民放ドラマの栄枯盛衰 トレンディ〜極端キャラなど多様性の30年

テレビ平成30年史〔3〕鈴木祐司(メディア・アナリスト)

  • Facebook シェアボタン
  • Twitter シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン

平成の30年間は、民放ドラマが多様性にむかった時代でもあった。

まず幕開けは、フジテレビなどのトレンディドラマで、華やかだった。

続いて強烈なキャラクターで攻める日本テレビのドラマ群が登場した。さらに平成の後半には、長寿シリーズを開拓したテレビ朝日などの新たな路線が確立された。

そしてデジタル録画機の普及などで、ドラマのリアルタイム視聴率は激減し、タイムシフト視聴が目立つようになった。これと共にドラマ制作のビジネスモデルが変わり始めた。

平成30年のテレビ史を「民放ドラマの変化」という観点で振り返る。

テレビ平成30年史〔2天災・事件続発の平成 テレビの「緊急報道」はITで進化した! を読む

平成テレビ30年史〔4〕朝ドラと大河ドラマ「平成2大改革」が明暗を分けたNHK二枚看板 を読む

平成テレビ30年史〔1〕〜〔15〕わかりやすいインデックス を読む

トレンディドラマの栄枯盛衰

平成はトレンディドラマの勃興の中で始まった。

都会に生きる男女の恋愛やトレンドを描く現代ドラマ、これがトレンディドラマの定義のようだ。ターゲット層は、バブル景気で夢を膨らませた若い女性たち。

主役たちは、放送当時の旬な男優や女優。役柄は広告代理店・テレビ局・デザイナーなど、いわゆる“カタカナ職業”が多かった。話題のスポット、ファッション、アイテム、ライフスタイルをドラマに反映させる点が“トレンディ”ということらしい。

先鞭をつけたのはTBS。明石家さんまや大竹しのぶなどがアドリブ的セリフで強烈な印象を放った『男女7人夏物語』(1986年)、『男女7人秋物語』(87年)だった。

ところがフジテレビは、業界ドラマや学園ドラマを量産することで巻き返していく。

平成3年(91年)にはフジ月9枠で『東京ラブストーリー』(織田裕二・鈴木保奈美)と『101回目のプロポーズ』(浅野温子・武田鉄矢)が大ヒット。同枠の年間平均視聴率は21.5%となった。

平成5年(93年)は『ひとつ屋根の下』(江口洋介)が28.4%、『あすなろ白書』(石田ひかり・筒井道隆・木村拓哉)が27%。年間平均は23.2%に跳ね上がった。

さらに平成9年(97年)には、27%の『ひとつ屋根の下2』と30.8%の『ラブジェネレーション』(木村拓哉)が並んだ。空前絶後となる年間平均25%超を達成したのである。月9を中心に、トレンディドラマが全盛期を迎えていた。

しかし勢いは、次第に衰え始める。

月9歴代最高の『HERO』(木村拓哉)34.3%があった2001年こそ、年間平均は20%を超えた。ところが翌年は、初めて15%を切ってしまった。

それでもクール平均が20%を超えた『プライド』(木村拓哉:04年)、『エンジン』(木村拓哉:05年)、『西遊記』(香取慎吾:06年)、『ガリレオ』(福山雅治:07年)などにより、04~08年は年間平均15%超と気を吐いた。ところが09年以降は15%未満が普通となり、16年には遂に年間平均で一桁という不名誉な記録を出してしまった。

その後も17~18年は、年間平均で一桁から脱出できずにいる。

去年夏以降、『絶対零度』(沢村一樹)、『SUITS』(織田裕二)、『トレース』(錦戸亮)と二桁を回復しつつある。ところが刑事モノあるいは弁護士モノで攻めた結果だ。

旬な美男美女、先端を行くカタカナ職業、話題のスポットやファッションで攻めたトレンディドラマのテイストは、今の月9からは完全に影をひそめてしまった。

極端なキャラクター

フジが打ち立てたトレンディドラマ路線ほど明確な定義は難しいものの、日テレのドラマもこの30年で一つの特徴を打ち出してきた。

その第一歩は、フジが82年から続けて来た12年連続三冠王を日テレが破った94年放送の『家なき子』(安達祐実)。

家庭内暴力を受ける少女が、理不尽と困難に負けずに生きていく様を描いた物語だった。「同情するなら金をくれ!」という主人公のセリフが、新語・流行語大賞に選ばれるほど強烈なインパクトを持った。

当時、視聴率のとれる人気俳優のブッキングが困難だった日テレは、極端なキャラクターと企画力で、トレンディドラマのフジに対抗しようとしたという。トレンディドラマほどの量産には至らなかったが、着実に一つの路線として視聴者の記憶に残って行った。

圧倒的なパワーを炸裂させる教師が主人公の『ごくせん』(仲間由紀恵:02・05・08年)や『女王の教室』(天海祐希・05年)、職場で異彩を放つ『ハケンの品格』(篠原涼子:07年)や『花咲舞が黙ってない』(杏:14・15年)。

そしてこの路線の到達点が『家政婦のミタ』(松嶋菜々子:11年)だろう。常に無表情でミステリアスな家政婦が主人公で、最終回の40.0%は高視聴率ドラマの歴代4位となる大記録だ。

