1987年生まれ。スポーツや経済、事件、海外情勢などを幅広く取材。著書に『コロナ禍を生き抜く タクシー業界サバイバル』。『甲子園を目指せ！ 進学校野球部の飽くなき挑戦』など、構成本も多数

栗田 シメイ

<figure id="attachment_309225" aria-describedby="caption-attachment-309225" style="width: 3414px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="c19aef2e"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/9df49b86176492cb8056e37f5b37a9d3.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-309225" class="wp-caption-text">地元に凱旋した際の１枚。久しぶりの父との再会に笑顔を見せた</figcaption></figure>
「私、石川佳純は、４月のWPPチャンピオンズ・マカオ大会をもちまして現役を引退することを決めました」
卓球女子で五輪３大会連続メダリストの石川佳純（30・全農所属）が１日、自身のインスタグラムを更新し、現役引退を表明した。これよりちょうど１週間前の４月24日の更新では、WTTワールドツアー、中国新郷、マカオ大会が終了し、ベスト16まで勝ち進んだことを笑顔の写真と共に報告していたが、引退への言及はなかった。今回の引退報告では自身の写真はなく、
「最後の試合まで、これまで通りに集中し全力で戦うために、事前にお伝えすることができませんでした。今年に入ってからは大会毎に『この試合が最後になるかもしれない』と思いながら臨み、今、自分の中ではやりきったという思いが強く、引退を決断した次第です」
と文字写真のみで引退を報告した。
「福原愛（34）引退後は、文字通り日本女子の卓球界を支えてきました。ただ’18年以降、大きな国際大会ではどうしても準決勝の壁を破ることができず、国内でも伊藤美誠（22）や平野美宇（23）、早田ひな（22）など若い選手の台頭で苦しい時期が続きました。最後までもがき続けた現役生活だったという印象が強いですね」（スポーツ紙記者）
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東京五輪の代表選考では、２人目をかけて最後まで平野との死闘を繰り広げた。そして手中に収めたシングルス代表。そこに至るまでの「苦しみ抜いた５年間」を石川の父親である公久さんは本誌に語っていた。「フライデーデジタル」’21年８月３日に配信した記事をもとに詳細を振り返る（記事中の年齢・肩書は掲載時のものです）。
「佳純にとって１年の延期はプラスに働いたと思います。代表争いで消耗しきった状態から自分を見つめ直す時間ができたことで、余裕が生まれ、表情も柔らかくなりましたね」
大会前、石川佳純の父・公久さんは、３度目の五輪に臨む娘の微妙な変化を感じ取っていた。
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&#8217;16年のリオ五輪を機に、女子卓球界の勢力図は激変した。
女子卓球界のエースとして’16年まで全日本選手権を３連覇中だった石川だが、’17年からは「絶対的な存在」ではなくなっていった。伊藤美誠、平野美宇、早田ひなら才能豊かな&#8217;00年代生まれの世代が台頭してきたのだ。
前陣速攻の超高速卓球を繰り出す平野や、独創的なスタイルの伊藤の卓球は、時に中国すら凌駕する勢いを見せた。卓球は極めて技術の進化が早い競技でもある。石川は総合力の高さとラリーに特徴を持つ選手といえるが、時代はより速さを追い求めるようになっていく。平野や伊藤が中国選手を相手に金星を挙げていく一方、石川は思うような結果を残せない日々が続いた。
’18年以降の世界選手権やワールドカップ、ＩＴＴＦワールドツアーグランドファイナル、アジアカップといった大きな国際大会で、石川はなかなか準決勝の壁が破れなくなった。中国勢に阻まれることもあれば、中国選手以外に敗れることもあった。国内でも伊藤、早田に破れ全日本選手権で決勝進出を逃した。
「石川の卓球はもう古い」
「中国に勝てるのは若い世代だ」
いつしか、卓球関係者の間でもそんな言葉が交わされるのは珍しい光景ではなくなっていく。石川は自身のスタイルの変更を余儀なくされていた。
’18年頃からは、ミックスゾーンで明らかに納得がいかない表情を浮かべることも増えた。
「自分の思うような卓球が出来なかった」
取材陣にそんな言葉を発するたびに、熾烈な競争が繰り広げられる女子卓球の進化が感じられた。そして、そこに身を置く石川自身の苦悩も伝わってきた。
平野との間で最後の最後までもつれた東京五輪女子シングルスの代表争いは、’19年12月のノースアメリカンＯＰ決勝での直接対決を制し、最終的には石川が代表権を勝ち取った。課題に挙げ強化してきたサービスとレシーブに磨きをかけただけでなく、石川の持ち味である強気な卓球が復活していた。
<div data-friday-nextpage-lead="父・公久さんが語るリオ後の５年間"></div>
公久さんは、リオ五輪後の石川の５年間をこうみている。
「佳純にとってこの５年は非常に浮き沈みが激しい期間だったかと思います。熾烈なシングルス争いを繰り広げてきて、代表になるのがまず厳しかった。本人もよく話していますが、『自分の卓球が古い』と言われてきて、そういうもどかしさを常に感じていた。だからこそ、自分を変えるために苦しい練習と向き合い、ギリギリで踏ん張れた。もしかしたらこれまでの五輪よりも、代表を『勝ち取った』という意識は強いかもしれません」
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今年１月に行われた全日本選手権では、伊藤を下して５年ぶりのシングルス優勝も果たした。喜びを爆発させる石川の表情は、リオ後の鬱積から解き放たれたかのようだった。
「なかなか結果が出ず本当に苦しい中でやってきて、全日本で優勝できたということがあの喜びに繋がったんでしょう。２度の五輪を経て、卓球を広く知ってもらうために自分が前に出ていかないとという感覚もあったようです。特に子供達の卓球教室に出て教えるのが好きみたいで、『子供に教えるのが楽しい』と話していました。
卓球を離れて一人の娘としては、今年の父の日に但馬牛を送ってくれたんです。見たことがないような高級な肉で、これは高いんだろうな、と思って食べました（笑）。そういう周りへの気配りができる子なんです」（公久さん）
