堀北真希 絶頂期の女優が東京を巡る「メトロガールの完成形」
2004年「営団地下鉄」民営化で「メトロガール」開始! 井川遥、山田優、宮﨑あおい、新垣結衣、杏、武井咲、堀北真希、石原さとみ その系譜を辿る
メトロガール。2004年の井川遥に始まって、山田優、宮﨑あおい、新垣結衣、杏、武井咲、堀北真希、そして石原さとみという様々な女優・モデルたちが担ってきた。鉄道会社各社が有名女優を起用したCMを数多く打つようになっているが、東京メトロが2004年の民営化以降に展開してきたCMシリーズはこの先駆けとなるものであった。
新型コロナウイルスの感染拡大防止のために続く自粛。JR各社や大手私鉄など公共交通機関も、軒並み利用者を激減させている。
本企画は、1日平均の利用者758万人(2018年)、首都東京の大動脈「東京メトロ」を彩ってきたイメージキャラクター、名付けて「メトロガール」たちに焦点をあて、あの賑わいの少しでも早い復活を念じつつ、時代を振り返る。
「メトロガール」を5つの時代に分けて振り返る第4期は2013年~2015年。登場するのは堀北真希である。
堀北真希、登場! 1年目は“設定過剰”で周囲の人物が悪目立ち
3年連続で宮﨑あおいが演じた第2期、3年で3人のイメージキャラクターを起用した第3期を経て、2013年から東京メトロのCMは新しいステージに突入する。堀北真希の登場である。
これまでのCMを振り返ると、東京メトロの民営化を知らせた第1期と、東京メトロのイメージ向上を目指した第2期、そして「東京」と「メトロ」のどちらに軸足を置くかで揺れた第3期であったと言えるだろう。
堀北真希を起用した第4期以降は「東京」を描くことに徹したシリーズと言える。
堀北真希は2005年にドラマ『野ブタ。をプロデュース』や映画『ALWAYS 三丁目の夕日』でブレイク。第29回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した。2012年にはNHKの連続テレビ小説『梅ちゃん先生』のヒロインに抜擢。また大晦日の紅白歌合戦の司会を務めるなど、女優としての絶頂期を迎えていたところだった。
東京メトロは起用の理由について「若年層からシニア層までの幅広い方々に支持を受けており、いま最も活躍している女優の一人である」とした上で、「堀北さんの女優としてのプロ意識の高い演技力が、まさに東京の様々な魅力を再発見していく姿を表現するにふさわしい」と説明している。
CMのキャッチコピーは利用者の毎日に彩りを添えたいという思いを込めた「Color your days.」。「Color」は、彩るという意味に加え、東京メトロの9つの路線カラーも表している。堀北の演技力への期待の表れか、これまでのCMよりもストーリー性の強い仕上がりとなっている。
第1作は、堀北真希演じる主人公が「仕事でミスをした」とうなだれるところから始まる。無言のまま歩き出す上司の背中を追っていくと着いたのは築地市場。
そこで海鮮丼をごちそうになり、また前向きに頑張ろうと気持ちを新たにする…のだが、理由も説明せずにミスした部下を引き連れていく上司はパワハラではないかとか、上司が食事をほおばりながら「食えよ」と言うシーンは品がないとか、SNS上でプチ炎上するスタートに。
堀北真希の真骨頂とも言える、どこか愁いを帯びた表情の主人公が、東京の街に元気もらい笑顔になっていく。松任谷由実が書き下ろしたCM曲「Hey Girl! 近くても」もマッチしているのだが、2作目以降も含めて、いかんせん設定がやや過剰で、堀北よりも周辺人物が悪目立ちしてしまっているのがもったいない。
米津玄師「アイネクライネ」 堀北真希の儚げなムードが東京の光景とベストマッチした2年目
その点、翌2014年のシリーズは、堀北真希を中心に彼女の視点から東京の季節ごとの魅力が描かれており、味付けがちょうどいい。テーマは引き続き「Color your days.」。
楽曲は今を時めく米津玄師。この時メジャーデビューから2年目で、このCMで彼を知ったという人も少なくないだろう。書き下ろしの「アイネクライネ」が胸に迫る。
ちなみに筆者が一番好きなのがこのシリーズ。
東京メトロのイメージに合致しているかと言われると好みが分かれるのかもしれないが、儚げな雰囲気の堀北真希が、空気が透き通った東京の光景とよくマッチしており、映像作品としては最も美しい。
上野、豊洲、池袋、表参道 堀北が東京を巡り巡った3年目
そして3年目となった2015年からは、利用者それぞれに自分のお気に入りの「東京」、「my Tokyo」を見つけてもらうことで東京をもっと好きになってもらいたいという「Find my Tokyo.」シリーズが始まる。
雰囲気も前年までとはガラリと変わり、堀北真希が東京の名所めぐりをするという内容だ。
第1作の舞台は上野。日本初の動物園、上野動物公園や、日本初のカツサンド、日本初の国立博物館などを訪ねながら、東京の魅力を掘り下げていくストーリーだ。
2013年、2014年のシリーズでは「東京には〇〇がある」といったキャッチコピーが用いられていたが、今作からは「上野には〇〇がある」と、より具体的なエリアにフォーカスした内容となっている。
第2作は豊洲、第3作は池袋、第4作は表参道を取り上げる。
東京メトロのCMというより、各エリアのCMのようになっているが、東京メトロとしてもようやく腹をくくって、新しい方向性を見つけたという感じか。
この年、堀北真希は26歳にして俳優・山本耕史と結婚。
同年末で公式ファンクラブが活動を終了するなど、徐々に活動を縮小してゆき、東京メトロのイメージキャラクターも3年目をもって「満了」となった。
堀北真希。ドラマや映画での女優としての活躍はもちろんだが、この「メトロガール」のイメージも、なんとも忘れがたい。読者の皆さんは如何だろうか?
「メトロガール」の歴史を辿る本稿。次はひとまずの「終着駅」。石原さとみにバトンタッチされた2016年〜今に至る、長期シリーズのヒストリーをお届けする。
▼「メトロガール」ヒストリーを読む▼
→〔第1回〕井川遥+山田孝之、山田優編(2004年〜2006年) を読む
→〔第3回〕新垣結衣、杏、武井咲編(2010年〜2012年) を読む
▼枝久保達也の関連記事を読む▼
→満員電車で「新型コロナ」感染は起きるのか?鉄道のプロが解説 を読む
→「東京封鎖は現実的に不可能だ」交通問題のプロが解説 を読む
→緊急事態下の鉄道「ヘタな対策」では感染リスクが上昇する可能性 を読む
文:枝久保達也
(鉄道ジャーナリスト)埼玉県出身。1982年生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)に11年勤務した後、2017年に独立。東京圏の都市交通を中心に各種媒体で執筆をしている。