激論!山田邦子×長州力 「馳浩事件の真相を話しましょう」
|短期集中連載 いまだから話せるアブナイエピソード満載! やまだかつてない対談 最終回
「釧路(くしろ)に共通のお友達がいて、試合を観せていただいたり、一緒にご飯を食べさせていただいたりできるようになれたのが本当に嬉しくて、すっかり懐(なつ)いちゃって。焼き肉に行くと、絶対に隣に座ります。全部焼いてもらえるから」
日本経済もテレビもお笑いも輝いていた’80年代。そのド真ん中を駆け抜けた山田邦子(60)が、バラエティ黄金時代の仲間に逢いに行くという本連載。最終回のゲストは、いまや人気ユーチューバーとなった長州力(68)だ。
長州 「邦子さん、これ、プレゼントです」
邦子 「アベノマスク!(笑)」
長州 「紙のマスクは喋るとパコパコパコパコするし、一日で使い捨てっていうのも、僕はちょっと……」
邦子 「昭和の時代のマスクはこれでしたよね。洗って何回も使えてね」
長州「そうそう。肌にフィットして気持ち良くないですか?」
邦子「ただ、長州さんには小っちゃいって! もう何回か洗ったら眼帯みたいになっちゃう(笑)」
長州「……そういえば、邦子さんがプロレスを好きになったキッカケって何だったんですか?」
邦子 「子どものころに見たテレビですね。当時は携帯電話もディズニーランドもなくて、テレビで野球やプロレスを見るのが娯楽だった。ゴールデンタイムでやってましたから」
長州 「誰が好きだったんですか?」
邦子 「アントニオ猪木さん。超カッコよかったもん。それで、あるとき長州さんが現れたのよ。新日本プロレスに反逆した『維新軍』にいたころかな。長髪でさ、ビックリしちゃった。思わず『長州邦子』名義の銀行口座を作ったぐらい。当時は好きな名前の口座を持てたのよ」
長州 「ホントですか!」
邦子「銀行で『長州さーん』って呼ばれるじゃない? そこで返事しちゃダメなの。『長州邦子さーん』ってフルネームで呼ばれて初めて『ハイッ』って(笑)」
長州 「初めて聞いた!」
邦子「長州さんはレジェンドだもの。それにとっても優しいんです。信じてもらえないかもしれないけど、私、肩を揉(も)んでもらったことがある」
長州 「僕は上手いですよ」
邦子 「手が大きくてスゴい。指全部が親指みたい。ちょっとしたパンですよ(笑)」
長州「ゾウじゃあるまいし!」
邦子 「飲み会のときは、泡盛をコーヒーで割る『リキ割り』を作ってくれるんですけど、これが濃い。濃すぎる」
長州 「泡盛ですからね」
邦子「口当たりがいいからサーッと呑(の)めちゃうし、クセになる美味しさなんだけど、後で大変なことになる。お店の人に頼もうとしても長州さんに『ぼ、ぼくが、やりまつ』って止められて」
長州 「山下清みたいな……」
邦子「長州さん、滑舌(かつぜつ)悪いって言われるでしょ?(笑)。日本語なのにテロップが入るのは天龍(源一郎)さんと長州さん、そしてドラゴン(藤波辰爾(たつみ))。皆さんで話しているとき、お互い何を言ってるのか、わかってるんですか?」
長州「わかりますよ(笑)。源ちゃん(天龍)はガラガラ声だけど、喋ってる話題が一致していればだいたいわかります。わかりづらいのは辰っつあん(藤波)ですね。話の腰を折って脱線することがあるから。しかも、あの鼻声でしょう?」
邦子「今年、猪木さんのパーティがあって、全員揃ったじゃないですか。あれは危険でしたね。皆一斉に喋るんだもん」
そんな山田邦子の黒歴史と言われるのが、’87年の〝馳浩事件〟だ。『ギブUPまで待てない!!ワールドプロレスリング』(テレビ朝日系)で山田邦子がゲストの馳に「血はすぐに止まるんですか」と質問するや、馳は「つまんない話を聞くなよ。止まるわけないだろ!」と激高。スタジオは凍りつき、番組はほどなく打ち切りとなった。
