視聴率トップの副作用 テレ朝ドラマは高齢者偏重を見直せるか?

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2019年の連続ドラマは、今年もテレビ朝日が上位を占めた。

『ドクターX~外科医・大門未知子~』(第6期)はぶっちぎりの18.5%。
『相棒』は、season16の19年放送分もseason17も15%台、『緊急取調室』(3rd SEASON)が13.2%、そして4月から1年放送予定の『科捜研の女』(SEASON 19)が今のところ12%弱。年間平均13%超は、いずれも一桁に沈む他局の追随を許さない圧倒ぶりだ。

店を出て広尾界隈を歩く米倉涼子。この日のファッションは全身黒だったが、スレンダーな体躯によく似合っていた (『FRIDAY』2019年5月31日号より  撮影:原一平)

世帯視聴率でかくも盤石に見えるテレ朝ドラマだが、致命的な死角もある。視聴者の大半が高齢者で、ドラマとして成長性が見えない点だ。

他局を圧倒!

テレ朝ドラマの世帯視聴率の圧倒ぶりは、凄いの一言に尽きる。

過去3年を他局と比較すると、日本テレビ・TBS・フジテレビの3局は、じりじり数字を落としている。

ドラマ・映画・アニメなどは、リアルタイムではなく、自分がじっくり見られるタイムシフト視聴が増えている。そもそもテレビのHUT(総世帯視聴率)も下がっている。この流れに抗することが出来ず、長期低落傾向に歯止めがかけられずにいる(図1)。

各局ドラマの世帯視聴率推移

ところがテレ朝ドラマだけは例外だ。
15年以降、じわじわ数字を上げ続けている。破壊力バツグンの『ドクターX』が放送される秋クールこそ少しずつ数字を下げているが、課題の春と夏クールは着実に視聴率を上げている。

最大の推進力は、弱点を潰していく力と言えよう。
例えば水曜9時枠。秋と冬クールに『相棒』が放送されると、視聴率は安定的に15%前後をとる。ところが春と夏クールが弱点だった。そこを『刑事7人』や、『警視庁捜査一課9係』の続編ドラマ『特捜9』をシリーズ化させることで、少しずつ数字を持ち上げている(図2)。

テレ朝各ドラマ枠の世帯視聴率推移

木曜8時枠も同様だ。
テレ朝最長寿ドラマ『科捜研の女』(現在SEASON 19)の他に、『警視庁・捜査一課長』『遺留捜査』を長寿ドラマ化することで、数字を安定させようとしている。

そして本来自由枠の木曜9時も、『ドクターX』や『緊急取調室』がシリーズ化している。
他にも『未解決の女 警視庁文書捜査官』『リーガルV〜元弁護士・小鳥遊翔子〜』など、シリーズ化を目論んでいると思われるドラマが時々制作されている。

テレ朝“勝利の方程式”

テレ朝の強さの前提には、他3局と全くことなる戦略がある。

まずラインナップ。水曜9時は1987年から続く刑事ドラマ枠木曜夜8時は1999年からのミステリー枠。そして唯一木曜夜9時枠だけが、クール毎にテーマが変わる一般ドラマ枠となっている。

枠を固定しているのは、同じジャンルで一貫させることで、人々の視聴習慣を定着させ得やすくする作戦だ。制作する側にとっても、企画の目的が明確で、テーマの絞り込みや番組構成の取捨選択がしやすい。つまり番組の水準を保ちやすくなるという。

しかもシリーズだが、1話完結に徹している点がミソ。途中の回を見そびれた人も、その後の回から戻って来ても、わかるようにしてある。視聴率を高く維持するためである。

長寿ドラマが多い点も特徴だ。
例えば、02年に始まった『相棒』は2クール連続を基本とし、今年10月にシーズン18に突入している。それより前の1999年にスタートした『科捜研の女』も、既に19シリーズだ。高い視聴率を獲り続ける『ドクターX』も第6期まで来た。

長寿ドラマは第2シリーズ以降、既に認知度が高いので、新クール立ち上げ時の宣伝が楽というメリットがある。
ターゲットとなる視聴層も見えているので、時代の変化に合わせ内容の微調整も容易だ。大枠がかっちり決まっているので、新たなシナリオライターや監督に挑戦させ易く、ドラマの質を保ちつつ、制作者・スタッフの育成・新陳代謝の促進がし易いという利点もある。

もう一つ、同局には秘密兵器がある。平日午後に編成された3時間のドラマ再放枠である。
1日約3本、一週間で10~15本もの再放送をしている。
この再放枠で、新シリーズを放送する際には、過去の再放送が屈強な番組宣伝になる。過去作を直前に大量に再放送し、打率を高めているのである。

