今明かす ヤマト監督が語る「なつぞら」奥山玲子さんとの共同作業

『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』などの演出家・勝間田具治氏が明かす、朝ドラのヒントとなった女性アニメーターとの秘話

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『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』などレジェンド・アニメ演出家の赤裸々トークが冴える

「今のアニメーションは”お金を出してもらって自分の好きなものが作れる”、僕らの場合は”作らせてやるけどお金はないぞ!”(笑)という、そういう時代だったんですよね」。そう語るのはアニメーション監督の勝間田具治(かつまたともはる)氏だ。

勝間田氏が自らが手がけた思い入れのある作品を挙げると……、

『宇宙戦艦ヤマト』シリーズの劇場版3本(『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』(1978年:アニメーションディレクター)、『ヤマトよ永遠に』(1980年:チーフディレクター)、『宇宙戦艦ヤマト 完結編』 (1983年:監督)。『FUTURE WAR 198X年』(1982年:監督)。そして『三国志』シリーズの『第一部・英雄たちの夜明け』(1992年)、『第二部・長江燃ゆ!』 (1993年)、『完結編・遥かなる大地 』(1994年)3部作、とヒット作・話題作がズラリと並ぶ。

そんな男臭い作品・作風で有名な超ベテラン監督だが、その膨大なフィルモグラフィーの中でもひときわ異彩を放つ作品がある。それが勝間田氏が監督した劇場用アニメ『アンデルセン物語 にんぎょ姫』(1975年公開)だ。実はこの作品、朝ドラ『なつぞら』のヒロイン奥原なつ(広瀬すず)のヒント、モチーフとなった女性アニメーター奥山玲子さんが作画監督を務めた作品でもあるのだ。

この『にんぎょ姫』が「第11回京都ヒストリカ国際映画祭」(2019年10月26日~11月4日)で久々に上映され、勝間田監督のトークイベントではベテランアニメ演出家ならではの赤裸々トークが展開された(10月27日)。

トークを繰り広げる勝間田監督。胸にはドクロのマーク。「キャプテンハーロック」のTシャツだ! 劇場アニメ『わが青春のアルカディア』(1982年)の監督も務めている 撮影:菊地弘一

実写映画の京都・太秦から漫画映画の東京・大泉へ

アニメーション監督として知られる勝間田氏だが、そのルーツは実写映画だ。叔父で俳優の岸井明氏のツテで学生時代から名匠・マキノ雅弘監督の下で映画を学んだ。「マキノ組じゃなくてもやむを得ないから撮影所に入社しよう」と言われて東映に入社し、3年半ほど助監督を務めた。

「僕がサード(監督)からセカンド(=助監督)に上がったばかりの頃は、東映京都撮影所の助監督は42人もいたんだよ。監督に昇格できるのが年に2人ぐらいだから監督になるまで20年もかかるんだよね。”こりゃダメだ”と諦めたときに東映動画(現・東映アニメーション)へ行ったんだ。絵も描けないし漫画映画って見てなかったけど。最初に参加したのが『狼少年ケン』(東映初のテレビアニメ)で2本ほど演出助手をして、3本目の第28話「ぬすまれた王国」(64年6月1日放送)から監督をやりました」とキャリア初期の思い出を明かす。

その後、実写上がりで絵も苦手なのに「絵コンテ」を書いたり、「タイムシート」(撮影指示伝票:動く絵のリズムやテンポを指示するアニメにおける楽譜のようなもの)の書き方がなかなか分からない、といった様々な苦労をしながらも実績を重ねていった。それから10年ほどたち、『アンデルセン物語 にんぎょ姫』の企画が立ち上がる。それは原作の童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセンの没後100年を記念したものだった。

奥山玲子さんによる『アンデルセン物語 にんぎょ姫』ヒロイン・マリーナのイメージスケッチ 提供:小田部羊一氏

「僕が東映京都撮影所の助監督をしていたころの実写映画作品はテレビサイズ(スタンダードサイズ)ではなく、みんなワイドスクリーン(シネマスコープサイズ)でしたからね。実写映画と同じようになじみのあるワイドを自由に使いたい、という欲求を満たしたのが『マジンガーZ対デビルマン』(73年:演出)。あれもワイドらしい作品になったかなぁと…。『にんぎょ姫』にもそういう”夢”があってワイドで作ったんですね」と、こだわりを語った勝間田監督。

だが、『にんぎょ姫』の制作当時の東映動画では、草創期にあったクオリティー重視の「長編漫画映画」創りの時代はすでに過ぎ、限られた予算と厳しいスケジュールという現実が待っていた。また当時は『東映まんがまつり』という「仮面ライダー」などを含む7本立てのイベント的な興行に収めるため、各作品の尺(上映時間)も短くせざるを得なかった。

