「大相撲人気復活の鍵は?」今こそ見たい″大横綱″千代の富士の絶対的強さと美しさとヒーロー性
1月22日に千秋楽を迎えた大相撲初場所。東京開催で場内満員を意味する『満員御礼』の垂れ幕が初日から下がったのは、2020年初場所千秋楽以来で、新型コロナ感染拡大後は初めてとなった。その後も満員御礼は続き、全15日間で12日間が大入りに。日本相撲協会も「想定以上だった」と驚くほどの大盛況だった。感染対策の規制緩和の影響もあっただろうが、ここ数年の人気低迷を思うと、大相撲人気復活の兆しが見えたと言っても良いのかもしれない。そんな中、今場所、最も影響力があった力士は誰だったのかというと、実は、意外な力士の名前が挙がっている。
「今場所は125年ぶりに『1横綱1大関』の異例の場所となりましたが、横綱の照ノ富士が休場し、大関の貴景勝が一人で場所を引っ張っていく形となりました。その期待に応え、三度目の優勝を果たしたのは見事でしたが、″人気″という意味においては十両の朝乃山が一番だったかもしれません」(スポーツ紙記者)
朝乃山は2021年5月場所中に相撲協会作成の新型コロナウイルス対応ガイドライン違反が発覚して、6場所の出場停止処分を受けた。今場所、十両に返り咲き、14勝1敗で十両優勝を果たした。
「何よりも素晴らしかったのはその勝ち方です。最近の上位力士は、押し相撲力士ばかりで、押し出しや突き出し、押し切れずに引くという相撲がやたら多い。そんな中、朝乃山は四つに組んでの投げや寄り切りで勝つ相撲を取ります。会場には目の肥えた相撲ファンが多く、十両とはいえ、朝乃山のきれいな相撲、圧倒的な強さに目を奪われました。今後、朝乃山にかかる期待は大きいと思います」(前出・記者)
朝乃山は見た目もイケメン。出場停止処分でケチがついてしまったが、大相撲ファンにとっては、新たな期待の星に違いない。やはり、スポーツ人気のためには、どの競技であっても、圧倒的に強くて、正義感に溢れるような、ヒーローが欠かせないのかもしれない。では、大相撲の世界で、そんなヒーロー像に最も当てはまるのは誰なのか。それは″小さな大横綱″と言われた千代の富士だろう。
1月17日、ニュースサイト『ねとらぼ』が実施した「最強だと思う平成以降の横綱は?」というアンケートの結果を発表。得票率28.6%の「貴乃花」を抑えて、千代の富士が41.5%を獲得して第1位に輝いた。単純に強さだけを比較すれば、貴乃花や白鵬の方が優っていたかもしれないが、コメントには、
「力強い力士の象徴だと思う」
「心技体そろっており、さらに容姿も整っていて強く美しかった」
という声が多く寄せられたという。確かに、幕内優勝回数31回、幕内勝利数807、通算勝利数1045(昭和以降)、連勝記録53(昭和以降)は全て歴代3位で、白鵬が全てにおいて上回っており、「若貴ブーム」で相撲ブームを牽引したという意味においては貴乃花の方が貢献度は高いかもしれない。しかし、
「千代の富士は貴乃花のような相撲エリートではなく、北海道の漁師の家に生まれ、中学校在学中に入門します。身長182センチ、体重は120キロを超える程度で、力士としては小兵と言われるレベルの体格でした。しかも、いくら食べても太れないのです。その結果、肩を脱臼すること11回。だから、ひたすら筋肉を鍛え、鋼のような肉体を作り上げます。それでも、常に怪我との戦いで、幕下まで陥落したこともある。しかし、不屈の精神と鋼の肉体で横綱にまで登りつめた。さらにそこから驚異的に強くなった。相撲界で初の国民栄誉賞を受賞し、引退後もその人気は衰えなかったが、61歳という若さで急逝しました。エピソードの全てが、千代の富士が伝説となるには十分だったかもしれません」(相撲協会関係者)
千代の富士のような横綱は二度と出てこないかもしれないが、「心技体」の揃った圧倒的に四つ相撲で勝てるような強い″ヒーロー″の出現をファンは待っている。











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写真:神崎龍(8枚目)宮嶋茂樹(10枚目)