フジテレビ:ドラマの明日はどっちだ! 高齢者狙い?若年層回帰?

TVドラマ界"不毛の2019年" 総世帯視聴率・20年間右肩下がりの窮状から脱するテレビ局はあるのか?

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「大好評のまま終えて大きな喜び」(19年6月会見)
「大変好評のうちに終えられた」(19年9月会見)

就任後にフジテレビの遠藤龍之介社長が、月9『ラジエーションハウス』(4月クール)や『監察医 朝顔』(7月クール)を評して発した言葉だ。

仕事を終え、自宅へと帰り道を急ぐ上野樹里  撮影:島颯太

確かに長く低迷していた月9は、この1年で世帯視聴率が改善している。明るい兆しであることは否定できないが、個人視聴率でみると不安も残る。さらに他のドラマ枠を視聴データで分析すると、課題も浮かび上がる。

同局ドラマ戦略を考察してみた。

【特集】TVドラマ界”不毛の2019年” 総世帯視聴率・20年間右肩下がりの窮状から脱するテレビ局はあるのか?

⇒【第1回】狙いは若年層 日テレが独自路線で切り拓く「ドラマの未来」 を読む
⇒【第2回】現場の熱量で話題作を生むTBSドラマは「低打率でも長打あり」 を読む

⇒【第3回】フジテレビ:ドラマの明日はどっちだ! 高齢者狙い?若年層回帰? を読む

⇒【第4回】テレビ朝日:視聴率トップの副作用 テレ朝ドラマは高齢者偏重を見直せるか? を読む

長期低落傾向に終止符!?

フジのドラマを代表するのは月9だ。
90年代から2000年代にかけて、トレンディドラマで一世を風靡した。平成のテレビを象徴する大ヒット番組だったのである。

都会に生きる男女の恋愛やトレンドを描くドラマで、バブル景気で夢を膨らませた若い女性を虜にした。
主役は旬な男優や女優。役柄は広告代理店・テレビ局・デザイナーなど、いわゆる“カタカナ職業”。そして話題のスポット、ファッション、ライフスタイルなどをドラマに反映させる“トレンディ”路線に徹した演出が大ヒットにつながった。

フジ月9の年間視聴率推移

最初に注目されたのは、1991年の『東京ラブストーリー』(織田裕二・鈴木保奈美)と『101回目のプロポーズ』(浅野温子・武田鉄矢)。同枠の年間平均視聴率は21.5%となった。
続く93年、『ひとつ屋根の下』(江口洋介)で28.4%、『あすなろ白書』(石田ひかり・筒井道隆・木村拓哉)が27%。年間平均は23.2%に跳ね上がった。
さらに97年、27%の『ひとつ屋根の下2』と30.8%の『ラブジェネレーション』(木村拓哉)で、年間25%超を達成した。年間平均としては空前絶後で、月9の全盛期となった。

ところが勢いは、次第に衰える。
2002年に15%を切った。09年以降は15%未満が普通となり、16年には遂に一桁という不名誉な記録を出してしまった。

フジ月9の視聴率推移(クール毎)

その後もしばらく、一桁から脱出できずにいた。
ところが去年夏以降、『絶対零度』(沢村一樹)、『SUITS』(織田裕二)、『トレース』(錦戸亮)と二桁を回復し、今年春クール『ラジハ』と夏クール『朝顔』で12%台の大台にまで戻した。

就任直後の遠藤社長が、定例会見で嬉しそうに語った通り、長期低落傾向にあったフジにあって、久々の明るい話題となったのである。

月9のテレ朝化!?

ただし最近の月9の好調ぶりには、課題もある。
“月9のテレ朝化”とも言うべき、視聴者層の高齢化だ。

各ドラマの男女年層別視聴率

直近で二桁に乗せた5本は、刑事・弁護士・医療など、数字のとれる鉄板ネタだった。特に12.6%と過去2年で最高となった『朝顔』(19年夏・上野樹里主演)は、刑事モノと医療モノを足して2で割った作りだ。

かくして月9は4年ぶりに年間二桁に復帰したが、かつての煌びやかなトレンディドラマのテイストは大きく失われていた。

この方針変更は、過去5年を振り返ると、大きく3期に分かれる。
全盛期のトレンディ路線を踏襲し“恋愛モノ”を並べた時期、低迷脱出を狙った模索期、そして数字重視で鉄板ネタを並べたこの直近6クールだ。

