」などと名付けられたセットが組まれ、大ヒット映画1本に、中ヒット映画2本くらいと全然ヒットしなかった映画数本が組み合わせられて、抱き合わせ販売されることが多いのだ。放送できる回数と期間もそれぞれに定められている。

つまり各テレビ局はゴールデン・プライムでヒット映画を1回放送するために、「あまり欲しくない映画を何本も買わされる」ことになるわけで、こうやって「無理矢理買わされた映画」を消化するために、深夜などに映画枠を持っている場合が多い。

さて、「テレビ用の映画の世界」の裏話、いかがだっただろうか?これからあなたがテレビで映画を見るときに、少し違った目線でも楽しめるようになって、さらにテレビで映画を見る楽しみが増えたなら、私としてはとても嬉しい。

  • 取材・文鎮目博道/テレビプロデューサー・ライター

    92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなどを始め海外取材を多く手がける。また、ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、放送番組のみならず、多メディアで活動。江戸川大学非常勤講師。MXテレビ映像学院講師。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルをライフワークとして研究、記事を執筆している。近著に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)

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