スギちゃんの「ワイルドだろぉ」は不安から生まれた
流行語で振り返る平成
今年の流行語年間大賞は、カーリング女子日本代表の「そだねー」に決定した。
平成に入ってから30年、流行語はその年々の世相を反映してきた。
今回は、12年に流行語年間大賞を受賞したスギちゃんに当時を振り返ってもらった。
「以前は田原俊彦さんの『抱きしめてTONIGHT』の曲に乗せてネタを披露する、『アイドル・スギちゃん』というキャラクターで売っていたんです。そこそこウケてはいましたが、インパクトが弱く違うキャラに方向転換できないか悩んでいました。考えついたのがワイルドネタです。本当は『ワイルドだろ!』と断定するつもりだったんですが、ライブでは不安になり『ワイルドだろう?』とお客さんに問いかける形になってしまいました。それが良かった。ワイルドなのに少し弱気なのが大ウケして、以後は語尾を上げるようになったんです。断定形だったら流行語にならなかったでしょう」
こう語るのは’12年に「ワイルドだろぉ」で流行語年間大賞を受賞した、お笑いタレントのスギちゃん(45)だ。転機は前年末の改名にあったという。
「当時は本名の『杉山えいじ』で活動していたんですが、後輩の占い師・ゲッターズ飯田のアドバイスで『スギちゃん』に名前を変えたんです。すると’12年になり『爆笑レッドカーペット』や『R―1ぐらんぷり』(いずれもフジテレビ系)などで、立て続けに賞をもらった。38歳になって、ブレイクできました」
好事魔多し。同年9月には、絶好調のスギちゃんに悲劇が襲う。
「テレビの水泳10m高飛び込み企画で、胸椎を骨折したんです。せっかくブレイクしたのに全治3ヵ月の大ケガ……。自分が出るハズだった番組に、代理の後輩芸人が出演してウケているんです。なんてツイていないんだと、病院のベッドでずっと泣いていました」
ただ、このケガが吉と出た。
「事故はNHKでも取り上げられ、『ミヤネ屋』(日本テレビ系)は入院中の様子を密着取材してくれたんです。おかげで復帰後は、地方に営業に出てもお年寄りが声をかけてくるようになりました。『ケガに負けずに頑張ってね』と。お笑い好きな人たちだけでなく、幅広い世代に認知されるようになったんです。流行語大賞に決まった時は夢心地でしたね。他の受賞者の方々全員と、写真を撮りまくったのを覚えています」
ワイルドはスギちゃんの代名詞。受賞後は冬のアラスカのロケでも袖なし、半ズボンの独自スタイルを貫いている。
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撮影:会田園(上)写真:時事通信社(下)