「当時は会社を救うために作っていたようなものだった」と監督。

『アンデルセン童話 にんぎょ姫』あらすじ(京都ヒストリカ国際映画祭 サイトより)

人魚の末っ子姫マリーナは少しおてんばで美声の持主。ある夜、豪華船に乗る王子を見かけて胸をときめかせる。彼女は魔女から美しい声と引き替えに人間になる薬を貰い地上に…。東映京都撮影所でマキノ雅弘監督らの助監督から東映動画の演出に移籍し、TVアニメ『デビルマン』『マジンガーZ』等を手がけた勝間田具治が監督。作画監督は奥山玲子。アンデルセンの没後100年記念、かつ沖縄海洋博の協賛映画として欧州ロケまで敢行した東映動画の本気作品。モスクワ国際映画祭児童部門優秀童話賞受賞

『漫画映画漂流記』で語られた奥山玲子さんとのエピソード

予算が少なく、アニメーションのパートを減らして実写パートが設けられた。勝間田監督は実写経験を活かして単身デンマークに乗り込んで実写パートの撮影をする。

先ごろ刊行された書籍『漫画映画漂流記 おしどりアニメーター奥山玲子と小田部羊一』(著・小田部羊一 聞き手・藤田健次)では勝間田監督の章が設けられ、作画監督を務めた奥山玲子さんのことも詳しく(全24ページ分)語っている。同書から一部を抜粋しよう。

――奥山玲子さん自身が(『にんぎょ姫』の)作画監督に立候補されたとのことですが。

勝間田「そうだね。僕がやった『長ぐつ三銃士』のときに、高畑、小田部、宮﨑氏とかが抜けたんですよ。だから『にんぎょ姫』のときは小松原(一男)氏、荒木(伸吾)氏とかメインスタッフは外注ですよ。(中略)弱体化の中で、どうにかしていくという形だった。作画監督として決まった奥山さんが角田(紘一)を助手につけていいかと言ってきたんですよ」

――作画監督は奥山さんで、副作画監督みたいな形で角田さんが入った。

勝間田「クレジットには(そういう肩書は)なかったけどね。制作中は角田が奥山さんの意見をこっちに伝えてきました」

――意見の相違はありましたか?

勝間田「1回もないですね。みんな、奥山さんを怖がるけど、自分は全然なかったな。とてもやりやすかった。『これ、こう直して』と言うと、翌日直ってて机の上に置いてあるんです。あの人は割と屈託なくいろいろ話すし、おかしいところはちゃんと突っ込んでくるし、こちらの意見にもちゃんと納得してくれるし、やりやすかったですね」

――奥山さんは本作で「単独名義としては日本で最初の女性作画監督」を務めたことになるのですが。

勝間田「当時、作画監督になった時は、そういうのは全然感じなかったですね。僕らも初めてだから、会って、お、美人だなって(笑)」

『漫画映画漂流記』には、勝間田氏のインタビューが24ページにわたり掲載されている。他にも演出家(葛西治氏:『龍の子太郎』ほか、池田宏氏:『空飛ぶゆうれい船』『どうぶつ宝島』ほか)とアニメーター(山下恭子(旧姓・中山)氏、ひこねのりお氏、宮崎朱美(旧姓・大田)氏)たちの証言、夫・小田部氏のロングインタビューなどが収録されている

今のアニメーションへの想い

勝間田監督の「京都ヒストリカ映画祭」でのトークに戻ろう。監督はアニメーションの過去から現在を振り返り、こう語った。

「東映動画で僕らが作ってきた時代も過ぎ、やがて僕らと一緒にやってた宮﨑駿監督による東映調でありながらも独自の作品を作った時代があった。今は、細田守監督や新海誠監督とかがアニメの時代を作っている。彼らの作品は画がすごくキレイですよね。内容的にはそこに何かしら文学的な要素を持って来て作っているけれど、必ずしも上手く絡まないところがあるんだよね。彼らの世代が、それをどう切り抜けていくのか楽しみ」

勝間田氏は、最近でもテレビアニメ『タイガーマスクW』(2016年)の演出を手掛けたリビング・レジェンドだ。漫画映画~アニメーションのヒストリーを駆け抜けた81歳の、次の動向も大いに気になるところだ。

勝間田具治監督(京都ヒストリカ国際映画祭にて) 撮影:菊地弘一

勝間田具治(かつまた ともはる)(1938年~):アニメーション演出家・監督。日本大学芸術学部映画学科卒。1960年に東映京都撮影所に入所し、マキノ雅弘監督の助監督を務めたのち、東映動画に転属。『狼少年ケン』で演出家デビューした。60~70年代は『タイガーマスク』「マジンガー」シリーズ、「ゲッターロボ」シリーズなどのアクション作品を中心に活躍し、80年代も『北斗の拳』『聖闘士星矢』などの人気作の数々に参加。近年も「プリキュア」シリーズなどに参加した大ベテラン。※略歴は『漫画映画漂流記』より

