狙いは若年層 日テレが独自路線で切り拓く「ドラマの未来」

TVドラマ界"不毛の2019年" 総世帯視聴率・20年間右肩下がりの窮状から脱するテレビ局はあるのか?

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田中圭と原田知世が主演の務めた『あなたの番です』は、最終回で視聴率20%に肉薄した  撮影:齋藤雅昭

TVドラマ界の2019年は、人気シリーズを除き、世帯視聴率15%超のヒットドラマがない“不毛の1年”となった。

HUT(総世帯視聴率)は、この20年で右肩下がりが続く。まとめ撮りした番組を自分の好みの記事に見るタイムシフト視聴が増える中、明らかにドラマはリアルタイムで見られなくなっている。結果として広告収入も、減少が続いている。

そんな中にあり日本テレビは、ドラマ制作で新たな取組を連発し、広告費対策に挑戦している。

各局ドラマの状況

2019年の民放ドラマでは、『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)が18.5%でトップ。

他に『相棒』『科捜研の女』『緊急取調室』(以上、全てテレビ朝日系)など、シリーズドラマが上位を独占し、新作ドラマでは『グランメゾン東京』(TBS系)、『監察医 朝顔』(フジテレビ系)、『ラジエーションハウス』(フジテレビ系)の3作が12%台にとどまった。

15%以上のドラマが年に10本以上あった10年前とは隔世の感がある。

そして日テレのドラマで二桁に届いたのは、『家売るオンナの逆襲』『3年A組』『あなたの番です 反撃編』『同期のサクラ』の4本のみ。いずれも12%未満で、大ヒットにはほど遠い状況だった。

【特集】TVドラマ界”不毛の2019年” 総世帯視聴率・20年間右肩下がりの窮状から脱するテレビ局はあるのか?

⇒【第1回】狙いは若年層 日テレが独自路線で切り拓く「ドラマの未来」 を読む
⇒【第2回】現場の熱量で話題作を生むTBSドラマは「低打率でも長打あり」 を読む

⇒【第3回】フジテレビ:ドラマの明日はどっちだ! 高齢者狙い?若年層回帰? を読む

⇒【第4回】テレビ朝日:視聴率トップの副作用 テレ朝ドラマは高齢者偏重を見直せるか? を読む

各局はGP帯(夜7~11時)に週3本のドラマを放送している。

それぞれの局のクール毎のドラマ平均視聴率で比べると、トップはやはりテレビ朝日(図1)。過去3年では、17年12.9%→18年13.3%→19年13.0%と13%前後で安定している。人気シリーズを並べ、中高年の固定客を捕まえる作戦で上手くまわしている。

(図1)各局ドラマの世帯視聴率推移

2位はTBS。

ただし17~18年は年間平均で二桁にのせていたが、19年は一桁に落ちてしまった。やはりドラマのリアルタイム視聴受難の時代に、“ドラマのTBS”も苦戦を強いられている。

同じく日テレも世帯視聴率では苦労している。

3年連続で二桁に届いていない。特に16~17年と9%台だったのが、18年に8%台前半まで落ち、19年は何とか9%台後半に戻したところだ。

ドラマ枠毎の実績

日テレのドラマを、枠毎に見てみよう。

まず女性をターゲットとした水曜ドラマ

この10年では、『Mother』(10年4月期)、『家政婦のミタ』(11年10月期)、『Woman』(13年7月期)、『明日、ママがいない』(14年1月期)、『花咲舞がだまってない』(14年4月期)、『家売るオンナ』(16年7月期)、『奥様は、取り扱い注意』(17年10月期)、『同期のサクラ』(19年10月期)など、話題作がたくさんあった。

世帯視聴率でみると、14~15年は年間平均が14%前後とよく見られていた。

ところが16~17年は11%台、18年は8%台まで低迷し、19年は何とか二桁に戻した格好だ。

(図2)日テレ各ドラマ枠の世帯視聴率推移

土曜ドラマ枠は、ローティーンと親の随伴視聴を狙ったファミリー路線ドラマが長く放送されていた。

『ごくせん』(第1期:02年4月期)、『女王の教室』(05年7月期)、『怪物くん』(10年4月期)、『妖怪人間ベム』(11年10月期)、『ど根性ガエル』(15年7月期)などだ。

ところが17年4月から、土曜夜9時の放送を10時に移動させた。ローティーン狙いを改め、ハイティーンや1層(20~34歳)を視野に入れたドラマ制作に路線変更したのである。

