『鎌倉殿の13人』梶原善の代表作と言われた”善児ラストシーン” | FRIDAYデジタル

『鎌倉殿の13人』梶原善の代表作と言われた”善児ラストシーン”

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『鎌倉殿の13人』で主演を務める小栗旬。梶原善が演じる”善児”に次々と暗殺を命じるが…
『鎌倉殿の13人』で主演を務める小栗旬。梶原善が演じる”善児”に次々と暗殺を命じるが…

俳優・小栗旬主演のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の第33話『修善寺』が8月28日にオンエア。二代将軍・源頼家と暗殺者・善児が刃を交える衝撃のラストシーンに、ツイッターでは『#鎌倉殿の13人』がトレンドランキング世界1位に輝き、一週間たった今も興奮の余韻が冷めやらない。

今回の大河ドラマの主人公は、鎌倉幕府二代執権・北条義時(小栗)。鎌倉幕府初代将軍の頼朝(大泉洋)にすべてを学び、武士の世の中を盤石にした義時を中心に頼朝の13人の家臣団が激しいパワーゲームを繰り広げる。

義時が放った刺客・善児(梶原善)が鎌倉に弓引く頼家(金子大地)に迫るも、紙に書かれた“一幡”の文字に目を奪われ頼家の刃が善児を貫く。しかし背後から善児の弟子・トウ(山本千尋)が突き刺し、頼家は絶命。これで終わったかと思った刹那、弟子のトウが

「ずっとこの時を待っていた」
「父の仇!」

と叫んで善児にトドメを刺すといったラストシーンに、心奪われた。

「これまでも義時の兄・宗時(片岡愛之助)や頼朝と八重(新垣結衣)の息子・千鶴丸、頼朝の弟・範頼(迫田孝也)たちを闇に葬り、次回予告やオープニングのクレジットに名前がある度に波紋を呼んで来た善児の死には、『頼家よりも善児の死の方が悲しい』『決していい人じゃないのに、なんで泣ける』といった悲しみ声が寄せられています」(ワイドショー関係者)

善児は、史実には存在しない架空のキャラクター。生みの親である脚本家の三谷幸喜は、

「愛させているか、嫌われているのかはわかりませんが、こんなにみなさんの心に残るキャラクターに成長するとは思っていませんでした」

と前置きした上で

「もちろん梶原善さんの力ではありますが、それを踏まえて善児にこんなことをさせようか、と想像が膨らんでいきました」

と語る。善児が三谷の想像をはるかに上回るキャラに成長していったことは明らかだ。

それまで感情を一切見せることのなかった善児に”人間らしさ”が垣間見られるようになったのは、弟子のトウ、そして頼家の息子・一幡との出会いがきっかけ。

トウは、善児が範頼を殺める場面を見てしまった少女の8年後の姿であり、第29話では“お師匠”と呼ぶ善児に促され義時の前で圧巻の剣技を披露して、視聴者の度肝を抜いている。

「頼朝の死後は、鎌倉殿を取り巻く13人の御家人によるパワーゲームどころか、もはやデスゲーム。そこには『吾妻鑑』には書き残されていない身の毛もよだつような暗殺劇があったはず。

そうした暗殺劇を劇的に描けば描くほど、暗殺者は際立つ。三谷氏は、その辺りを十分解った上で、善児役を盟友とも呼ぶべき梶原善に託したのかもしれません」(制作会社プロデューサー)

俳優・梶原善は、下北沢の中華料理店『珉(ミン)亭』でアルバイト仲間だった俳優・松重豊の紹介で三谷幸喜と出会い、三谷が主宰する劇団・東京サンシャインボーイズの公演に参加。その後もドラマ『古畑任三郎』シリーズでは、車掌や弁当屋の役。

『王様のレストラン』(共にフジレビ系)では菓子職人、はたまた映画『THE 有頂天ホテル』では演歌歌手の付き人、『清洲会議』では秀吉の弟・小一郎役を演じるなど、三谷作品で一癖も二癖もあるバイプレーヤーとして注目されてきた。

ところが今作で演じる善児役は、ただの脇役ではない。歴史の真実を知る生き証人でもあり、重要な役どころである。

「最初の何話かの台本を読み終えた頃、メールをもらったという梶原。そこには『代表作にしてください』と三谷からのメッセージが記されていました。最初の内は、“この役が!?”と首を傾げていた梶原も、演じきった今『本当に僕にとって善児は代表作になってしまった』と、この役への思いを口にしています」(前出・ワイドショー関係者)

“幼き一幡との別れ”を描いた第32回『災いの種』は、そんな善児にとって神回となった。

「善児の元を訪ねた義時が『あれは生かしていてはいけない』と迫るも、『できねぇ』と首を横に振り、理由を問われ『ワシを…好いてくれている』と言って目を潤ませる。これまで表情ひとつ変えずに淡々仕事をしてきた善児が、この時ばかりは小刀を手にして一幡に近付こうとしても動けず、察したトウが『水遊びをしましょう』と連れ去る。

その姿を涙を浮かべ見つめ、みずからの手で作ったブランコの紐を切り、苦悶の表情を浮かべて二人の後を追う善児の姿には、ネット民からも“過去一で号泣”したといったコメントが殺到しています」(制作会社ディレクター)

人間らしい感情を持ってしまったがゆえに、命を落とすこととなった善児。これも暗殺者の宿命なのか。梶原自身は、

「もう少し暗躍していきたかったな。このスリルを味わっていたいな」

と名残惜しそうに話す。しかし、第33話『修善寺』のラストシーンこそ“梶原善の代表作”に相応しいだろう。

 

  • 島右近(放送作家・映像プロデューサー)

    バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓。電子書籍『異聞 徒然草』シリーズも出版中

  • PHOTO島 颯太

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