朝ドラと大河ドラマ「平成2大改革」が明暗を分けたNHK二枚看板

テレビ平成30年史〔4〕鈴木祐司(メディア・アナリスト)

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民放ドラマが大きく変化した平成の30年。

NHKを代表する朝ドラと大河ドラマも、30年で明暗を分けるような変化を経験していた。TVドラマは総じて視聴率を落としてきたが、朝ドラと大河は平成でそれぞれ二度の変革を経て、V字回復と右肩下がりという明暗に分かれてしまった。

NHKを代表する2ドラマの明暗は、公共放送にとってのドラマはどうあるべきか、改めて問い直しているようだ。平成30年のテレビ史を「朝ドラと大河ドラマ」という観点でを振り返る。

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朝ドラの平成30年

この4月に始まった連続テレビ小説『なつぞら』(広瀬すず主演)。1961年に始まって以来58年目、作品数では100作目に入っている。

昭和の朝ドラには、栄光の時代があった。

60年代後半以降、『おはなはん』(樫山文枝・1966年度)、『繭子ひとり』(山口果林・71年度)、『鳩子の海』(藤田美保子・74年度)など40%台のヒット作が続出した。中には52.6%と歴代最高の『おしん』(小林綾子・田中裕子・音羽信子・83年度)がある。

ところが86年『はね駒』(斉藤由貴・86年度上期)を最後に40%台はなくなる。

それでも平成初期は、『青春家族』(いしだあゆみ・清水美砂・89年度上期)、『おんなは度胸』(泉ピン子・桜井幸子・92年度上期)、『ひらり』(石田ひかり・92年度下期)など、30%台がたくさんあった。

平成元年からの5年間の平均視聴率は、34.7%もあったのである。

男女雇用機会均等法が施行されたのは1986年。

平成は女性の社会進出が進んだ時代だった。ただし朝ドラの視点で見ると、当時の放送時間(8時15~30分)にテレビの前にいる専業主婦が減り始め、朝ドラの視聴率が下がり始めた時代でもある。

平成6~10年の平均は25.6%、11~15年22.4%と下落の一途となっていた。

そして平成15年度『こころ』(中越典子・03年度上期)の21.3%を最後に、しばらく10%台の時代が続く。

16~20年の平均が18.0%、20~25年17.4%。特に平成21年『つばさ』(多部未華子・09年度上期)が13.8%、同年後半の『ウェルかめ』(倉科カナ)13.5%がどん底だった。

ところが平成22年、大改革が断行された。開始時間を15分繰り上げ、8時スタートとしたのである。

この決定に至るNHKの編成改訂会議は、報道局と番組制作局とが対立し、大もめにもめた。喧々諤々の議論の末、8時スタートが断行されたことで、朝ドラの視聴率は格段に上昇し始めた。

1作目『ゲゲゲの女房』(松下奈緒・10年度上期)は18.6%と、前作より5%以上も上昇した。その後も『カーネーション』(尾野真千子・夏木マリ・11年度下期)、『梅ちゃん先生』(堀北真希・12年度上期)と、20%前後の作品が続いた。

2番目のターニングポイントは、平成25年放送の『あまちゃん』(能年玲奈・13年度上期)。

宮藤官九郎がNHKドラマの脚本を初めて担当し、伝統的な朝ドラマを一変させた。しかし『あまちゃん』の底力は、ユニークな作品だった点に留まらない。特筆すべきは、これまで朝ドラを見てなかった人々に、新たに視聴習慣をつけさせた点だ。

軽妙なトーンでギャグもたくさん出てくるドラマだったため、高齢層の一部には受け入れられず、一時朝ドラから離れた人が出た。ところが若年層から50代で、新たな視聴者を獲得した。

しかもドラマ自体の面白さで、徐々に視聴率は上昇し、最終的には平均20.6%と高い数字で着地した。

続く『ごちそうさん』(杏・13年度下期)や『花子とアン』(吉高由里子・14年度上期)で、異変が起こった。

伝統的な朝ドラの作りにより、一時離れていた高齢層が戻ってきた。つまり新規の視聴者層が加わった分、以前より格段に視聴率が高まったのである。

かくして『あまちゃん』以降は、平均視聴率が21%台と極めて高い水準で推移する、超人気枠となったのである。

大河ドラマの30年

二度の転機を経て数字をV時回復させた朝ドラと比べ、大河ドラマの平成は右肩下がり一途の30年だった。

平成元年『春日局』(大原麗子・1989年)は33.1%と、朝ドラ並みの高い視聴率を誇っていた。ところが以後は急落が続く。

5年ごとの平均視聴率で比べると、平成最初の10年は23.7%と23.1%。『太平記』(真田広之・91年)26.4%・『秀吉』(竹中直人・96年)30.5%など、まだ高視聴率作品が散見された。