「大会前に佳純と話した際に、団体に賭けているという強い想いを感じました。今大会ではダブルスが団体の１試合目になり、勝敗を分ける。だから練習でもそこに時間をかけてきた、と言っていましたね。団体が一番いい色のメダルを目指せる、と。その目標に対して最年長に立場が変わり、振る舞いや責任感にも変化が出てきているとは感じます」
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シングルスでは、惜しくも準々決勝で敗戦した。だが、父に決意を語っていた団体戦ではキャプテンとしてチームを鼓舞する。
「あの娘の性格を一言で表すなら、負けず嫌いでポジティブ。実は一度寝ると次の日には忘れて変貌するようなタイプで、切り替えが早いんです」
８月１日に行われた女子団体初戦のハンガリー戦では、平野や伊藤にベンチからたびたび声をかける石川の姿があった。苦悩を経て進化した石川の献身が、ロンドンの銀、リオの銅を上回るメダル獲得への鍵となるはずだ。
<div data-friday-nextpage-lead="’21年全日本選手権で復活の優勝"></div>
<h3>’21年全日本で復活の優勝</h3>
東京五輪女子シングルスでは、記事にあるように準々決勝で敗れはしたが、女子団体を銀メダルに導き、五輪３大会メダリストとなった。しかし、力の衰えは誰の目にも明らかで、「石川の時代は終わった」と誰もが感じていた’21年の天皇杯・皇后杯2021年全日本選手権大会、女子シングルス決勝戦で伊藤を破り復活優勝。石川は優勝インタビューで涙を流し、20秒間も言葉を詰まらせた。引退の報告を、
「現役生活が長くなればなるほど、周りのサポートがあっての自分だという思いが大きくなりました。指導いただいたコーチ、トレーナー、長時間の練習に付き合ってくれた練習相手の方々、友人、そして家族。同じ気持ちで戦ってくれた私のチームに、心からの感謝を伝えたいです」
という言葉で締めた石川。卓球の普及に多大なる影響を与えた石川の功績に我々も心から感謝の言葉を送りたい。
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<figure id="attachment_197222" aria-describedby="caption-attachment-197222" style="width: 3584px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="fe57159a"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2021/08/9e321a102ce83e817537492c20d9b210.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-197222" class="wp-caption-text">小学生の大会で優勝を飾り地元のチームメイトと記念撮影。中央が石川</figcaption></figure>
<figure id="attachment_197223" aria-describedby="caption-attachment-197223" style="width: 3430px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="ad3e9e2c"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2021/08/39f229abb9125114c2e0fe52f3c623df.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-197223" class="wp-caption-text">７歳頃から卓球を始めた石川。小学校高学年のときには福岡大卓球部出身の父・公久さんと互角の実力になっていたという</figcaption></figure>
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<figure id="attachment_197225" aria-describedby="caption-attachment-197225" style="width: 2490px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="aef7d7c6"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2021/08/b3c82ecea7cad2781a8320815e295762.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-197225" class="wp-caption-text">両親、祖父母と３歳のときに撮った七五三の記念写真</figcaption></figure>
<figure id="attachment_309245" aria-describedby="caption-attachment-309245" style="width: 2362px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="a3fde989"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/4dda85e2e03789f6d239a53725df5fbb.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-309245" class="wp-caption-text">リオ五輪メダリストによる銀座パレードの石川佳純。手には銅メダルを持っている（’16年10月28日号）</figcaption></figure>
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栗田シメイ（再録記事）

鬼怒川毅（５枚目）

地元に凱旋した際の１枚。久しぶりの父との再会に笑顔を見せた 「私、石川佳純は、４月のWPPチャンピオンズ・マカオ大会をもちまして現役を引退することを決めました」 卓球女子で五輪３大会連続メダリストの石

石川佳純が引退　父親が本誌に語っていた「東京五輪」団体金メダル獲得目指し「苦しみ抜いた５年間」

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