第11回 京都ヒストリカ映画祭 公式サイト

『漫画映画漂流記 おしどりアニメーター奥山玲子と小田部羊一』の書影(右は帯つき)。カバーイラストは小田部羊一氏描き下ろし。著:小田部羊一 聞き手:藤田健次

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『漫画映画漂流記 おしどりアニメーター奥山玲子と小田部羊一』の内容紹介 演出家たちの証言

・勝間田具治 『アンデルセン童話 にんぎょ姫』作画監督 奥山玲子との仕事…実写からアニメの世界へ/『アンデルセン童話 にんぎょ姫』、今明かされる実写パートの秘密/『にんぎょ姫』での作画監督の奥山さんとの共同作業/短い制作期間で見せた現場の意地/改めて思う、奥山さんとの仕事/勝間田さんから見た、小田部さんと奥山さん

・葛西治 『龍の子太郎』古巣に戻った夫婦を支えた東映動画スタッフ…『龍の子太郎』が動き出すとき/2人を迎え入れた「準備室」/はじめて語られる『龍の子太郎』メイキング/クリエイトコーナーと浦山監督/キャスティング秘話/葛西さんから見た、小田部さんと奥山さん

・池田宏 『空飛ぶゆうれい船』『どうぶつ宝島』からスーパーマリオの世界へ…はじめに/初めての出会いはアメノハヤコマ/お互い新人だった『空飛ぶゆうれい船』/アメリカ大使館で学んだ『ストーリーボード方式』/『どうぶつ宝島』から生まれた日本型アニメーションの「波」/池田さん、東映動画から任天堂へ/任天堂に小田部さんを呼んだワケ/奥山さんの本当にやりたかったこと/小田部さんの本当にやりたいこと

同、アニメーターたちの証言

・山下(中谷)恭子 寄稿「懐かしい奥山玲子さん」

・ひこねのりお 「妖しい踊りと結婚の告白」…「おめでとう」が出会いの言葉/奥山さんからの突然の告白/『わんぱく王子の大蛇退治』、そして東映動画の思い出/ひこね夫妻から見た、小田部さんと奥山さん

・宮崎(大田)朱美 「奥山さんから続く女性アニメーターの路」…大田朱美さんから見た、出来たての東映動画と奥山さん/職場の思い出/びっくりした小田部さんの仕事ぶり/『太陽の王子ホルスの大冒険』と労働問題/奥山さんの道をかきわけながら進んだ、共働き生活/アニメーターを辞めて家庭に/宮崎さんから見た小田部さんと奥山さん/奥山さんから続くもの、そして得たもの

同、小田部羊一氏 ロングインタビュー

〔Part 1〕”アニメーター”奥山さんのこと…「動画」と「童画」を」勘違いしてアニメーションの世界へ/毎日違う服、挑む同僚たち/『太陽の王子ホルスの大冒険』中傷画と鬼山さん/奥山さんの聞くもの、創るもの

〔Part 2〕”夢の工場”東映動画のこと…日本画からアニメーションの世界へ/東映動画での会社生活/東映動画という学校/

〔Part 3〕”パートナー”ふたりのこと…ペラっと/ダンスがきっかけ/いつも奥山さんが後押し

〔Part 4〕”夫婦回顧”さらに、ふたりのこと…長い道のりのスタート/産休明けの母乳/『ハイジ』キャラクター誕生秘話と25年目のスイス旅行/ぎっくり腰と『母をたずねて三千里』/”羊”と”玲”であんていろーぷ/日本文化と日本画を積極的に取り入れた『龍の子太郎』/強いけど、弱くてかわいい奥山さん/東京から京都へ。そして今にして思うこと。

【『漫画映画漂流記 おしどりアニメーター奥山玲子と小田部羊一』関連記事】

〔第1弾(4/1)〕朝ドラ『なつぞら』広瀬すずヒロインのヒント・奥山玲子さんの全て
〔第2弾(4/22:公開終了)〕小田部羊一氏と東映動画の「スゴい人々」

〔第3弾(6/10:公開終了)〕奥山玲子さん&小田部羊一夫妻「創作の日々」

〔第4弾(8/17)〕本当の最終回へ『なつぞら』のリアルとその後を小田部羊一氏が語る
〔第5弾(8/31)〕『なつぞら』の原点・奥山さんの親友が語る共働き・子育ての実像
〔第6弾(9/4)〕『なつぞら』原点 奥山玲子・小田部羊一夫妻は漫画映画を開拓した
〔第7弾(9/28)〕最終回『なつぞら』ヒントとなったおしどりアニメーターの開拓史

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