この間の変化を個人視聴率で見ると、何が起こっていたのか内実が見えてくる。
17年夏の山下智久主演『コード・ブルー』は、人気シリーズの3本目でもあり、例外として頂きたい。すると18年冬までが世帯視聴率の下降期で、その後に反転攻勢が始まるという大きな流れが浮かあがる。

ところが個人視聴率でみると、風景は全く異なる。
“恋愛モノ”を並べた16年冬までは、F1~2(女性20~49歳)が高く、F3(女性50歳以上)はさほど高くない。対照的なのが過去6クール。鉄板ネタを並べたため、世帯こそ高いが、若年女性の個人視聴率は「恋愛モノ中心期」を超えていない。

では世帯視聴率は、なぜ上がったのか。

実はF3が最悪期の2倍ほどに跳ね上がり、世帯全体をけん引した。
今のテレビの視聴者は、3層が6割強を占めている。この10年でみると、実際の人口動態以上に、テレビ視聴者の高齢化が進んでいる。高齢者の人口増と、高齢者ほどテレビを長時間見るからである。
逆に若年層は、テレビ離れで絶対数が減ると同時に、一人当たりの視聴時間が減少している。

テレビ視聴者の極端な高齢化は、こうして進んでいた。
これを19年夏クールの日テレとテレ朝の比較で分析して見よう。個人視聴率を指数化して表現したグラフだが、15年夏の『恋仲』から19年夏『朝顔』までで、若年層が急減し3層が急増している。『恋仲』に近いのは日テレの19年夏クールの3本平均で、『朝顔』はテレ朝に近い。

テレ朝は、刑事・弁護士・医療などをテーマに、中高年を固定客として取り込み、世帯視聴率で高値安定を保っている。
最近の月9は、明らかにテレ朝路線で世帯視聴率を上げている。しかしこの作戦は、広告収入急落という状況で営業の苦戦が避けられない。

テレビ朝日 快調『ドクターX』はジリ貧! “勝利の方程式”に金属疲労!? を読む

月9全盛時代はF1のフジと言われ、視聴率以上に高い広告収入を得ていた。
今、その地位は日テレに奪われた。この10年あまりで広告収入を4割近く失ったフジは、世帯だけでなく、若年層の数字も上げて行かなければならないという課題を抱えている。

視聴データで読むフジドラマの課題

インテージ「Media Gauge」のデータを分析すると、フジドラマの課題が浮かび上がる。

フジ・ドラマの接触率率推移 -各クール最終回の冒頭から最後まで-

TBSドラマの多くは、放送が始まった後の接触率が右肩上りだった。途中の流出者が少なく、逆に流入者がその後も見続けたからである。
ドラマの内容や展開が、多くの人を惹きつけていた証拠だった。

ところがフジのドラマでは、そうしたパターンが多くない。
通常ラストが盛り上がる最終回の接触率推移を見ても、『ラジエーションハウス』は想定通り上がっていた。ところが『監察医 朝顔』の上昇率はごくわずか。『ルパンの娘』『パーフェクト・ワールド』もほぼ横ばいに留まった。
そして『モトカレマニア』に至っては、最終回なのに途中で離脱する人が少なくなかった。

実はクールの途中回で見ると、流出の多いドラマが少なくない。
『後妻業』(冬・平均6.3%)、『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』(冬・6.8%)、『ストロベリーナイト・サーガ』(春・6.7%)、『TWO WEEKS』(夏・6.6%)、『モトカレマニア』(秋・4.5%)などだ。
世帯視聴率でも惨敗しているが、冒頭あるいは番組途中での流出者が大量に出ている。明らかに設定やストーリー展開に問題があったと言わざるを得ない。

以上で明らかなように、月9の低迷をフジはテレ朝化によって世帯視聴率を整えようとした。
ところが若年層を失っては、日テレの対策に逆行し、営業で苦しむことになる。またドラマ本来の設定や展開を良くしないと、TBSのような長打は出ない。

一件改善したかのように見えた19年のフジドラマ。
まだまだ根本治療は遠いと言わざるを得ない。鉄板ネタで表面上の世帯視聴率を糊塗せず、ドラマの内容で多くの人を魅了する力を取り戻してもらいたい。
トレンディドラマの頃の熱気を、令和ならではの仕立てで見せてくれる日を待っている。

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  • 鈴木祐司(すずきゆうじ)

    メディア・アナリスト。1958年愛知県出身。NHKを経て、2014年より次世代メディア研究所代表。デジタル化が進む中で、メディアがどう変貌するかを取材・分析。著作には「放送十五講」(2011年、共著)、「メディアの将来を探る」(2014年、共著)。

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