“大半が高齢者”のプラスとマイナス

シリーズドラマを増やし、午後に再放送することで、テレ朝ドラマは安定した視聴率を維持している。
同時に視聴者の過半が高齢者となって来ている。例えば圧倒的な人気の『ドクターX』。当初最もよく見ていた層は3-(男女50~64歳)だった。
ところが16年秋の4期で3-層を3+層(男女65歳以上)が逆転し、17年秋の5期では3+層が完全にメインとなった。

では、視聴者が高齢者ばかりではダメなのか。
日テレは視聴率の社内指標を世帯から個人へ改め、コアターゲットをT層から2層(35~49歳)まで、つまり13歳から49歳と定めた。

19年の日テレを代表する『3年A組』『あなたの番です』を、テレ朝を代表する『ドクターX』と『相棒』で、視聴者層を比較してみよう(図3)。

テレビ朝日と日本テレビの視聴者の違い

グラフにある通り、世帯視聴率ではテレ朝2ドラマが、日テレを圧倒している。
ところがこの差は、65歳以上の高齢者が圧倒的に多いために出来ている。そして50~64歳や主婦の間では互角だが、49歳以下では日テレが勝る。
特にC層(4~12歳)やT層(13~19歳)では、2~3倍の差が出来ている。

実は若年層によく見られる日テレは、その親世代のF2(女性35~49歳)やF3-(女性50~64歳)の随伴視聴もゲットしている。
この家族一緒で見る番組が、広告主にとってCMを出稿したい番組となっている。

テレビの広告市況は、17~18年にマイナスに転じた。
この2年で言えば、日テレはそれほど広告収入が減っていない。ところがテレ朝は、早くから大きく痛み始めていた。
視聴者層の違いが、広告収入に反映していた可能性が高い。

長所は短所

シリーズ化・1話完結・高齢者の支持などの強みも、どうやら副作用がありそうだ。

インテージ「Media Gauge」は、その落とし穴をデータで示している。
19年で視聴率が高かったテレ朝4ドラマの、毎話の序盤と終盤の接触率を比べると、『ドクターX』は毎話で序盤より終盤が極端に高くなっている。しかも次の回の序盤は大きく下がっており、前回で上昇した分がほぼ消えてしまっている(図4)。

テレ朝ドラマの接触率推移 -各話の冒頭とラストの比較-

実は『ドクターX』だけじゃなく、他の3ドラマも似た傾向にある。
どの回を見ても理解できるような1話完結のストーリー展開。長寿シリーズ化による同じパターンの中で設定や展開を少しずつ変える手法。これらは数字を獲りやすいというプラスもあるが、視聴者に集中して見てもらえないという落とし穴がありそうだ。

1話だけ取り上げると、序盤より終盤が数字を大きく上げており、視聴者に逃げられない良い番組と見えかねない。
ところがテレ朝では、視聴者が序盤や前半の途中から見始めているとは限らない。中盤やひどい場合は後半でも流入者が少なくない。
つまりどこから見てもだいたい分かる内容なので、裏番組をある程度みてから、あるいは用事を済ませてから、ゆっくり流入してくる視聴者も多そうだ。逆にいえば「見たい」気持ちがあまり強くない、集中してみていない視聴者が一定層を占めている可能性が高い。

今やターゲット層の人数が同じなら、世帯視聴率は低い方が良いとまで言うスポンサーも出てきている。
自社製品のターゲット層が明確なので、関係のない層の視聴率がいたずらに高く、広告費が高くなるのを避けたいという意向だ。こうした広告主の意識の変化は、今回一挙に視聴率が下落した放送局にとって、看過できない重大問題だ。

数年前までの勝利の方程式を、テレ朝は早急に見直さなければならないだろう。
まだニーズは高い作品群なので、うまく微調整して、広告主にも視聴者にも支持される一級のエンターテインメントを出し続けてもらいたい。

【特集】TVドラマ界”不毛の2019年” 総世帯視聴率・20年間右肩下がりの窮状から脱するテレビ局はあるのか?

⇒【第1回】狙いは若年層 日テレが独自路線で切り拓く「ドラマの未来」 を読む
⇒【第2回】現場の熱量で話題作を生むTBSドラマは「低打率でも長打あり」 を読む

⇒【第3回】フジテレビ:ドラマの明日はどっちだ! 高齢者狙い?若年層回帰? を読む

⇒【第4回】テレビ朝日:視聴率トップの副作用 テレ朝ドラマは高齢者偏重を見直せるか? を読む

  • 鈴木祐司

    (すずきゆうじ)メディア・アナリスト。1958年愛知県出身。NHKを経て、2014年より次世代メディア研究所代表。デジタル化が進む中で、メディアがどう変貌するかを取材・分析。著作には「放送十五講」(2011年、共著)、「メディアの将来を探る」(2014年、共著)。

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