この路線は『家売るオンナ』(北川景子:16年)や今年冬クールの『家売るオンナの逆襲』に踏襲されている。

日テレはバラエティ色を強めるなど演出を進化させている。それでも強烈な個性、特に感情をあまり表出させない女性の主人公が活躍する物語が、得意パターンになっている。

男女の恋愛を夢見る女から戦う女へとシフトチェンジすることで、日テレはトレンディドラマとの差別化を果たしたと言えよう。

ヒットのシリーズ化

ヒット作のシリーズ化も、平成ドラマで特筆すべきパターン。

まずはテレ朝の刑事モノ・ミステリーモノ。同局はシリーズ化で固定客を囲い込み、視聴率を安定的にとろうとしている。木曜8時枠を“木曜ミステリー”とし、水曜夜9時枠は、“刑事ドラマ”とした。人気ドラマのシリーズ化で実績向上を図ってきたのである。

前者の代表には今回19シリーズ目となる『科捜研の女』(沢口靖子:1999年~)、後者はseason17を放送している『相棒』(水谷豊:02年~)がある。

他にも『警視庁捜査一課9係』(渡瀬恒彦:06年~)でseason12まで放送し、その後継として今クールでseason2となっている『特捜9』(井ノ原快彦:18年~)、今クールがTHIRD SEASONの『緊急取調室』(天海祐希:14年~)、5期まで放送した『ドクターX』(米倉涼子:12年~)などがある。

同局は平日午後に3時間のドラマ再放枠を持っている。

新シリーズ放送前に、過去のシリーズを大量に再放送することで番宣としている。この結果、同局ドラマの初回はことごとく高視聴率でスタートしている。今期も『特捜9』も『緊急取調室』も、15.2%と圧倒的な数字で始まっている。

さらにシリーズ化は、今やテレビ視聴者の過半を占める中高年を取り込む作戦として定着している。

物語の設定や大枠、登場人物、ストーリー展開のパターンなどに馴染みや分かりやすさがあり、中高年が安心して見られる設計だ。結果として、安定した視聴率をとるようになっている。

テレ朝ほどストレートではないものの、TBSも日曜劇場でシリーズ的手法を使うようになっている。

『半沢直樹』(堺雅人:13年)を初め、『ルーズヴェルト・ゲーム』(唐沢寿明:14年)・『下町ロケット』(阿部寛:15年)・『陸王』(役所広司:17年)・『下町ロケット2』(18年)と、池井戸潤原作でヒットを続けている。これら以外にも日曜劇場は、“小が大を倒す”“役者の熱い演技”などで、高い視聴率をとり続けている。

新たなビジネスモデル

以上のように平成の30年間で、各局はそれぞれの路線を走ってきた。

ところが民放のビジネスモデルは、平成終盤の数年で揺るぎ始めてしまった。フジの月9に限らず、ドラマのリアルタイム視聴率は、大きく下がってしまったからである。

例えば平成初期には、20%を超えるドラマがほぼ毎クール出現していた。

前述の通り、トレンディドラマの快進撃があった通りだ。ところが平成10年代には15%超が1クールあたり数えるほどとなり、今や10%超が数本となっている。例えば今年冬クールの最高視聴率は、『刑事ゼロ』(沢村一樹)だったが、平均は11.6%に過ぎなかった。

デジタル録画機の普及で、タイムシフト視聴が当たり前になったことが大きい。

そこで各局はここ数年、新たな動きを始めている。

録画再生での視聴も視聴率に加算する方向、インターネットでの利用、さらに海外販売への注力などだ。

まずは15年秋に始めたTVerでの見逃し配信。今ではドラマ1話で100万視聴という例も出てきており、ネット広告費を獲りに走っている。

他にはSVOD(定額制動画配信)による有料収入や海外販売などのライツビジネスが大きい。

中国のネット配信企業への販売で、1クール10本ほどが1億円という例も出てきている。テレビ東京はライツビジネスが全体の24%に達しているが、アニメだけでなく、実写ドラマが数%を占めるまでに成長している。

平成の初めは、リアルタイム視聴率に象徴されるテレビ広告収入が全てといっても過言でなかった。

ところがテレビのビジネスモデルは、今やライツビジネスも含めての利益最大化が重要となっている。民放のドラマは、正にその変化を体現するジャンルだったのである。

トレンディドラマ、強烈キャラ、定番シリーズ物と各局の特徴や栄枯盛衰を見てきた平成30年間のドラマだが、あなたの心に残ったドラマは何だろうか?

テレビ平成30年史〔2天災・事件続発の平成 テレビの「緊急報道」はITで進化した! を読む

平成テレビ30年史〔4〕朝ドラと大河ドラマ「平成2大改革」が明暗を分けたNHK二枚看板 を読む

平成テレビ30年史〔1〕〜〔15〕わかりやすいインデックス を読む

  • 鈴木祐司

    (すずきゆうじ)メディア・アナリスト。1958年愛知県出身。NHKを経て、2014年より次世代メディア研究所代表。デジタル化が進む中で、メディアがどう変貌するかを取材・分析。著作には「放送十五講」(2011年、共著)、「メディアの将来を探る」(2014年、共著)。

Photo Gallary1

share icon記事をシェアする

  • Facebook シェアボタン
  • Twitter シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事