ところが平成11年からの10年は、19.2%と20.2%。

平均で3~4%数字を落としていた。この時期に大河も改革に着手する。“女の子大河”と呼ばれる、主人公が女性の歴史ドラマを始め、女性視聴者の開拓に乗り出したのである。

効果は直ぐに出始めた。『利家とまつ』(唐沢寿明・松嶋菜々子・02年)22.1%、『功名が辻』(仲間由紀恵・上川隆也・06年)20.9%、『篤姫』(宮崎あおい・08年)24.5%。

平成11~20年でのベスト3は、全て“女の子大河”が独占した。この時期は「歴女」という言葉がはやり出していたが、大河はいち早くこの波をとらえていた。

ところが平成20年以降は、厳しい10年となった。

隔年で放送されるようになった“女の子大河”の神通力は失われ、5年平均も16.9%、13.6%と急落している。“女の子大河”も『江』(上野樹里・11年)17.7%、『八重の桜』(綾瀬はるか・13年)14.6%、『花燃ゆ』(井上真央・15年)12.0%、『おんな城主 直虎』(柴咲コウ・17年)12.8%と、以前と比べ格段に低くなっていた。

平成31年の『いだてん』(中村勘九郎・阿部サダヲ・19年)は、そんな状況を打開することを期待されて始まった。

朝ドラで転機をもたらした宮藤官九郎を再び大河に起用し、“新たな視聴者層の開拓”と二匹目のドジョウ狙いに挑んだのである。ところが始まってみると、思惑は見事に外れた。

初回こそ15.5%あったが、6話目で早くも10%を切り、以後一桁での低迷が続いている。このペースで行くと、夏の間に全体平均一桁という不名誉な記録になってしまう可能性がある。

朝ドラと大河ドラマの視聴率推移

        

公共放送のドラマ

両ドラマの明暗は、どこにあったのか。

両枠とも、視聴者層拡大のための改革を二度行っている。二度とも成功し、V字回復を果たした朝ドラに対して、一時は効果をあげたこともありながら、大河は二度とも失敗に終わっている。

その背景には、「民放との関係」と「デジタル時代」があると筆者は考える。

民放は各局の努力で新たなドラマのジャンルを開拓し、ビジネスモデルも進化させてきた。フジのトレンディドラマ、日テレの強烈キャラドラマ、テレ朝のシリーズ定番路線などだ。特にこの10年、質量ともに充実が顕著だ。つまり民放ドラマは、多様化と進化を果たすことで、時代のニーズに応えてきた。

そこでNHKのドラマが問われるのは、民放が“やれない” “やらない”ことをやることで、時代のニーズに対応できているかだろう。

月曜から土曜まで毎朝15分の連ドラ制作は、実は民放には例がない。

“時計代わり”的な視聴習慣が、不動の人気にもなってきた。裏番組がワイドショーばかりというユニークな存在感も奏功している。しかもデジタル時代で、短尺の作品へのニーズが高まっている。この10年で朝ドラは、着実に見やすい存在になっていたのである。

いっぽう大河ドラマは、時代劇という側面こそ、民放にない存在感だ。

ところが大きな物語へのニーズは、時代と共に縮小している点を忘れていないだろうか。例えば1年続く物語を見続ける大変さ。馴染みのない時代背景や、たくさん登場するに人物たちの人間関係の複雑さ、さらに人間物語としての感情移入の問題など、普通の視聴者が脱落しそうな要素が大河にはたくさんある。

主人公を女性にする工夫は、確かに一つの対応策となっていた。ところが他の課題をクリアする努力が、十分なされて来たのかと問われると、その後の結果が答えと言わざるを得ない。

今回の『いだてん』の不調で、NHK内では大河の意義が模索され始めているようだ。

「受信料では、娯楽番組は要らない」という極端な意見も聞かれる。少なくとも時代の変化に合致した、制作・放送を続ける意味を見える化させる必要はあろう。

NHKのドラマは、新たな段階に入り始めている。あなたの心に残った朝ドラ、大河ドラマは何だろうか? そしてNHKのドラマに何を求めているだろうか?

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  • 鈴木祐司

    (すずきゆうじ)メディア・アナリスト。1958年愛知県出身。NHKを経て、2014年より次世代メディア研究所代表。デジタル化が進む中で、メディアがどう変貌するかを取材・分析。著作には「放送十五講」(2011年、共著)、「メディアの将来を探る」(2014年、共著)。

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