日本ドラマ界に一石を投じた『エルピス』大根仁監督が込めた「海外ドラマに勝つヒント」 | FRIDAYデジタル

日本ドラマ界に一石を投じた『エルピス』大根仁監督が込めた「海外ドラマに勝つヒント」

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ドラマ『エルピス』で抜群の演技を見せた主演の長澤まさみ
ドラマ『エルピス』で抜群の演技を見せた主演の長澤まさみ

TV業界内の視聴率が高く、去年大きな注目を集めた連続ドラマ『エルピス―希望、あるいは災い―』(フジテレビ系)。最終回が終わった今も、私たちの心を掴んで離さない。

このドラマは、実際に起きた数々の冤罪事件から着想を得て、朝ドラ『カーネーション』(NHK)などを手掛けた渡辺あやが、権力の闇に従属するばかりの地上波テレビ局の喉元に刃を突き付ける挑戦的な脚本を執筆。このドラマを実現するために、ヒットメーカーとして知られる佐野亜裕美プロデューサーはTBSを退社。関西テレビに転職して昨年の10月期、6年の年月を経て陽の目を見ることとなった。

「最終回では、冤罪事件の真犯人(永山瑛太)を追うVTRが番組『ニュース8』のトップニュースとして報道され、冤罪被害者が釈放される劇的な展開に視聴者は狂喜乱舞。ツイッターでは『エルピス』のワードが見事世界トレンド1位に輝いています。

特にキャスター浅川恵那(長澤まさみ)が、大門雄二(山路和弘)副総理の懐刀としてスタジオに乗り込んできた元恋人でもある斉藤正一(鈴木亮平)に対して、冤罪事件解決に向けて交換条件を突きつけるシーンは鳥肌もの。日頃、あまりドラマを観ない大人の女性たちからも“かっこいい”と称賛する声が殺到しています」(制作会社ディレクター)

しかし、『エルピス』の魅力は、これだけではない。

「今作ではシネマカメラの最高峰『VENICE2』を使うなど、日本でもトップレベルの機材と映画『マチネの終わりに』、『生きてるだけで、愛。』などの撮影を手掛けた重森豊太郎氏たち技術スタッフが集結。

CMやミュージックビデオ、配信ドラマにも負けない映像のクオリティを実現しています。その陰には、“海外ドラマに負けたくない”という大根仁監督の強い思いがありました」(前出・ディレクター)

大根仁といえば『湯けむりスナイパー』(‘09年)、『モテキ』(‘10年)など深夜ドラマでキャリアを積み、‘11年に公開された映画『モテキ』で日本アカデミー賞話題賞、‘15年には映画『バクマン。』で日本アカデミー賞優秀監督賞を受賞。

‘19年の大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(NHK)では演出を手掛けるなどこれまでも話題作を数多く手掛けている。

「ヒットメーカーの佐野Pと渡辺さんが冤罪事件にメスを入れる刺激的な企画を立てていることは、以前から話題になっていました。しかし、メガフォンをとるのが”渡辺あや脚本のドラマをやりたい”と以前から望んでいた大根氏。

しかもその主人公が『モテキ』で大根氏とタッグを組み、日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞した長澤まさみであることがわかると、業界内に衝撃が走りました」(制作会社プロデューサー)

しかし今作、長澤まさみ、鈴木亮平のキャスティングがすんなり決まる中、新人ディレクター岸本拓朗役を巡りキャスティングは難航。様々な若手俳優の名前が上がるも、渡辺は首を縦に振ることはなかった。そんな中、ある俳優の名前が急浮上する。

「たまたま番組『A Syudio +』(TBS系)に出演している眞栄田郷敦を観て、ピンと来た大根氏はすぐに渡辺さんに連絡。同番組を観た渡辺さんから『この人です!』って返事が返って来て、急転直下、岸本役に眞栄田郷敦が起用されました。

決め手は、何と言ってもあの尋常ではない“目力”。今作に抜擢されたおかけで、彼の業界内での評価も今うなぎのぼりです」(前出・プロデューサー)

『エルピス』は、社会派ドラマにも関わらず決して重たいものにはなっていない。むしろポップに仕上がっているのは、眞栄田郷敦の演技力の賜物ではないか。

12月26日に放送を終えた今も、ドラマ『エルピス』は新たな広がりを見せている。

「番組終盤には、佐野Pがツイッターを更新し『冤罪は作られる』フェアが広島蔦屋書店で開催中であることを報告。『素晴らしいフェア。全国に広がって欲しいです』と呟いています。佐野Pの免罪事件への思いは、まだ尽きることがなさそうです」(ワイドショー関係者)

日本のドラマ界に一石を投じたドラマ『エルピス』。このドラマをきっかけに、日本のドラマ界がどう変わっていくのか。行く末を見守りたい。

  • 島右近(放送作家・映像プロデューサー)

    バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓。電子書籍『異聞 徒然草』シリーズも出版中

  • PHOTO菅原 健

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