ただし世帯視聴率が劇的に改善されたわけではない。15~16年の年間8%台が、17年以降9%台でじわじわ上昇している。ターゲット層の変更で、世帯視聴率にわずかにプラス効果が見られるが、実際にはT層(13~19歳)や1層の上昇が広告営業的には意味がある。

さらに15年4月に新設した日曜夜10時30分からのドラマも、若年層対策として効果をあげている。

当初は大人の男が日曜遅い時間に見るドラマをめざしたが、この1年T層と1層を重視した結果、世帯も7%台から10%近くに改善した。そして最も大きいのは、若年視聴者に見てもらえるようになり、広告営業に大きく貢献するようになった点である。

世帯から個人視聴率へ

実は同局は今年から、視聴率の社内指標を世帯から個人へ改めた。そしてコアターゲットをT層から2層(35~49歳)まで、つまり13歳から49歳と定めた。

同局は決算報告の中で、「クライアントニーズが高い視聴者層の獲得」と明記した。要はスポンサーがCMを見せたい若年層を集められる番組制作に注力するようになったのである。

例えば18年秋の『今日から俺は』がその第一歩。

近年、多くの局が敬遠するようになった学園ドラマだ。

テレビの視聴者は過去10年で、50歳以上の比率が増え若年層の比率が減少していた。少子高齢化の影響が如実に表れていたのである。

このため多くのテレビ局は、ボリュームの大きい中高年に受ける番組を作るようになっていた。世帯視聴率対策のためで、テレ朝の人気シリーズドラマはその典型だ。

ところがこれでは、広告主のニーズと合致しない。

17年以降テレビ広告費が減少を初め、特に19年は大きくマイナスとなり始めている。明らかに原因の一つは、テレビ視聴者の高齢化にある。

日テレはこの状況を変えるべく、まず学園ドラマを3期続けて制作した。

『今日から俺は』に続き、19年1月からの『3年A組』と、19年4月からの『俺のスカート、どこ行った?』だ。同じ局が3クール連続で学園ドラマを制作したのは、今世紀になって初めてのこと。世帯より若年層個人を重視する同局ならではの挑戦だ。

試みは他にもある。

日曜ドラマの枠では、4月と7月の2クール連続ドラマを制作した。『あなたの番です』だ。

放送が始まった当初は世帯視聴率が低迷し、「9月まで持たない」など失敗を喧伝する記事がたくさん出た。ところが7月以降で大ブレークし、7月からの『反撃編』で大きな成果をおさめた。

他にも、土曜ドラマ『俺の話は長い』での“1時間で2話”という挑戦。

若年層の中には、1時間1話を長いと感ずる人も少なくない。短時間で1話が終わらせることで、飽きるのを防ごうとした。お茶の間ドラマで制作費を抑えた割に、8%台とまずまずの数字を獲得した。

つまり世帯がイマ一つでも、FT(女性13~19歳)や1層(男女20~34歳)でじゅうぶんな実績を上げられるようになった。 スポンサー対策は及第点と言えよう。

テレビで若者復権!

世帯から個人、特にコアターゲット重視に変更した成果は、日曜ドラマでも如実に表れている。

関東で2000世帯5000人の視聴動向を調べるスイッチ・メディア・ラボのデータでは、若年層にヒットすることで世帯視聴率がブレークする現象が、昨秋の『今日から俺は』以降、『3年A組』や『あなたの番です』で見られるようになっている。

特に個人視聴率で、その成果が明確だ。

3+層(男女65歳以上)の数字はあまり動いていない。ところがT層や1層では、大きく跳ね上がるクールが増えている。そして親子一緒に見る家庭も少なくないせいか、2層(男女35~49歳)や3-層(50~64歳)でも、若年層に連動するように勃興している。

(図3)日テレ日曜ドラマの視聴率推移

他局のドラマは、若年層の数字を落とす傾向にある。

そんな中にあり、世帯から個人重視に路線転換したドラマ制作を試み、テレビに若者を取り戻そうとする日テレ。めざす未来が他と異なりだした同局が、どこまで行くのか、2020年は楽しみな1年となりそうだ。

【特集】TVドラマ界”不毛の2019年” 総世帯視聴率・20年間右肩下がりの窮状から脱するテレビ局はあるのか?

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  • 鈴木祐司

    (すずきゆうじ)メディア・アナリスト。1958年愛知県出身。NHKを経て、2014年より次世代メディア研究所代表。デジタル化が進む中で、メディアがどう変貌するかを取材・分析。著作には「放送十五講」(2011年、共著)、「メディアの将来を探る」(2014年、共著)。

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