邦子「私たちは『知らない人にファン層を広げるのダ!』なんてノリでやっていたんだけど、プロレスファンにしてみたら邪魔だったんだね。後から聞いたら、一緒に番組に出ていた『男闘呼組(おとこぐみ)』のメンバーも試合会場に行くと『帰れ、帰れ!』って大ブーイングだったんだって。それで、ちょっと言いづらいんだけど、馳浩。いまとなっては大先生がね……」
長州「あれ以来、会ってない?」
邦子「会ってないんですよ。私、(馳の地元の)金沢大会も観に行っていて、黄色いパンツ姿で戦う馳先生を応援しているんですよ。で、その後、馳さんの弟さんと『打ち上げでお寿司でも?』なんて予定を立てても……先生は来ないから」
長州「そんなことないと思いますよ。彼はすごく常識のある男ですから」
邦子「恭子ちゃん(馳夫人の高見恭子)とも話したの。『邦子ちゃん、気にしてないよね?』『気にしてないよ』『周りが騒ぎすぎだよね』って。なのに、周囲の人たちが『仲悪い』って話を作り上げちゃったから、なかなか会えなくて」
長州「……僕もそのなかの一人になるわけですか(笑)」
邦子「ほーらー!(笑) まあでも今回、この話ができてよかった。私がいるだけでいつも『馳の話はタブー』みたいな空気になってたから」
長州「悩んでたんですか?」
邦子「悩んでないです。ただ、お互い歳も重ねて、いまこの時代に会ったら面白いのになぁって思う。馳さんと私はなんでもないんだよってことをさ」
長州「もう周りもなんとも思ってないでしょう。連絡すれば馳も喜んで……今度二人で訪ねますか、議員会館!」
邦子「目立ってしょうがない!」
現役引退から1年。長州は戦いの場をリングからインターネットに移し、『革命戦士』から人気ユーチューバーへ華麗な転身を遂げた。
邦子「しかし、長州さんがYouTubeに来るとは思わなかったなあ」
長州「いまも、どういうものなのか、あまり把握はしてないですよ」
邦子「長州さんがSNSで使ってるハッシュタグ(#)……井戸の井でしょ?」
長州「違います。サインを書くようにちょっとハネたんです(笑)。なんであれで笑われなきゃいけないのか……でも、だからこそ興味はあるんですよね」
邦子「これまでプロレスだけを真面目にやってきたんだから、引退後は好きなことをやったらいいと思う。映画や舞台にも出てくださいよ」
長州「寡黙な老人役なら……」
邦子「歌も出したらどうです?」
長州「歌だったら、『TOKIO』のセンターぐらいで……(笑)」
邦子「こりゃ、大きく出たよ!」
『ギブUPまで待てない!!ワールドプロレスリング』(テレビ朝日系)’87年4月にスタート。試合中継にバラエティの要素を取り入れた異色のプロレス番組。新しいファンの開拓を目指したが、半年で打ち切りに
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■本対談のフルバージョンはYouTube『山田邦子 クニチャンネル』にて、8月14日以降に順次公開されます!!
『FRIDAY』2020年9月4日号より
〔やまだかつてない対談 第1回〕山田邦子と森末慎二が激白!「あの武道館ライブ、1億円かかった」を読む
- 取材・文:細田昌志
- PHOTO:小松寛之
ノンフィクション作家
ノンフィクション作家。1971年生まれ。近著『沢村忠に真空を飛ばせた男/昭和のプロモーター・野口修評伝』(新潮社)が第43回講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞。昨年末には『力道山未亡人』が第30回小学館ノンフィクション大賞を受賞。